暫定税率廃止&高速無料化は時期尚早
与党となった民主党は、来年度の概算要求に、高速道路の無料化の試行を盛り込みました。また、来年度の税制改正で、揮発油税等の暫定税率の廃止を行う予定です。これにより高速道路が一部区間で無料になったり、ガソリンの価格が1リットル当たり約25円下がったりすることになります。
地方の場合、「高速道路はガラガラだが、並行して走る国道は渋滞している」という話もあります。国道から高速道路にシフトすれば、渋滞が消え、温室効果ガスの発生はむしろ減ります。それを考えると、ETCの通勤割引は理にかなっているといえます。もともと地方圏では通勤は車がメイン。不便なので、鉄道は高校生の通学ぐらいしか使われません。高速道路を通勤時間帯に限り割引したり、無料にしても、鉄道からの移行はそれほど大きくはないでしょう。ある程度利用者の多いところは、バスを走らせたりするといいのですが。
反対に、今行っている1000円での乗り放題や、これから行おうとしている無料化は、鉄道がそれなりに力を持っている長距離の需要を奪ってしまいます。こちらはマイナスの影響が大きいです。民主党は来年度の予算(概算要求段階)で6000億円(首都高速、阪神高速を除いた高速道路収入の1/3)の費用をかけて無料化の実験を行おうとしていますが、すでに1000円乗り放題である程度の結果が見えています。単に高速道路の値下げだけを行うのは、弊害が大きいです。高速道路収入の穴埋めのためにも、車のユーザーでの負担がいるでしょう。車の利用度合いに応じて負担するのなら、それが高速道路料金のかたちになっても、揮発油税等のかたちになってもかまわないです。車のユーザーの負担になるとはいっても、使わない車にもかかる自動車税の増税は良くないです。地球環境のためには、車をできるだけ使わず、できるだけ公共交通にシフトさせたいのですから、「固定費」みたいなものはできるだけ少なくしたほうがよいです。
暫定税率の代わりに環境税などの新たな税金の設計を行うまで、暫定税率の廃止は先送りしたほうがよいのではないでしょうか? もっとも、暫定税率を従来通り道路建設に充てていては、意味がありません。一応は、揮発油税等などの道路特定財源は一般財源化されているのですから、今のままでも道路以外の事業に充てることができます。今の日本の財政は厳しく、国債の発行高はなかなか減りません。来年は新政権になったことから、新規施策も多く、国債の発行高はむしろ増加の見込みです。あらゆる方法で増税を図らないといけないのに、減税をする余裕はどこにもありません。
ただ、揮発油税等にしろ、環境税にしろ、全額道路とはまったく関係のないところに入れるのも理屈が通らないかもしれません。課税対象が汚染物質なのですから。その場合、使い道として意義があるのは、公共交通の充実。しかも、ローカル線ではなく(ガラガラのローカル線だと、それ自体が環境が悪いこともあります)、新幹線などの主要幹線の整備。東京-大阪間なら、トラックのための貨物鉄道もよいでしょう。遅くて不便な乗り物に乗るのは高齢者・子供・鉄道ファンだけでしょうが、車よりも文句なしに速い乗り物なら黙っていても使ってくれます。
(参考:時事ドットコム http://www.jiji.com/jc/zc?k=200910/2009101501114、Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091009-00000077-san-bus_all、国土交通省道路局ホームページ http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-funds/minaoshi.html)
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