福知山線脱線事故、社長起訴に思うこと
2005年4月25日に福知山線(JR宝塚線)尼崎-塚口間で起きた脱線事故は、107人もの人が死亡する大惨事となりました。
神戸地検はこの事故の原因を、JR東西線開業に合わせて線路を付け替えた際、現場付近が急カーブになったにもかかわらずATSをつけていなかったこととしました。そこで、当時のJR西日本常務取締役だった山崎JR西日本社長を、業務上過失致死傷の罪で在宅起訴しました(事故を起こして死亡した運転士や、付け替え当時の社長などは不起訴に終わっています)。山崎社長は当時、安全管理責任者である鉄道本部長でした。山崎社長は、起訴されたことを受けて、JR西日本社長の職を辞しましたが、裁判については争う姿勢を見せています。
検察は、鉄道会社幹部を起訴するという極めて異例のことを行いましたが、山崎社長を有罪にできるという確証はないようです。刑事で有罪にするには、事故が起きることを予見できることが欠かせないのですが、事故が起きるまではすべての電車が何の問題もなく通過しています。事故を起こした運転士は、よく問題を起こしていました。そういう質の悪い運転士が起こした事故とも言えます。ある意味、配置転換でもクリアできた話なのです。「普通の運転士なら問題はなかった。あんなスピードオーバーをするとは常識的に考えられない」と判断され、無罪になる可能性もあります。肝心のATSについても、当時の基準を満たしていれば、罪には問えないという見方もあります。
また、刑事事件の特性上、事件の真相が明らかにされにくくなるという問題はあります。被告となった山崎社長はできれば無罪、少なくても実刑は避けたいところです。法廷戦術によっては、事件について黙秘を貫く可能性もあります。事件の真相究明の観点からすると、希望する方向とは逆の方向に向かう危険性もあります。
山崎社長は事故当時は、子会社にいました。ところが事故の後、安全対策に詳しいことが評価され、JR西日本の社長になりました。山崎社長は安全対策を熱心に行い、その点については評価する声もあるようです。この姿勢が裁判にも影響するかもしれません。
JR西日本は、事故が起きるまでは利用者の利便のために積極的な攻勢をかけていましたが、事故のあとはともすれば「安全」を大義名分にサービスの改善をさぼるという面も見られます。安全も大事ですし、利便性の向上も大事です。両方をバランスよくとることが大事でしょう。マスコミを中心に事故以前のJR西日本の「儲け主義」を批判する声も見られますが、企業である以上、ある意味儲からないと安全への投資もできません。税金で1000円乗り放題にしてくれる高速道路とは違い、鉄道会社にはなかなか税金は投入してくれないのです。
(参考:朝日新聞7月9日朝刊 14版)
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