2025年に東京(品川)-名古屋間が暫定開業すると言われているリニア新幹線。しかし、その雲行きが怪しくなっています。
リニア新幹線は、JR東海が自己資金でつくるものです。東海道新幹線によって稼いだ利益と借入金だけでつくるのです。2007年に発表された計画によれば、建設費が名古屋までで約5.1兆円かかりますが、東海道新幹線で稼いだ利益から毎年3000億円をリニアの建設費に充てることができるので、長期債務を4.9兆円に抑えることができます。この額ならリニアの稼いだ利益で返済でき、なおかつ新大阪までの全線開業ができるというのです。
しかし、このところの不況で、その計算が狂ってきました。JR東海の利益が減っているのです。2010年3月期の連結純利益は、2008年3月期の半分以下の、720億円となる見通しです。これではリニアの建設費も捻出できません。
JR東海は今も多額の債務を負っています。その額は約3兆円。今は低金利なので問題ではありませんが、国家の財政赤字が増えている現状を考えると(しかも、能天気なことに、その額を減らそうとはしていません。選挙で勝つことだけを狙い、歳出だけが増える一方なのです。)、将来的には金利が上昇するリスクも十分考えられます。そうなると利子の支払いが増え、建設資金に回すことができません。そこで、JR東海は、2010年3月期決算を元に、建設資金計画を精査することにしました。
そもそも、世界では鉄道の新たな可能性に目覚め、高速鉄道計画が急ピッチで進んでいます。それなのに日本では、「整備新幹線は大赤字」というイメージ(実際には、どの整備新幹線も想定以上の成績を挙げています)にとらわれ、なかなか高速鉄道の建設が進みません。5兆もの巨大プロジェクトを、(巨大とはいえ)民間会社1社に委ねること自体がおかしいのです。日本は人口密度が高く、大量輸送ができる鉄道に適した国です。高速道路無料化などの道路優遇政策を改め、鉄道に適切な投資をする必要がありますね。
また、資金的には問題がなくても、地元自治体との問題があります。品川、名古屋などの大深度地下駅の建設や、南アルプスを貫くトンネルの建設に10年はかかるからです。早くルートを確定させないと、2025年に間に合いません。長野県は依然として、諏訪湖近辺に迂回するルートを主張しています。諏訪に100万都市があるならともかく、そうでない限り、わざわざ迂回させる必要がありません。建設費はかかりますし、開業後の大半の利用客に、所要時間の増加というかたちで不便をかけます。増加した建設費を払えばすむ問題ではありません(しかも、長野県は口だけ出して、金は出そうとはしません)。諏訪にリニアが通ることが許されるのはただ一つ、技術的な理由で南アルプスにトンネルを掘ることができなかったときだけです。当然ながら、諏訪経由になったとしても、リニアの駅は県にひとつだけです。諏訪と飯田で激しい駅誘致争いをしていただきましょうか?
そのような長野は論外としても、駅建設費を地元に求めるのは酷ともいえます。「1県1駅」はそれなりに妥協できる範囲でしょう。駅周辺の整備は地元の負担でしょうが、ある程度の施設はJR東海が用意しないといけないでしょう。
(参考:朝日新聞3月6日朝刊 大阪13版)
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