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「関門新ルート」構想

 本州と九州を結ぶものとして、関門海峡には関門国道トンネル(国道2号、3.4キロ)、関門鉄道トンネル(JR山陽線、3.6キロ)、関門橋(高速道路、1.1キロ)、新幹線トンネル(18.7キロ)の4つがあります。しかし、このうち関門国道トンネルと関門鉄道トンネルの老朽化が進んでいます。海底トンネルは塩分がしみ込んでくるため、傷みが早く、壁面タイルの張り替えや腐食した鉄筋やコンクリートの補修が欠かせないのです。

 1942年に完成した鉄道トンネルは漏水が1日600トンにも及び、老朽化が著しいです。打音検査などの保守管理作業を行うため、午後の3時間は単線運転で対応しています。JR九州は維持管理に毎年数億円を要しているようです。トンネルが比較的浅いところを走っているため、大型の貨物船が通りにくいという問題もあります。大型の貨物船を通すには関門海峡を浚渫して、水深を深くしないといけませんが、鉄道トンネルがその障害になるのです。1958年に完成した国道トンネルも老朽化が進み、補修工事による長期間の通行止めを時々行っています(2008~2010年度は道路を管理するNEXCO西日本が3か年計画で補修工事を実施したため、年間100日前後通行止めとなりました。工事中は関門橋の通行量が2倍以上に増え、渋滞となることもありました)。片側1車線なので容量も厳しく、道幅が8メートルと狭いので、事故の危険性も高いです。1日3万台もの車が通り、料金所付近は慢性的な渋滞となっています。維持管理費も結構かかります。平年でも年間6億円、3か年の補修工事の費用は80億円で、10年おきに実施しないといけません。もし、関門海峡にある4つの橋やトンネルがすべて使えなくなった場合、その経済損失は年間14兆円にもなると言われています。東日本大震災の直接的な被害額約16兆円に匹敵する数字です。

 そこで浮上したものが関門海峡に新たな橋かトンネルを建設するもの。1985年に地元自治体や財界を中心にそのアイデアが出て、研究・調査を続けてきました。政府は1998年、関門海峡など6海峡に横断道路をつくる海峡横断プロジェクトを閣議決定しました。その後、交通量や地質の調査を行いましたが、2008年3月、公共事業見直しの流れの中で、ほかの(無謀な)海峡横断プロジェクトとともに「関門新ルート」も白紙撤回されました。

 新しい橋かトンネルを建設する場所は下関市彦島迫町と北九州市小倉北区西港町付近を結ぶ(約2.5キロ)のが有力です。これまでの関門海峡を結ぶルートでは、関門鉄道トンネルを除き、下関市壇之浦町と北九州市門司区和布刈<めかり>地区との間を通る早鞆瀬戸水道と呼ばれる海峡最狭部に集中していますが、下関、北九州市の中心部からは外れています。新ルートは中心部に近いところを通ります。道路と鉄道の両方を建設する案が有力です。建設費は関門橋と同じようにつり橋にする案と、トルコのボスポラス海峡横断鉄道(建設中)と同じように沈埋<ちんまい>トンネルにする案の2つがあります。総事業費は橋が2000億円強、沈埋トンネルが1千数百億円と見込まれています。トンネルの中でも沈埋トンネルが推されているのは、建設コストが安く、漏水がほとんどなく、道路と鉄道の併用に対応しやすく、陸上である程度つくるため中小企業に参入の余地があるからです。

 山口県は2013年度予算で調査費3000万円を計上、福岡県などその他自治体や地元財界も実現に向けて活動しています。九州経済連合会、中国経済連合会などが結成する「関門海峡道路建設促進協議会」は2012年9月、「関門新ルート」の早期実現を求める要望書を国交省に提出しました。この協議会は7月26日に総会を開き、新ルート具体化に着手します。8月には安倍首相らに実現を要望することを検討しているようです。
(参考:MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130623/plc13062319260004-n1.htm、http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130623/plc13062321490008-n1.htm、http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130624/plc13062422280011-n1.htm、http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130626/plc13062616100013-n1.htm、http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130627/plc13062710240007-n1.htm)

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Comments

必要性はかなり高いでしょう。

興味が高いのは接続地点。
報道からすると、小倉駅より西側の鹿児島線に乗り入れすることになりそう。

旅客はの大半は小倉駅が目的地でしょうから、大して問題ないですね。
(以遠はスイッチバックか乗り換え)

貨物に関してはどうでしょう。
接続線をデルタ線にして、
福岡貨物ターミナル方面はスルー運転、
日豊線方面は北九州貨物ターミナル経由のスイッチバックになりますかね。
北九州貨物ターミナルがもったいないですが。。

Posted by: つばめ800 | 2013.07.10 at 07:46 AM

 つばめ800 さん、こんばんは。

* 報道からすると、小倉駅より

 場所から考えると、小倉より西側です。ただ、旅客に関しては長距離の需要はないですから、大きな問題にはならないです。

* 貨物に関してはどうでしょう。

 デルタ線にするのが望ましいですが、それができない場合は難しいところです。

Posted by: たべちゃん | 2013.07.10 at 09:35 PM

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