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長崎新幹線、費用対効果水増し

 九州には、今年3月12日に全線開通した九州新幹線のほかに、もうひとつ新幹線の計画があります。「長崎新幹線」と言われているのがそれです。長崎新幹線は、武雄温泉-諫早間に狭軌の線路を敷き(レールの幅を変えれば普通の標準軌の新幹線になります)、博多-新鳥栖間は九州新幹線に乗り入れます。残りの新鳥栖-武雄温泉間、諫早-長崎間は在来線をそのまま使います。標準軌の博多-新鳥栖間と狭軌の新鳥栖以西とを直通するため、標準軌、狭軌のいずれも走行することのできる、フリーゲージトレインの導入が考えられています。

 しかし、その長崎新幹線において、費用対効果を水増ししていることが判明しました。フリーゲージトレインの開発目標は標準軌の新幹線が時速270キロ、その他が時速130キロですが、それを新幹線は時速300キロに、狭軌だが新幹線規格でつくられる武雄温泉-諫早間を時速200キロとして計算していました。国交省は長崎新幹線の費用対効果を1.5としていますが(2004年時点では1.8でした)、開発目標を基に費用対効果を再計算したところ、(公表はしていないものの)1.3になるようです。

 また、フリーゲージトレインではなくて、全線狭軌のスーパー特急方式についても、新幹線規格でつくられる武雄温泉-諫早間は時速200キロで費用対効果を計算しています。北越急行のように狭軌で時速160キロを出すところはありますが、時速200キロはまだありません。時速200キロ運転を前提として費用対効果を計算すると1.1ですが、時速160キロだと当然ながらその数字は悪化します。1を下回ることはないようですが。

 スピードが遅くなると、所要時間も増えます。フリーゲージトレインの場合(新幹線区間が時速270キロ、その他時速130キロ)は、博多-長崎間が1時間33分、たった12分の短縮効果しかありません。新幹線区間時速300キロ、武雄温泉-諫早間時速200キロでも短縮効果は26分にすぎなかったのですが、さらに効果は薄れます。スーパー特急の場合(武雄温泉-諫早間時速160キロ)は、博多-長崎間が1時間30分。せっかく新鳥栖以北の新幹線区間でスピードを出すことができても、軌間の変換で時間をロスし、武雄温泉-諫早間のスピードが遅いことから、フリーゲージトレインよりスーパー特急のほうが速いのです。もっとも、フリーゲージトレインが武雄温泉-諫早間で時速160キロを出すことができたら、話は変わるでしょうが。

 スピードは先ほども述べたように、スーパー特急のほうが速いです。これから技術的に詰めなければいけないフリーゲージトレインとは違い、スーパー特急は681系ですでに技術を確立させています。コストも機構の複雑なフリーゲージトレインのほうがかかることは明白でしょう。しかしそれなのに、フリーゲージトレインのほうが費用対効果は高いのです。フリーゲージトレインは1.3、これに対してスーパー特急は1を若干上回る程度です。

 そのからくりは次の通りです。スーパー特急だと新大阪に行くには博多で乗り換える必要がありますが、フリーゲージトレインだとそのまま新大阪に直通することができるからです。乗り換えには心理的な抵抗を伴い、直通すれば需要の増加が期待できるからです。確かにそれは言えますが、重要なことを忘れています。フリーゲージトレインが時速300キロで走行できないことを。山陽新幹線の速達列車、「のぞみ」「みずほ」「さくら」は時速300キロ運転できる車両で占められています。時速270キロのフリーゲージトレインが入ることができません。長崎県の新幹線活用・整備推進課の課長は、「時速300キロで運転できないならば、無理にスピードを求めず、時速270キロでも本州に乗り入れるようにするべきだ」という趣旨のことを述べていましたが、それはピントはずれです。時速300キロで走ることができないならば、博多で乗り換えてもらうだけです。

 もちろん、長崎新幹線がフル規格で全線つくられるなら、所要時間は大幅に短縮し、九州新幹線のように、新大阪からの直通列車が乗り入れることでしょう。理想的です。しかし、このフル規格の実現のためには莫大なお金がかかります。長崎新幹線をつくるなら、北海道新幹線・北陸新幹線・リニアの全線開業が先です。新函館・金沢名古屋で止まっていてはいけません。長崎新幹線は、これらができてから検討される新幹線でしょう。
(参考:佐賀新聞ホームページ http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.1886389.article.html、http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.1887247.article.html、YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nagasaki/news/20110512-OYT8T00159.htm)

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Comments

>長崎新幹線をつくるなら、北海道新幹線・北陸新幹線・リニアの全線開業が先です。新函館・金沢・名古屋で止まっていてはいけません。

リニアはともかく、長崎と北海道は、想定輸送人員に大差はなく、北海道を優先する理由は何でしょうか?

北海道は、時速350キロ運転しても、対東京では航空機に対抗するにはぎりぎりで、現計画の260キロ運転では意味がありません。また、青函トンネル内で減速を強いられる場合は、所要時間が延びる恐れもある。

350キロにするには、現在の枠組みでは、JRが追加負担しない限り不可能です。

長崎の場合、東京はともかく、関西方面なら、260キロ運転でも航空機に対抗できる。

長崎が後回しになったのは、地元が費用節約のため、フリーゲージなどという安物に飛びついたためだ。

Posted by: かにうさぎ | 2011.05.15 at 10:02 PM

 かにうさぎ さん、おはようございます。

* リニアはともかく、長崎と北海道は、想定輸送人員に

 北海道は、国の軸に当たるというのが大きいでしょう。枝線となる長崎とはその点が違ってくるのです。

* 北海道は、時速350キロ運転しても、対東京では

 首都圏のパイが大きいので、(東京からの乗車はあきらめても)大宮からでもそれなりに集めることができたらいいでしょう。「はやぶさ」が目指している時速320キロは欲しいですね。

 時速260キロだと、首都圏は無理ですね。首都圏-新函館間、東北-北海道間の需要を積み重ねることになります。

* 350キロにするには、現在の枠組みでは、

 下手に安物に飛びつかないほうがよいですね。

* 長崎の場合、東京はともかく、関西方面なら、

 関西発着なら十分に勝てます。はっきり言って、新幹線は整備すれば、かなり強いです。長崎に限らず、もっともっとつくるのが望ましいです。

Posted by: たべちゃん | 2011.05.16 at 05:14 AM

長崎は一気に造って、山陽直通してこそ真価を発揮する路線ですね。
逆に、現状のスキームでの整備促進は困難です。

もし、新鳥栖~武雄温泉をフル規格で整備するつもりがない(できない)のなら、実績のあるミニ新幹線方式も真剣に検討すべき段階かもしれません。
(工事期間の代替路線が無いのが大問題ですが)

Posted by: つばめ800 | 2011.05.17 at 07:10 PM

 つばめ800 さん、おはようございます。

* もし、新鳥栖~武雄温泉をフル規格で整備するつもりがない

 肥前山口-武雄温泉間以外は複線なので(諫早以西は旧線を使用?)、一時的に単線化すればできないこともないですね。

Posted by: たべちゃん | 2011.05.18 at 06:25 AM

>もし、新鳥栖~武雄温泉をフル規格で整備するつもりがない(できない)のなら、実績のあるミニ新幹線方式も真剣に検討すべき段階かもしれません。

武雄温泉-諫早だけでなく、いずれ、諫早-長崎もスーパー特急方式で作られるでしょう。
残るは、武雄温泉-新鳥栖間約50キロを繋げば、完成です。
このわずかの区間の工事費をケチって、中途半端なものを作るのは馬鹿げている。
佐賀・長崎両県とも、目先の安物に飛びつくことなく、将来を見極めた視点が必要と思います。

Posted by: かにうさぎ | 2011.05.22 at 07:02 PM

 かにうさぎさん、おはようございます。

* このわずかの区間の工事費をケチって、

 武雄温泉以東を整備すれば、博多-長崎間は1時間少々で結ぶことができますし、新大阪への直通もできます。

 ベストではないでしょうが、フリーゲージトレインとは違い、悪い話ではないと思っています。

Posted by: たべちゃん | 2011.05.23 at 05:36 AM

南びわ湖駅の記事を見て思ったんですが、もし今地元長崎・佐賀から「中止だ!」と声が上がったら、さらにそれが通ったらどんな影響が出るでしょうか?
勿論武雄温泉から諫早まで可能な限り元に戻すという前提で。
今ならまだそのような判断が可能かと思いまして。

Posted by: 日置りん | 2011.06.09 at 10:43 PM

 日置りん さん、おはようございます。

* もし今地元長崎・佐賀から「中止だ!」と声が上がったら、

 現在のところ、ほとんど工事が進んでいません。中止になれば、結局何も改良されないままになるでしょう。バスと変わらないような時間で、「かもめ」が走るのです。

Posted by: たべちゃん | 2011.06.10 at 04:45 AM

長崎ルートが自治体以外必要ないのであれば、その資金で他の整備新幹線、いや、大宮〜武蔵浦和間を建設してもらいたいですね。

この上越新幹線の重要度はリニアをも凌ぐはずです。
札幌まで金沢・新大阪まで枝葉が延びても、根っこが耐えられませんから。

大宮から新宿にこだわるから話が進まんのです。
武蔵浦和止まりにして武蔵野線をアクセス手段として活用、という形でとにかく作ってしまわんといい加減パンクします。

Posted by: 日置りん | 2011.06.10 at 01:44 PM

 日置りん さん、おはようございます。

* 長崎ルートが自治体以外必要ないのであれば、

 在来線なら高速道路を走る車に対して優位に立つことができません。主要幹線ならすべて新幹線が欲しいのですが、財源が厳しすぎるのがネックですね。

* 武蔵浦和止まりにして武蔵野線をアクセス手段として活用、

 新宿ならともかく、武蔵浦和止まりにどれだけ分散するかは難しいところでしょう。東京まで行く東北新幹線に集中することが予想できます。

 時速300キロならともかく、東京-大宮間のみ(在来線レベルに)スピードを落として運転すれば、かなり詰め込むことができます。わざわざ大金をかけて大宮から南に伸ばす必要はありません。

 話は変わりますが、コメントもかなり増えてきましたので、今日の23:59で締め切りとさせていただきます。ご了承ください。

Posted by: たべちゃん | 2011.06.11 at 06:17 AM

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