整備新幹線、2010年度も着工見送り
民主党政権に代わっても、すでに着工されている区間については、順調に工事が進み、予定されている時期には開業するようです(北陸新幹線については不透明な要素はありますが)。すでに着工の時点でおおよその開業時期が決まっていることから、建設の中止はもちろんのこと、予算を削減して開業時期を遅らせるのも自治体やJRとの話し合いが必要となります。
問題なのは、北海道新幹線新函館-札幌間などの未着工区間。2008年度も2009年度も新規着工の話がありましたが、結局は財源不足を理由に見送られてしまいました。そして、2010年度も新規着工は見送られてしまったのです。
財源については、本来的には一般財源を増やせばいいのですが、そうでなくても今着工されている区間が開業すれば、それなりの解決ができるでしょう。かなり遅くはなりますが、建設はできます。問題は、政権が変わったことにより、今までの方針が見直されることになったことです。整備新幹線はこれまで失敗したことのない事業ですが、暫定税率の廃止や高速道路の無料化などの自動車を優遇する政策(明らかに環境の悪化に貢献します)を推進するために、犠牲になる可能性もあります。未着工区間についても、特急列車の本数を考えるとそれなりの需要があるので、失敗する可能性は小さいでしょう。優秀な公共事業なのです。オリンピックが来れば考えればよい長崎新幹線はともかく(財源に余裕があれば長崎新幹線クラスもあったほうがよいのですが)、新函館止まりの北海道新幹線や金沢止まりの北陸新幹線は逆にもったいないです(詳しくはこちらを見てください)。
新政権になったことによる整備新幹線の新たな方針はこれからつくられます。並行在来線の問題、人口減少を加味した予測、低すぎるJRの負担が論点になるようです。しかし、並行在来線の問題がどうして起こるかと言えば、JRの運賃が安いのが根本的な原因なのです。大都市圏以外は特急がないと経営できないのが現実です。確かに並行在来線の問題は重要ですが(特に貨物に関しては、重要な問題です)、適正な運賃を取れない以上、JRを批判することはできません。また、並行在来線問題を理由にして、整備新幹線を否定するのも適切ではありません。車では決して真似することのできないスピードで走る新幹線は、鉄道の特性を活かした乗りものです。大都市圏の通勤輸送と都市間の高速輸送が鉄道の得意とするところであり、ローカル輸送は得意ではありません。1時間に1本か2本という特急の運転間隔を考えると、時速130キロの特急のスピードでは、アドバンテージにならないのです。少々高くても、速い新幹線にはお金を払って乗ってくれます。並行在来線の問題を恐れて新幹線をやめるのは、角を矯めて牛を殺す話です。そもそも、すでに整備新幹線の一部区間は開業し、これまでJRであった区間が切り離されています。それなのに、未着工区間だけを問題にしても意味はありません。
次に人口減少を考慮した需要予測についてですが、交通の需要は、人口の減りかたほど大きくは減りません。新幹線は過疎地帯ではなく、それなりに人口がある県庁所在地などの主要都市を通りますから、それほど深刻な状態にはならないでしょう。さらに言えば、整備新幹線は、他の交通機関とは違い、JRの同意がなければ建設できません。整備新幹線の貸付料は開業前の予測に基づいて行われますので、変に甘い予測をすればJRが損するだけです。JRは予測について、責任を負っているのです。
JRの貸付料の負担ですが、これはJRとの協議のもとで行われています。JRの負担が小さい、ということは、裏を返せば開業前の予測が厳しい方向に出ている、ということなのです。もう少し甘い予測でもよかった、ということなのです。取ることができる対策とすれば、北海道新幹線が新函館や札幌まで開業したときや北陸新幹線が金沢以西まで開業したときに、すでに開業した(もしくは開業予定の)整備新幹線である東北新幹線盛岡-新青森間や北陸新幹線高崎-上越間の貸付料を見直すことぐらいです。東北新幹線や北陸新幹線金沢暫定開業の段階では、北海道新幹線や北陸新幹線全線開業に伴うJR東日本の利益の増加は考慮されていませんから。ただし、この手はJR西日本には使えません。九州新幹線の全線開業により山陽新幹線を持つJR西日本の収益は増加しますが、山陽新幹線は国鉄時代に開業したため、使用料の概念はありません。そういう意味では不完全です。貸付料を上げるもう一つの方法は、高速化です。2011年、東北新幹線にE5系がデビューします。盛岡以南では最終的に時速320キロ運転しますが、盛岡以北では時速260キロしか出せません。新青森ならこの程度のスピードでもいいですが、札幌までこの調子では時間がかかり過ぎます。整備新幹線計画ができた40年近く前のスピードにこだわる必要はありません。40年前の「時速260キロ」は、今の「時速360キロ」のようなものです。建設費はかかるでしょうが、東北・北海道新幹線は時速360キロを出せるようにするほうが長期的な面からすればいいのです。航空機から鉄道へのシフトが大きくなるため、採算は良くなります。国もJRも得する、いい話です。
(参考:朝日新聞11月28日朝刊 14版、Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091127-00000048-jij-pol)
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