« 東海道新幹線、1兆円大改修計画 | Main | 高速道路新料金制度はどうなった? »

飯田線はリニアへのアクセスにはなれず

 JR東海が計画しているリニアは、東京と名古屋とを一直線で結ぶ、「南アルプスルート」をとる予定です。長野県が主張する、「伊那谷ルート」は欠点が多いとして否定的な考えを示しています。JR東海は各県にひとつ、リニアの駅を置くことを考えていますので、「南アルプスルート」だと飯田にリニアの駅を置くことになります。県北部には長野新幹線、県中部には中央線がありますので、結果としてバランスがとれることになります。

 長野県内でただひとつリニアが停まる町となる飯田には、飯田線が走っています。JR東海の路線です。しかし、JR東海は、飯田線をリニアへのアクセス路線として考えていません。並行して走る中央道に比べてあまりにも遅いからです。飯田線を高速道路に対抗できるようにするためには、かなりの費用がかかります。国や県の補助は極めて少なく、待っていてはいつまで経ってもできません。それなら、すでにできている中央道を使えばいいのです。追加の投資はいりません。

 本来なら、飯田線を改良してリニアへのアクセスとして使うのが望ましいのかもしれません。しかし、古くからある在来線はインフラが不十分で、車に対抗できません。国鉄時代は新宿や長野から直通の急行が走っていましたが、中央道を走る車やバスに負けてしまいました。長野への快速はありますが、通過駅は少ないです。飯田線は地元の需要だけにこたえる、ローカル線となっています。さすがに廃止になるほど利用者が少ないわけではありませんが(2007年の飯田線の輸送密度は2164人)、このままでは将来の発展は見込めないでしょう。もっとも、飯田線の改良には莫大なお金がかかり、投資に見合った効果が得られない危険性がありますが。

 この話は飯田線だけの話ではありません。ほかの線でもよくある話なのです。鉄道への公共投資は極めて少なく、高速道路などが次々とできあがる道路に対抗できません。全線開業にはまだまだ時間がかかるとはいえ、整備新幹線はまだましなほうです。改良のペースは極めて遅いです。遅い鉄道に乗る人はいません。車より明らかに速くないと、わざわざお金を払って鉄道に乗ってくれないのです。そのためには、新幹線の建設や特急の通る幹線の改良が必要なのです。正直言って、飯田線の改良は難しいです。でも、改良が望まれる路線はたくさんあります。日本ほど鉄道に適した国はそうありません。鉄道がその特性を活かせる幹線については、もっと投資が必要でしょう。
(参考:日経ケンプラッツ(会員登録要) http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20100510/541107/?P=2、週刊東洋経済 2010年4月3日号)

| |

« 東海道新幹線、1兆円大改修計画 | Main | 高速道路新料金制度はどうなった? »

鉄道」カテゴリの記事

JR東海」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 飯田線はリニアへのアクセスにはなれず:

» リニア 直線ルートで検討 [出来事デキゴト]
リニア中央新幹線の建設計画で、山梨県の横内正明知事が4日、国土交通省の交通政策審議会鉄道部会で「南アルプス直下を貫通する直線ルートが一番望ましい」と初めて明言することが分かりました。山梨県は、南アルプスを北に迂回する2ルートの場合、2つの懸念点を分析しています。〈1〉甲府盆地の市街地を縦断するため用地買収が難しく、騒音や振動など環境面で問題〈2〉在来線と並行するため、特急あずさ号などの本数が減り、利便性が損なわれる恐れがあるこの結果、三... [Read More]

Tracked on 2010.06.04 11:44 AM

« 東海道新幹線、1兆円大改修計画 | Main | 高速道路新料金制度はどうなった? »