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只見線会津川口-只見間を復旧させるのに約85億円、4年以上

 只見線会津川口-只見間は2011年7月の新潟・福島豪雨の影響で運休しています。この豪雨で1か月以上運休した区間は会津宮下-会津川口間(2011年12月3日復旧、会津坂下-会津川口間の復旧費用約5億円)、只見-大白川間(2012年10月1日復旧、復旧費用約2億円)がありますが、被害の甚大な会津川口-只見間が未だに復旧されないまま、代行バスでの運行を続けています。

 以前にも話はありましたが、その只見線会津川口-只見間の復旧工事の費用の試算が出ました。約85億円もかかるのです。JR東日本単独では復旧させることが困難な金額です。復旧費用の内訳は橋脚を強化するなど安全対策をしたうえで第8只見川橋梁付近など橋4か所をかけ直す費用が約70億円、斜面崩壊や信号通信設備などの復旧費用が約15億円です。第8只見川橋梁付近では838メートルにわたって改良する必要があり、レールレベルを最大5メートルこう上させます。工期は第8只見川橋梁の安全対策が最も長く4年を要します。このほかに豪雨で破壊された橋桁の撤去費がすでに約12億円かかっています。

 さてその只見線、85億円の費用と4年の工期をかけて復旧する価値のある路線でしょうか? 岩泉線のときと同様、冷静な分析がなされています。2010年度の平均通過人員(1日1キロ当たりの利用者数)はたったの370人。JR東日本では岩泉線(29人)に次いで下から2番目、JR全体でみても下から順に岩泉線、三江線、大糸線(南小谷以北)、留萌線、木次線、予土線、名松線、日高線の次、つまり9番目の少なさです。私鉄でも只見線より少ないのは阿佐海岸鉄道、紀州鉄道、三陸鉄道(南リアス線)、秋田内陸縦貫鉄道だけです。ちなみに近隣の会津鉄道は756人、野岩鉄道は708人です。しかも、只見線の平均通過人員、分割民営化直後の1988年では634人でした。20年あまりの間に4割ほど減ったことになります。

 区間別に状況を見るとさらに深刻です。只見線でも会津若松に近い会津若松-会津坂下間は1000人以上の利用があります。運賃が低く抑えられ、しかもその中で補助を受けずに利益を出さなければならないJRとしては難しいでしょうが、7往復しかないのが残念なところです。第三セクターに積極経営をさせたほうがよいのかもしれません。これに対して2011年12月までに復旧した会津坂下-会津川口間が279人、2012年10月1日に復旧した只見-大白川間が54人、運休したままの会津川口-只見間が49人です。会津川口-只見間についていえば、通勤定期の利用者は皆無、通学定期の利用者さえいない区間もあります。高校生の利用も見込めないのです。分割民営化直後の1988年の段階では、会津川口-只見間の平均通過人員は184人でした。20年あまりの間に1/4程度に減ったことになります。只見線全体と同様、定期券以外の利用者の減りが大きいです。

 収支を見ても悲惨な状況はわかります。2009年度の会津川口-只見間の営業収益(ほとんど運賃収入)はたったの500万円(ちなみに2010年度の只見線全体の旅客運輸収入は1.7億円です)、これに対して営業費は3.35億円です。営業係数約6700です。営業費の内訳をみると、列車運行にかかる経費が2.8億円、固定資産税が1200万円、減価償却費が4200万円です。運賃収入よりも地元に払う固定資産税のほうが高いのです。

 会津川口-只見間の鉄道時代の赤字は約3.29億円、これに対して現在運行している代行バスの赤字はたったの約2800万円です。停留所を3つ増やし、代行バスを(鉄道時代の3往復から)5.5往復に増やしても、この程度の赤字で済むのです。鉄道とバス、どちらがJR東日本として適切なのかは言うまでもないでしょう。代行バスの利用状況は、一番利用者の多い426便(只見7:10発、会津川口8:00着)が平日12.0人、休日4.7人。全11便の平均は平日3.5人、休日2.3人(会津川口での接続がないなど、どう考えても利用者の見込めないものもあります)。1日当たりの平均でみると平日27.8人、休日18.7人です。鉄道時代より減っていますが、それでも収支は大幅に改善されているのです。

 地元としては、未だに只見線を地域住民の足であり、福島県にとっても観光資源としても重要だとしています。鉄道復旧のためには財政支援を行うことも考えています。JR東日本としては今後復旧させるのか否か、経費負担や将来の見込みを含めて地元と話し合い、総合的に検討を進めるようです。はっきり言って廃線になっても何ら文句の言えない数字です。JR東日本としてはたとえ全額地元が出して復旧してくれたとしても、赤字を垂れ流すだけの存在ですから。利用者が多ければ社会的価値もありますが、只見線の数字はそのかけらもありません。

 地元が責任を取る第三セクターにするならともかく、JRに今後も経営させるのなら、それなりの冷静な判断が求められます。
(参考:JR東日本ホームページ http://www.jreast.co.jp/railway/pdf/20130522_tadami.pdf、毎日jp http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20130523ddlk07040246000c.html)

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Comments

三江線もそうなのですが
地元自治体は地元の足を守ろうというのを建前にして
JRからの固定資産税がほしくて廃線を渋っているとしか考えられませんね
本当に地元の足を守りたい的のであれば上下分離して第三セクター化しますからね

Posted by: どうしようもない | 2016.02.13 at 10:20 PM

 どうしようもないさん、おはようございます。

* 三江線もそうなのですが

 この程度の数字では鉄道を純民間会社で残すという社会的価値はありません。

 どうしても鉄道がほしければ、第三セクターにするしかありません。自分で赤字の責任を持てば、この区間の社会的価値のなさが身に染みるでしょう。JRに押し付けるわけにはいきません。

Posted by: たべちゃん | 2016.02.14 at 07:33 AM

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