青函トンネルでは新幹線も時速140キロ運転?
年末には新青森まで伸びる東北新幹線。新青森から先は、すでに開通している青函トンネルを通って北海道に伸びます。青函トンネルは当初から新幹線が通ることのできるように設計されていますが、トンネルの開通から25年以上たってようやく本領を発揮します。しかし、その青函トンネルで問題が出てきたのです。9日に行われた政府整備新幹線問題調整会議で、国土交通省が、青函トンネル内では新幹線も時速140キロに減速しなければならないことを主張したのです。
青函トンネルは現在、「スーパー白鳥」などの特急列車や貨物列車が運行されています。新幹線の開業により特急列車は新幹線に移行しますが(「カシオペア」などの夜行列車については不明)、貨物列車は引き続き運行されます。貨物にとっても重要なルートのため、運行を止めるわけにはいきません。同じ一つのトンネルを、新幹線と在来線が共用するのです。
このときに問題になるのは新幹線と貨物列車がすれ違うときに起こる風圧。これまでも問題にはなっていましたが、新幹線(1時間に1本運転)と貨物列車(1時間に3本運転)のダイヤをうまく調整すれば問題はないと考えられてきました。ところが今回、貨物列車の脱線や横転、貨物落下などの万が一の安全対策のため、たとえ貨物列車とのすれ違いがなくても新幹線は時速140キロの減速運転を余儀なくされるのです。ちなみに、青函トンネルが開通して20年以上経ちますが、今までのところ貨物の落下事故はありません。
新幹線が時速140キロに減速運転することによりロスする時間は18分。東京-札幌間の所要時間は5時間近くになると言われています(私の試算では、ロスする時間は12分ほどですが、東京-札幌間の所要時間が5時間程度になることには変わりないと考えています)。もともと盛岡以北では時速260キロしか出さないので(この前提自体がおかしいのですが)、東京-札幌間を鉄道で乗り通す客はほとんどいないでしょう(在来線の特急から乗り換える客で、これでも十分にペイできます)。しかし、東京-新函館間でも4時間かかってしまうので、このあたりの競争力の低下が問題になると考えています。少し前に書いた「トレイン・オン・トレイン」の実現や、減速をすれ違いのときなどに限定させる(当然のことながら、ダイヤを工夫して、青函トンネル内での新幹線(札幌速達便)と貨物列車とのすれ違いを避ける)などの工夫で、減速をできるだけ避ける方向にもっていきたいですね。
(追記)
2012年2月1日に行われた整備新幹線小委員会で、貨物列車とすれ違うときに新幹線を減速させる列車制御システムの導入も検討されていることが判明しました。これを導入すれば、貨物列車が近くにいない場合は時速260キロ運転ができ、所要時間の増大を減らすことができます。
なお、コンクリートの隔壁で上下線を区分する案や新たなトンネルを掘る案については、建設費が前者で1600億円超、後者で5000億円超かかるので、現実的でないとして否定的です。
(参考:北海道新聞ホームページ http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/215067.html、http://www.hokkaido-np.co.jp/news/bullet_train/348497.html、国交省ホームページ http://www.mlit.go.jp/common/000190085.pdf)
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Comments
貨物専用新幹線の実験車両が公開されています。
従来の貨車をすっほりと覆う形になっています。
従って、風圧による貨車の落下といった危険性はないのではないでしょうか。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/216862.html
国交省が今になって、落下の危険性を言い出したのは、整備新幹線に予算をつけたくないための口実という見方もあります。
もしかしたら、整備新幹線260キロ制限もそういうことでしょうか。
Posted by: かにうさぎ | 2010.02.22 09:21 PM
かにうさぎ さん、こんばんは。新聞の紹介、ありがとうございます。
* 国交省が今になって、落下の危険性を言い出したのは、
青函トンネルの問題といい、たった260キロという最高速度の問題といい、北海道新幹線には厳しいですね。
管轄する役所が弱気になってどうするのでしょうか? 何としても予算を取ろうとする役所の習性からは外れています。
しかも、整備新幹線はこれまで予想以上の成果を上げています。国交省としてはむしろ自信を持って要求できる分野ではないでしょうか?
Posted by: たべちゃん | 2010.02.22 11:13 PM