堺市のLRT計画は幻に
堺の長年の課題は、東西を結ぶ交通機関の弱さ。大阪市内とを結ぶ交通機関は充実していますが、それらを結ぶ鉄道はありませんでした。そこで出てきたのが、堺東と堺とを結ぶLRT。利用者の減少に悩む路面電車の阪堺線も、新型車両の導入などでLRT化して、相互直通するというものです。ここが実現すれば、全国的に見ても進んだ路面電車の姿を見ることができたはずでした。
しかし、このせっかくの計画も住民からは支持されず、9月に行われた市長選でLRTに批判的な新人が当選したため、事態は大きく変わりました。竹山新市長のもとで堺市は、(LRTを運行する予定であった)南海電鉄と阪堺電気軌道に対し、LRTの建設中止を申し入れたのです。中止となった区間は、堺東-堺間と、阪堺線我孫子道-浜寺駅前間(阪堺線区間は既存の路面電車の改良)です。堺-堺浜間は中止の対象にはなっていませんが、見直し対象にはなっています。地下鉄の計画もありますから、まずこの区間だけができることはないでしょう。これにより、堺にLRTをつくるという先進的な計画は幻となってしまいました。市長選の結果からこうなることは予想できましたが、せっかくの計画も水の泡です。
残る阪堺線については、堺市と阪堺電気軌道で話し合うことになっています。しかし、LRTが消えた以上、阪堺にとって阪堺線を残す必要はありません。もともと阪堺は利用者の減少から堺市内の部分を廃止する計画でした。これを存続させたのは、堺市内のLRTの話があったからです。阪堺線もLRT化され、活用されることを期待していたのです。堺の住民がLRTに冷淡な態度を示した以上、堺の街から路面電車が消えるのは当然のことです。今さら阪堺線の廃止反対運動をしても、何の効果もないでしょう。LRTをつくること以外で、阪堺線を助ける道はなかったのです。
これで堺は、これまで弱かった東西の軸をつくるという絶好のチャンスを逃しました。路面電車が見直されつつあるこの時代になって、路面電車を廃止に追い込むという愚挙を犯しました。住民の無理解で路面電車が全廃になるのは岐阜で最後かと思ったら、そうではなかったのです。この後、堺の街がどうなるかはわかりません。堺が不便なら何も文句を言わず、そのまま電車に乗って難波や天王寺まで行くだけです。
(参考:YOMIURI ONLINE http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20091104-OYO1T00751.htm)
| Permalink | 0
「鉄道」カテゴリの記事
- 阿佐海岸鉄道、車両不具合で当分の間運休(2024.10.07)
- 美祢線に快速バス(2024.10.06)
「関西私鉄」カテゴリの記事
- 別府が特急停車駅に(2024.09.29)
- 一日乗車券でポテトプレゼント(2024.09.09)
- 「トムとジェリー」で阪急はバスも含めて一日乗り放題(2024.08.11)
- Osaka Metroと北大阪急行、乗継割引を拡大(2024.07.21)
- 近江鉄道で運賃の値下げを求める声(2024.05.12)
「路面電車」カテゴリの記事
- 広電の駅ビル乗り入れ、数か月遅れる?(2024.10.06)
- 伊予鉄道、1日乗車券をスマホで発売(2024.10.06)
- ライトラインの西側延長、2030年が目標(2024.10.09)
- 2500円払って会員になるとバス等半額(2024.10.03)
Comments
たべちゃんさんへ
日本じゃ、路面電車は時代遅れで、道路の渋滞の元凶にされて、どんどん廃止されていきました。
欧州じゃ、見直されて、新しく路線が延長されたり、4両編成の連接車両を新たに導入したりと、日本と逆の方向を目指してます。 この夏、開催された世界陸上ベルリン大会のマラソンでも、ベルリン市内のトラム軌道の道路がマラソンコースになっていたのは、驚きでした。
日本の官民が路面電車は、時代遅れの乗り物と、思い込んでいるうちは、あらゆる路面電車の新設計画は、挫折するでしょう。
阪堺線も、堺市内から、消滅してしまうでしょう。
Posted by: パノラマハイパー | 2009.11.11 06:29 PM
パノラマハイパーさん、おはようございます。
* 欧州じゃ、見直されて、新しく路線が延長されたり、
日本でも、路面電車復権への動きはあるようですが、実際に行動に移ったのはわずかで、「口だけ」のところが多いですね。
* 日本の官民が路面電車は、時代遅れの乗り物と、
堺の事例は、住民の頭の古さも露呈しました。このままでは、緩慢なる死を迎えるだけです。
Posted by: たべちゃん | 2009.11.12 04:53 AM
今はやりの「無駄な公共事業」扱いされたのでしょうね。
日本ほど公共交通機関に不理解な国は無いでしょう。
公共交通機関を採算で語るなど愚かなことです(採算度外視ではいけませんが)。
鉄道先進国として情けない限りです。
自民党時代は地方の鉄道は緩やかな死を迎えつつありましたが、民主党政権になって高速無料化やガソリン税暫定税率撤廃(環境税がどうなるか?)など車優遇政策ばかりで、自民党時代の改善どころか息の根を止められかねない状況になってしまいました。
地域の足・車を運転できない弱者の足を奪って、何が「国民の生活が第一」か。
Posted by: juggernaut | 2009.11.28 10:52 PM
juggernautさん、おはようございます。
* 日本ほど公共交通機関に不理解な国は無いでしょう。
私鉄というビジネスモデルがあるせいか、未だに自力でつくって運営するのが当たり前(税金を出す必要はない)と思われているのでしょう。
* 民主党政権になって高速無料化やガソリン税暫定税率撤廃
この2つを実施すると、公共交通機関はかなりの打撃を受けますね。地方路線から撤退が始まるでしょう。
Posted by: たべちゃん | 2009.12.01 05:18 AM