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国交省の北陸新幹線調査結果を読む

 以前にも記事にしましたが、11月11日に与党整備新幹線建設推進プロジェクト チームにおいて、国交省が行った北陸新幹線敦賀-大阪間のルートに係る調査の結果が発表されました。今後の話のベースになりますので、その内容について紹介しましょう。

 候補は3つ、「小浜舞鶴京都ルート」(「舞鶴ルート」)、「小浜京都ルート」(「小浜-京都ルート」)、「米原ルート」です。駅は「小浜舞鶴京都ルート」は敦賀、東小浜、東舞鶴、京都、新大阪に(東舞鶴-京都間の途中駅はありません)、「小浜京都ルート」は敦賀、東小浜、京都、新大阪に(東小浜-京都間は京都市の北側にある山地を南北に走るかたちになります。長いトンネルになりそうです)、「米原ルート」は敦賀、米原につくります。駅は地下にできる京都、新大阪を除いて、地上にできます。建設延長は「小浜舞鶴京都ルート」が約190キロ、「小浜京都ルート」が約140キロ、「米原ルート」が約50キロ(米原-新大阪間の東海道新幹線の営業キロは約110キロ)です。2016年4月価格での概算建設費は「小浜舞鶴京都ルート」が約2.5兆円、「小浜京都ルート」が約2.07兆円、「米原ルート」が約0.59兆円です。想定工期は「小浜舞鶴京都ルート」と「小浜京都ルート」が15年、「米原ルート」が10年です。すぐ着工できるわけではなく、建設の予算も確保しなければならないので、本格的に動くのは北海道新幹線開業後(想定でも2031年としています)、開業はどちらにしてもリニアが全線開業してからのことです。

 「かがやき」タイプが走った場合の所要時間は「小浜舞鶴京都ルート」が敦賀-新大阪間約1時間0分、金沢-新大阪間約1時間31分、「小浜京都ルート」が敦賀-新大阪間約43分、金沢-新大阪間約1時間19分(東京-金沢-新大阪間約3時間50分)、「米原ルート」が敦賀-新大阪間約1時間7分、金沢-新大阪間約1時間41分です。「米原ルート」の所要時間がかかりすぎるような気もしますが、東海道新幹線の運行本数の多さから最適なダイヤを組めないとして、乗り換え時間を15分と余裕を持たせているようです。運賃・料金は「小浜舞鶴京都ルート」が敦賀-新大阪間6460円、金沢-新大阪間10140円、「小浜京都ルート」が敦賀-新大阪間5380円、金沢-新大阪間8740円、「米原ルート」が敦賀-新大阪間6560円、金沢-新大阪間11190円です。計算方法は現行の北陸新幹線の運賃・普通車指定席料金(通常期)をベースにしています。消費税の税率改定を含めて値上げは一切ないと仮定しています。敦賀-新大阪(「米原ルート」は米原)間は建設延長をそのまま使用、金沢-敦賀間は現行の北陸線、「米原ルート」の米原-新大阪間は現行の東海道新幹線の営業キロを使っているようです。また、「米原ルート」は運賃を米原経由で計算し、料金は北陸新幹線部分と東海道新幹線部分の特急料金を単純に合算し、割引はないものとしています(敦賀-米原-新大阪間の特急料金の算出根拠はよくわからないですが、何らかの調整がなされているようです)。開業初年度の敦賀-新大阪(「米原ルート」は米原)間の輸送密度は「小浜舞鶴京都ルート」が約34700人、「小浜京都ルート」が約41100人、「米原ルート」が約36100人です。

 3つの候補の総便益(沿線の経済波及効果は含まれていません)と総費用は「小浜舞鶴京都ルート」がそれぞれ約7100億円と約9700億円、「小浜京都ルート」が約8600億円と約8000億円、「米原ルート」が約5300億円と約2400億円です。よって、費用対便益は「小浜舞鶴京都ルート」が0.7、「小浜京都ルート」が1.1、「米原ルート」が2.2ということになります。「小浜京都ルート」と「米原ルート」は合格、「小浜舞鶴京都ルート」は不合格ということになります。ちなみに、京都-新大阪間の経由地を箕面市経由ではなく学研都市経由にすれば(箕面市経由なら京都-新大阪間はノンストップですが、学研都市経由の場合は精華・西木津地区に駅ができます。地上にできます)、「小浜舞鶴京都ルート」、「小浜京都ルート」ともに費用対便益は1を割り込み、不合格ということになります。距離が長い分建設費がかかり所要時間も伸びるので悪くなるのは当然でしょう。

 費用対便益を考えたら、圧倒的に数字の良い「米原ルート」でつくるべきでしょう。しかし、「米原ルート」には重大な欠陥があります。米原で乗り換えが必要で、北陸と関西を直通することができないのです。北陸新幹線が開業するころには、リニアは全線開業し、東海道新幹線の混雑の問題は解消しています。1時間に2本程度の直通列車を入れる余裕がないとは言えません。それなのに直通が想定されていないのは、根本的に北陸新幹線と東海道新幹線が直通できないからだと考えられるでしょう。新幹線と在来線なら乗り換えを迫られても仕方がありませんが、大多数の人が目的地とはしない米原でフル規格新幹線同士で乗り換えしなければならない理由を説明することはできません。JR東海とJR西日本を説得して直通が担保できない限り、採用しないのが望ましいでしょう。北陸新幹線の敦賀以西の建設目的は、北陸と関西を高速で直結することにありますから。そういう意味では、望ましいのは「小浜京都ルート」と言えるでしょう。早くこれでまとまるのが望ましいです。

 「小浜舞鶴京都ルート」と「小浜京都ルート」の他の新幹線ネットワークとの接続による社会・経済的意義として、「基本計画路線と一部区間を共用できる可能性がある」(国交省ホームページより)ことが挙げられています。これは山陰新幹線を意味しています。「小浜舞鶴京都ルート」を採用するメリットとして、山陰新幹線建設につながるというのがありますが、国交省の記述によれば、「小浜舞鶴京都ルート」でなくとも「小浜京都ルート」で対応できるとされているのです。東小浜に将来山陰新幹線を分岐することができるよう、準備工事をしておけばよいのです。山陰新幹線をつくる必要性は低いですが、政治的には重要な記述です。「小浜京都ルート」にしておけば、山陰新幹線の可能性はゼロではないということを意味するのです。山陰方面の政治家にも運動を行ったお土産が用意されているのです。
(参考:国交省ホームぺージ https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo03_hh_000076.html、https://www.mlit.go.jp/common/001152043.pdf、京都新聞ホームぺージ http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20161112000029)

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Comments

今回の調査結果で小浜京都ルートの京都-新大阪間北回りでほぼ確定といえるでしょう.舞鶴や南回りが客観的な数字で否定され,米原は乗り換えが必要な上にJRの同意も得られないですから.もちろん,京都にしても大阪にしても乗り換えでは困るでしょうから.また,整備計画に小浜市付近とある以上これを覆すのも難しいです.これで万が一米原にしてしまえば正に「安物買いの銭失い」になってしまいます.仮に,東海道新幹線に乗り入れできるのであれば10年も20年も前に米原で決まっているでしょう.

また, 以下の理由から小浜市付近の駅が東小浜駅というのは最も妥当だと思います.
①当然ながら小浜線と接続できる(アクセスに使う人はそこまで多くないかもしれないが皆無ではなく,訪問者とかにとっては新幹線単独駅では不便)
②小浜駅乗り入れに比べて線形に無理がない(通過列車が設定されると思われる以上は急カーブは避けたい)
③高速道路の小浜インターも近く高速道路との接続もよい
④小浜市街地から遠すぎない
⑤駅の東側は建物が少なく用地取得も小浜駅乗り入れよりは容易で駐車場やバス乗り場,タクシー乗り場,送迎用ロータリー,その他駅前施設も整備しやすい

という具合で新幹線,在来線,道路全てが便利に利用できる若狭地区最大の交通結節点として整備できると思います.

Posted by: 84axgd86dm70 | 2016.11.12 at 11:57 AM

 84axgd86dm70さん、こんにちは。

* 仮に,東海道新幹線に乗り入れできるのであれば

 全くその通りで、「米原ルート」の致命的な欠点です。これができるのならば、とっくに「米原ルート」で決まっていて、金沢-米原間が一気に開業できるはずです。

* また, 以下の理由から小浜市付近の駅が

 「小浜京都ルート」でできる小浜市付近の駅は、若狭のどこかにできればいいと思っていましたが、無理することなく小浜市に近いのであればそれに越したことはありません。

Posted by: たべちゃん | 2016.11.12 at 03:06 PM

2031年着工は遅れに遅れた最悪の場合の想定ではないかと思います.今年か来年に正式なルートが決まれば,環境アセスメントは2020年くらいに終わりそのころには2022年開業の北陸(金沢-敦賀)と九州(武雄温泉-長崎)はほぼ完成に近づいており本格的に工事をしているのは2030年開業の北海道新幹線の札幌延伸だけになっているでしょう.(これも札幌駅のホームが決まれば少しは前倒しされるかも)
なので金沢-敦賀と武雄温泉-長崎の工事が大きく遅れたりしない限りは2020年から2022年くらいには敦賀-新大阪は着工されると思います.

Posted by: 84axgd86dm70 | 2016.11.12 at 04:34 PM

たべちゃんさん、いつも記事ありがとうございます。

乗換その他、バカバカしい理由のために米原ルートを選択できず1兆円以上を余計に費やすことになり、その一部は国全体で担わされるというのは残念ですが、仕方ありません。

北陸新幹線の運転本数は、どう考えても新大阪起点で新規に新幹線の線路を敷く必要があるほどではないでしょう。それでもせっかく建設するのであれば、せめて新大阪〜京都間の区間列車を多数運転して、都市圏の高速通勤輸送に活用できるように、とも思います。京都市北部に通勤者用の駅を設けてもいいかもしれません。

けれど、京都も新大阪も大深度地下では他の交通機関への乗換に不便で、毎日の通勤利用には嫌われるだろうし、途中駅もナシという方針のようなので期待薄。京都駅の構造も、新大阪への折り返しができるようにする予定はないのでしょう。福井県では小浜市の新駅が近畿への通勤圏になる、と息巻いていますが、人口の都心回帰が進む今、たぶん新幹線の経営を改善できるほどの需要は期待できませんよね。

まあ、経営改善のためにさらに投資が必要というのでは、この地域に関係ない国民は余計迷惑なんですが。ただ、2兆円以上の巨額な建設費の割に、利用客から回収できる運賃/料金収入も低い小浜〜京都ルート。そう言った都市圏の通勤需要を考慮せず、純粋に「北陸向け新幹線」だけで本当に費用対便益が1.1に達するのか、個人的には数字がやや疑問です。

Posted by: (yo) | 2016.11.12 at 07:16 PM

 84axgd86dm70さん、こんばんは。

* 2031年着工は遅れに遅れた最悪の場合の想定

 確かに遅いとは思います。ルートが確定し、北陸新幹線金沢-敦賀間と長崎新幹線に目途が立てば着工できるはずです。問題は財源なのでしょう。そこが見つからない限り前倒しは難しいのではないでしょうか?

Posted by: たべちゃん | 2016.11.12 at 08:30 PM

>> 新大阪〜京都間の区間列車を多数運転
誰が乗るんだこんなもの。
芸能人や会社役員ぐらいでしょ。

Posted by: 誰か | 2016.11.12 at 08:35 PM

 (yo)さん、こんばんは。

* 乗換その他、バカバカしい理由のために

 どう考えても北陸-関西間を直通することができないのは重大な欠陥でしょう。

 「米原ルート」にしたいのならば、米原でフル規格新幹線同士の乗り換えをさせずに直通させるのが必要条件です。

* せめて新大阪〜京都間の区間列車を多数運転して、

 それならば東海道新幹線京都-新大阪間を新幹線で移動する人がたくさんいます。

 採算性も合格点の「小浜京都ルート」を叩く前に、「米原ルート」の根本的な欠点を解決する方策を考えた方がよいでしょう。「米原ルート」で直通できれば、それに越したことはありませんから。

Posted by: たべちゃん | 2016.11.12 at 08:40 PM

 誰かさん、こんばんは。

* 誰が乗るんだこんなもの。

 確かにその通りです。

Posted by: たべちゃん | 2016.11.12 at 08:44 PM

>純粋に「北陸向け新幹線」だけで本当に費用対便益が1.1に達するのか、個人的には数字がやや疑問です。

別記事で、今回の試算が、京都-新大阪間を含まないのではと書きましたが、含んでいたことは確認できました。
この点はお詫び申し上げます。

ただ、過去の関西広域連合や、最近の滋賀県の試算と照らし合わせると相当開きがあり、この試算
には当方も疑問があるとは思っています。

詳細はTB参照してください。

Posted by: かにうさぎ | 2016.11.13 at 12:16 AM

 かにうさぎさん、おはようございます。

* ただ、過去の関西広域連合や、最近の滋賀県の

 それを言い出して何になるのでしょうか? 「関西は不便なままにしておけばよい」と考えるならともかく、新幹線を整備したいのなら何の益にもならない話です。特急が多数走る北陸新幹線西部は、これまでの整備新幹線の実績から考えて整備する価値のあるものです。

 話は変わりますが、コメントもかなり増えてきましたので、今日の23:59で締め切りとさせていただきます。御了承ください。

Posted by: たべちゃん | 2016.11.13 at 07:59 AM

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