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羽田ハブ空港化への大転換

 「質より量」という言葉がぴったりと当てはまる日本の航空行政。地方空港がやたらと整備されますが、乗り入れる便は少なく、閑古鳥が鳴いています。ちょっと大きくなれば、「おらが県にも国際空港」とばかり、国際線が就航します。しかし、ひとつしかない行先は必ずといってもいいほど、ソウル(仁川)。韓国にとっては泣いて喜ぶような話です。日本が仁川のハブ空港化に協力しているのですから。日本はと言えば、首都圏には羽田と成田という大空港が存在しますが、それぞれ国内線、国際線主体の空港に役割分担され、乗り継ぎは不便です。第二の都市圏の関西圏も、関空の開業によって廃止されるはずの伊丹空港が残ってしまい、おまけに神戸空港までできてしまい、せっかくの関空の機能が活かせていません。日本にはハブ空港というものはなく、むしろソウルの仁川がそれに該当するというのが、残念ながら現実でありました。

 しかし、12日、前原国交相大臣は、泉佐野市内で橋下大阪府知事と会談したときに、羽田をハブ空港とする趣旨の発言をしました。これまでの羽田と成田の役割分担を変えようとするのです。

 羽田は都心に近く、理想的ですが、ハブ空港になるには、キャパが小さいです。来年にD滑走路ができますが、さらに兆のお金をかけて滑走路を増設しなければ、需要は満たせないでしょう。滑走路を増設しないならば、地方空港をつぶすのを覚悟で、羽田からの地方便を削り(赤字の地方路線を削れば、JALの再建には役立ちますが)、その枠を転用させないといけません。巨額の公共事業を行ったり、地方空港をつぶしたりする「度胸」はあるのでしょうか?

 これまで国際線を担っていた成田との役割分担の難しさもあります。羽田をハブ空港化した場合、成田の役割はどのようになるのでしょうか? 今までは、「国内線は羽田、国際線は成田」と言えばよかったのですが、羽田がハブ空港化すれば、両空港のすみわけは至難の業です。成田に大半が残れば、羽田はハブにはなりませんし、大量に羽田に移せば、成田は閑古鳥が鳴いてしまいます。

 成田は羽田に比べてかなり遠いように思えますが、来年の7月には成田高速鉄道が開業し、東京(日暮里)と成田空港(空港第2ビル)との間が36分で結ばれます。運営するのがJRではなく京成なので、運賃・料金もそれほど高くないでしょう。「スカイライナー」は、北総鉄道・成田新高速鉄道を経由するとはいえ、両端のターミナルが京成なので、従来の京成船橋経由と区別できません。運賃は現状の「スカイライナー」と変わらず、料金も現状より大幅に上がるとは考えにくいです。

 再拡張ができない、地方空港も大幅には削れない、となった場合、次善の策としては、関空や中部といった国内のほかの主要空港を使うしかありません。羽田をハブ空港化するという「理想」からは外れますが、肝心のキャパがない以上は仕方がないでしょう。その意味では、「関空もハブにすべき」という橋下知事の考えはそう外れてはいないことになります。国の中心のハブ空港ではないにせよ、国の基幹空港として位置づける必要はあるでしょう。もっとも、その橋下知事、前原大臣が関空のハブ空港化に触れていないのに怒り、関空への税金の投入をやめる趣旨の発言をしましたが、激怒するのは橋下知事の戦略の一環でもあるので、文字通りに受け取らないほうがよいでしょう。ちゃんと府庁の中では、幹部に関空をハブ空港にするにはどうすればよいのか理論武装するように指示していますから。

(追記)
 前原大臣と森田千葉県知事は、14日、国土交通省内で会談しました。森田知事はこれまで、(成田空港の地位低下を招きかねない)羽田のハブ空港化に強く反発していましたが、羽田・成田の両空港を一体的に活用することで合意しました。

 前原大臣の説明によれば、羽田は2010年のD滑走路完成により、新たに年間11万回の発着枠が生まれます(発着枠は滑走路が完成しても一気に増えず、徐々に増えていきます)。すでに国際線に3万回、国内線に2万回割り当てることが決まっていますので、残りについてできるだけ国際線に回したい意向のようです。

 森田知事が会談後の様子からみてもわかりますように、羽田をハブ空港化するといっても、成田の機能をごっそり移すわけではないのです。両方の空港が並立するのです。大きく騒いだ割には、大したことはないのです。「理想」にはほど遠く、両空港の役割分担の話が表面化したときには、さらに事態はややこしくなりそうです。
(参考:MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/politics/local/091012/lcl0910121134000-n1.htm、朝日新聞10月14日朝刊 14版、朝日新聞10月15日朝刊)

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飛行機、空港」カテゴリの記事

Comments

 羽田をハブになんかされたら、タダでさえ混んでいる空港がさらに混んで使い物にならなくなります。
 国内線で荷物が出てくるまでに20分はざらです。40分待たされたこともあります。ハブ化で手に持つが増えればさらに待ち時間が延びます。

 東京は「目的地」として十分すぎるほどの需要があるのでハブにはする必要はありません。


 国内のハブ空港は、、長い滑走路を複数本持つ関空か、新千歳でしょう。

Posted by: ▲ 飛遊人 | 2009.10.14 09:07 PM

 ▲ 飛遊人さん、おはようございます。

* 羽田をハブになんかされたら、

 羽田のハブ化のためには、滑走路だけではなく、ターミナルも整備が必要ですね。

 とりあえず、来年には国際線ターミナルができますから、その状況を見て判断する必要がありますね。

* 東京は「目的地」として十分すぎるほどの

 目指すのは、アジア的な「ハブ空港」なのでしょう。首都圏にある国の看板空港の充実という意味です。

* 国内のハブ空港は、、長い滑走路を

 関空は関空で、高いポテンシャルがありますから、西の玄関としてブラッシュアップさせておく必要がありますね。

Posted by: たべちゃん | 2009.10.15 05:05 AM

>羽田をハブ空港化するという「理想」からは外れますが、肝心のキャパがない以上は仕方がないでしょう。

羽田をメインハブ・成田をサブとし、両空港から国内線・国際線とも発着する体制にすればいいのではないでしょうか。
ロンドンでは、都心に近いヒースローと比較的遠いガトウィック双方から国内線も国際線も発着、両空港とも満杯まで使われています。

>成田は羽田に比べてかなり遠いように思えますが、来年の7月には成田高速鉄道が開業し、東京(日暮里)と成田空港(空港第2ビル)との間が36分で結ばれます。

という事情もある。千葉県や東京都東部では成田が近い人もいます。

関空や中部は東京の代替にはなりません。東京に入れないから仕方なく乗り入れても採算にあわないから撤退続きです。国際線利用者も関空は成田の3分の1程度、中部は更にその半分だ。

関西や中部関係者は東京の一人勝ちを快く思わないのだろうが、東京を使いにくくしても、関西や中部が増えるわけでなく、ソウルなど他国に流れるだけです。

Posted by: かにうさぎ | 2009.10.15 10:01 PM

こんにちは。

世界的な視点から、その空港を使ってくれる人や貨物の量を考えれば、日本のハブ空港は首都東京にあるというのが本来の形です。
そうしないのであれば、どうするのかという国家的なビジョンが必要ですが、それがないから話がおかしくなっています。(まぁそんなビジョンがあると、空港をあちこちにバコバコ作ることはできなくなりますが(笑))

ハードウェアとしての空港を生かすには、ソフトウェアとしてのエアラインの存在が必須です。世界のハブ空港にはかならずそこを拠点とする元気な航空会社が居ます。
ということで、JALやANAの現状を思えば、日本にハブ空港というのはまだまだ夢物語でしかありません(苦笑)

Posted by: Kinoppi☆ | 2009.10.17 11:05 AM

>森田知事が会談後の様子からみてもわかりますように、羽田をハブ空港化するといっても、成田の機能をごっそり移すわけではないのです

自民時代から検討されている案でも、

・欧米便などは深夜時間帯に限り年3万回程度
・有効時間帯は近距離国際線に限定、当初年3万回 程度の計画だが、6万回程度に増やす

これだけでも、羽田の国際便は年9万回、関空(年8万回程度)を上回る。この程度の便数があれば、世界の主な所にはアクセス可能であり、地方から海外へのアクセスは向上します。

一方、成田は年22万回程度発着、かつ乗り入れ待ち国が40カ国もある。羽田の増枠分と深夜便を全部国際線に充当しても、年14万回だから、国際線が成田中心ということには変わりない。

国際線は成田主体、羽田を国際ハブ空港にという、一見意味不明な言動も、こう考えると理解できます。

Posted by: かにうさぎ | 2009.10.18 09:42 PM

 かにうさぎさん、おはようございます。返事が遅くなりました。

* 羽田をメインハブ・成田をサブとし、

 両空港にどうやって航空便を振り分けるかが、難しいところですね。

* 関空や中部は東京の代替にはなりません。

 使える手は何でも使ったほうがよいでしょう。仁川ではなく、国内の空港での乗り継ぎですから。

Posted by: たべちゃん | 2009.10.19 04:36 AM

 Kinoppi☆さん、おはようございます。

* そうしないのであれば、どうするのかという国家的なビジョンが必要ですが、

 そんな発想はどこにもないのでしょう。ですから、かつてはローカル線があちこちできましたし、今は高速道路や空港があちこちできています。

* ハードウェアとしての空港を生かすには、

 この際、航空会社の体質も変える必要がありますね。

Posted by: たべちゃん | 2009.10.19 04:49 AM

 かにうさぎさん、おはようございます。

* 国際線は成田主体、羽田を国際ハブ空港にという、一見意味不明な言動も、

 「羽田を発着する国際便を増やす」という程度のものですが、「ハブ空港」と言ったがために、ややこしくなりましたね。

Posted by: たべちゃん | 2009.10.19 05:01 AM

コメントが長くなってきましたが、

>「理想」にはほど遠く、両空港の役割分担の話が表面化したときには、さらに事態はややこしくなりそうです

将来の懸念材料としては、

・整備新幹線やリニアの延伸で、国内線需要が減少し、羽田の国際線枠が増加する
・羽田の欧米線が深夜限定という条件も、なし崩し的に緩和される

後者の問題は、程なく噴出しそうです。
深夜限定では、航空会社には使いづらい。相手国の発着時刻が最適な時間にならない可能性がある、待機時間が長くなり機材運用が非効率になる、外国系会社の場合、成田・羽田両方に拠点を持つのは非効率等の問題がある。

いずれ、深夜便を運航する会社は、羽田に集約ということになると思います。

米国大手2社は、第3国への乗継が多く、発着時間帯もPM2-6時に集中、深夜便のニーズはないので、成田に残留する可能性が強いが、欧州系や豪州・中東便などは、深夜運航と引換に、全便羽田集約となるかもしれない。

Posted by: かにうさぎ | 2009.10.19 09:58 PM

 かにうさぎさん、おはようございます。

* 将来の懸念材料としては、

 「羽田が便利だ」といわれている以上は、そういう問題は出てくるでしょうね。

 コメントもかなり増えてきましたので、今日の23:59で締め切りとさせていただきます。ご了承ください。

Posted by: たべちゃん | 2009.10.20 05:03 AM

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