関空・伊丹経営統合
関西3空港の問題に一定の結論が出ました。
前原国交相と橋下大阪府知事は25日、西宮市内で会談しました。その中で、橋下知事は、伊丹と関空を経営統合し、両空港の経営権を一体として民間に売却するという国交省の成長戦略会議の案(この記事の最後のほうに載っています)について、大筋で合意しました。現在国営の伊丹は2012年4月に民営化され、両空港の資産や負債を保有する国の持ち株会社を設立します。その後、両空港の運営権を一括して民間に売却し、関空の負債を圧縮します。運営権の額は、関空は6000~8000億円、伊丹は200~300億円と言われています(ちなみに、伊丹の土地を売却しても1000~2000億円ぐらいにしかならないようです。ですから、以前当blogでは主張していましたが、伊丹の土地を売って関空の負債を埋めるという方法は採れません)。
この運営権の数字を見て、「逆だ」と思う人もいるかもしれません。世間の固定観念でみれば、関空は路線の撤退が相次ぎ、大赤字の空港。反対に伊丹は路線が充実しており、黒字の空港だからです。しかし、冷静に考えれば、関空の赤字の原因は多額の負債が生み出す利子。利子がなくなれば黒字空港なのです。反対に伊丹は需要があってもそれに見合う供給ができない「欠陥空港」なのです。周辺には人家が密集しているので、拡張したり、早朝や夜間に航空機を飛ばしたりすることができないのです。固定観念にとらわれてはいけないのです。
数千億円あれば、関空の利子支払いを半減させることができます。これでも十分黒字化でき、その黒字でもっと戦略的に着陸料の軽減を図ることができます。伊丹と経営統合しているので、「便利」と言われる伊丹の着陸料を上げることができます。価格メカニズムを通じて伊丹に便利さの代償としての負担を課すことができます。ただ問題は、数千億円の運営権を誰が買うかということ。数千億円をキャッシュで払えるような企業は少ないです。また、そういう公共施設運営のノウハウがあるのは外資しかないという見かたもあるようです。外資が運営権を買った場合、主要空港である関空を外資の手に委ねることが本当にいいのか、という議論も出てくるでしょう。
またこの席で前原国交相は、初めて伊丹の廃港と関空のハブ空港化に触れました(「ようやく」という感はありますが)。以前、第一報は書きましたが、運営主体となるJR東海の収入の低迷により(原因は景気の低迷と高速道路の大幅な割引です)、名古屋までの開業が2027年と当初の予定より少し遅くなります(大阪までの全線開業は2045年と変わりません)。しかし、それでもいずれはリニア新幹線ができるでしょう。そうなると、伊丹の需要は相当減るという前原国交相の発言は妥当なところです。
これまで前原国交相は、関空を単なる物流拠点としてしか見ていませんでした。ここでようやく関空を首都圏と並ぶ拠点空港と位置付けたのです。先ほども述べましたが、潜在能力の高い関空を活かさないわけにはいきません。投資しようにもどうにもならない伊丹より、関空のほうがはるかに重要な空港なのです。
確かに今回の合意では、関西3空港のひとつ、神戸空港については触れられていません。そういう意味では以前の指摘は生きています。ただ、本当に関空と伊丹の空港が経営統合し、運営権が売却できるのならば、関西3空港問題はかなり前進します。関空の足かせとなっている負債の問題がクリアできるのですから。
(参考:朝日新聞4月26日朝刊 中部14版、YOMIURI ONLINE http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/h_osaka/20100426-OYO8T00384.htm、http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/h_osaka/20100426-OYO8T00409.htm、Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100428-00000018-maip-bus_all)
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