「ベーシック・インカム」
「ベーシック・インカム」という言葉があります。これは、すべての人に最低生活水準を保障するため、税金で以て一定の金額を支給するものです。失業していたり、障害や高齢で働くことができなかったりしても、もらえるお金です。京都府立大小沢教授によれば、日本の場合、「ベーシック・インカム」は毎月8万円程度になるようです。この金額は、日本に住んでいる人なら、どれだけ金持ちでも貰えます。
「ベーシック・インカム」を導入することによる利点は、複雑な税金の控除が整理できることです。シンプルな税制になります。そして、もうひとつ大きな利点は、年金、生活保護など各省庁がばらばらにやっていることを、すべて税金というかたちで一本化できるのです。収入がない人の場合は、確定申告をすることによって毎月8万円が国から支給されるのです。実はそれなりの収入があるのに、生活保護を受け続けるということもなくなります。毎年申告しないとお金はもらえないのですから。もっとも、年金は基礎年金レベルなので、リッチな老後を送りたい人は、民間の年金に入っておく必要があります。経営者側からみると、国が「ベーシック・インカム」を支給してくれるので、賃下げやリストラがしやすいというメリット(?)もあります。安い給料で人を雇うことができるので、人件費の安い諸外国に対抗できる可能性もあります。こういう利点があるため、フリードマンのような新自由主義の経済学者でも「ベーシック・インカム」を支持する人はいます。
さて、問題は財源。小沢教授の試算では、「ベーシック・インカム」に必要な財源はすべて所得税で賄うと仮定しています。政府の役割を「ベーシック・インカム」を支給することと、医療や介護のために社会保険料(収入の4%)を徴収することに限定しています。さて、気になる所得税の税率は、社会保険料を引いた残りに対して一律に45%。かなり高いように見えますが、収入の少ない人には「ベーシック・インカム」があるので、実質的な負担割合は小さいです。
具体的に例を挙げて説明しますと、年収700万円のサラリーマンの夫・専業主婦・特定扶養控除が適用される子供の3人家族の場合、これまでの社会保険料(収入の10%と仮定しているようです。年金の分があるので、「ベーシック・インカム」導入後の率より高くなっています)・所得税控除後の金額は609.65万円。ところが「ベーシック・インカム」導入後は657.6万円となり、自由に使えるお金が50万円ほど増えます。反対に、年収400万円のシングルの場合、社会保険料・所得税控除後の自由に使えるお金は、「ベーシック・インカム」導入により、350.6万円から307.2万円に約40万円強減ります。大雑把にいって、家族を持っている人の負担が減り、独身の人の負担は増えます。特に負担の増加が大きいのは、独身貴族。年収1000万円の人の場合、「ベーシック・インカム」導入により、負担が200万円ほど増えます。
ここの試算では収入と所得とをごちゃまぜにしているので正確な数字ではありませんが(しかもサラリーマンの収入に直接税率をかけています)、考え方自体は検討に値しますね。
(参考:朝日新聞「be on Saturday」9月12日朝刊)
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Comments
はじめまして
私もベーシック・インカムは検討に値する制度だと思います。
ベーシックインカムですが、下記のサイトが充実していて参考になります。
http://bijp.net/
そこで発行しているメルマガも週刊で発行されて、毎週最新トピックが発信されていて、とても参考になります。
http://archive.mag2.com/0000292484/index.html
Posted by: homeya | 2009.09.19 12:23 PM
homeyaさん、こんばんは。
* ベーシックインカムですが、
ホームページは見ました。すぐには無理でしょうが、前向きな議論をする価値はありますね。
Posted by: たべちゃん | 2009.09.19 11:11 PM