« 整備新幹線新規着工に6つの課題 | Main | 新余部橋梁を訪ねて(1) »

リニアが開業すれば、関西3空港の利用者は大きく減少

 狭い地域に3つの空港を抱える関西。足を引っ張りあい、本来の能力を活かせません。

 しかも、長期的にみても、需要が爆発的に増えるとは考えにくいです。九州新幹線の全線開業により、九州への需要は確実に減ります。しかも、長期的には、以前にも書いたように、リニアの開業により東京への需要も減ってしまいます。ただ、具体的にどれぐらい需要が減るかははっきりとは分かりません。そのような状況の中、産経新聞社は、大阪府に対して情報公開請求を行いました。

 公開された資料は、「関西3空港懇談会」事務局の関西経済連合会が大阪府に出した国内線の需要予測です。それによれば、リニアの開業により羽田への便が廃止されれば、伊丹・関空・神戸の3空港ともに需要が減ると考えられています。特に影響が大きいのは神戸(伊丹は国内線の数が多く、関空は国際線主体の空港のため、神戸よりは減少の幅は大きくはありません)。2009年度の年間旅客数は225万人。これが航空需要が低迷し続けた場合、137万人にまで減るのです。

 リニアが新大阪まで全線開業するならともかく、名古屋暫定開業の段階では、名古屋での面倒な乗換えを嫌って、航空機からの転移が思ったようには進まないかもしれません。しかし、早いか遅いかの話なのです。いずれは新大阪までリニアができ、航空需要は確実に減るのです。今でも3つの空港の併存は難しいのに、さらに難しくなってしまいます。

 ここで「関空を捨てて、伊丹に集約すればよい」と考える人がいるかもしれませんが、それは愚かな選択です。わざわざ空間的にも時間的にも制約のある空港に集約する必要はありません。しかも、関空の約1.05兆円(2009年度末)の有利子負債の処理が非常に大きな問題となります。誰も処理できません。

 とは言っても、めったに航空機が飛ばず、赤字を垂れ流しているような空港なら、そのような厳しい処理もしなければならないでしょう。しかし、すでに御存じの通り、関空の赤字の原因は、莫大な支払利息です。空港の敷地から借金でつくったため発生したもので、支払利息がなければ、確実に安定した黒字を出す優秀な空港なのです。しかも、支払利息の元となる有利子負債は、毎年減っていくのです(この5年間で約1700億円減っています)。運営権を売却しなくても、どこからか利子の補助金を得られれば関空の問題は解決が見えてくるのです。問題のもととなる有利子負債が減りますから。補助金の調達先は国でも伊丹でもいいのです。関空は伊丹よりも確実に稼ぐ力のある空港なのです。ゲームの都市計画ソフトのように、全く何もない白紙の状態から空港をつくるならともかく、手持ちの駒でメインとなる空港を選ぶなら、関空です。

 騒音が社会問題となった伊丹は、本来関空の開港により、消えてなくなる空港だったのです。とは言っても、今すぐに廃港にできる訳でもありません。短期的には、伊丹で稼げばいいのです。「伊丹が便利だ」と思っているのなら、それなりの負担を課せばいいのです。そういう意味では、関空・伊丹の経営統合は評価できるでしょう。伊丹を使う利用者や航空会社に「利便性」に見合った負担を課すことができますから(それを原資に関空を値下げすることもできます)。いやなら関空や神戸に行くか、新幹線に乗ればいいのです。
(参考:MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100825/biz1008251413011-n1.htm、関西国際空港株式会社ホームページ http://www.kiac.co.jp/company/ir/fin/pdf/H20.pdf、http://www.kiac.co.jp/company/ir/fin/pdf/H21.pdf)

| |

« 整備新幹線新規着工に6つの課題 | Main | 新余部橋梁を訪ねて(1) »

飛行機、空港」カテゴリの記事

Comments

>いずれは新大阪までリニアができ、航空需要は確実に減るのです。

現在のペースでは35年も先の話です。その頃にはどんな世の中になっているかわかりません。
思えば、今から35年前に、現在のパソコンや携帯の普及を予測した人がいるか。

「35年後に伊丹は廃止」と言うのは、事実上、伊丹廃止はないと言っているも同然の話ではないか。

橋下知事が伊丹廃港を本気で考えているかは疑問です。単に関空の予算欲しさか、補給金継続のための煙幕に過ぎないように思えます。
目的を達すれば、こんな話、すぐに立ち消えになるでしょう。過去にも、関空の予算確保が危うく
なると出ては消えたものです。

伊丹廃港論の問題点は

(1)関西経済が低迷続けるなら、廃港しても跡地利用・処分が困難
(2)分厚いコンクリートで覆われた滑走路、誘導路の撤去にも多額の費用がかかる
(3)関空と神戸では空域が重なり、滑走路の能力が発揮できないため、航空需要が増加した場合、対応できない。(ただし、将来、技術が進歩すれば解決の可能性はある)
(4)関空・神戸の施設拡張に費用がかかる

Posted by: かにうさぎ | 2010.08.30 10:31 PM

 かにうさぎさん、おはようございます。

* 現在のペースでは35年も先の話です。その頃

 それを言い出せば、予測の意味はありません。現状では考えられない事象も出てくるでしょうが、それでも方向性は定めておく必要があるでしょう。

* 橋下知事が伊丹廃港を本気で考えているかは

 関空の重要性(関空に比較すると伊丹の重要性は低い)は知事もよく御存じのはずです。

 変に気が変わらないようにしっかり注視する必要がありますね。

* 伊丹廃港論の問題点は

 需要が減るのなら早く整理しないといけませんし、需要が増えるなら関空に3本目の滑走路をつくればいいのです。ある意味めでたい話です。

 そんなに伊丹がいいのなら、しっかり稼いでいただきましょう。追加料金をたっぷりつけて。

Posted by: たべちゃん | 2010.09.01 05:16 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference リニアが開業すれば、関西3空港の利用者は大きく減少:

» 神戸空港、リニア開通で旅客半分以下に? [かにうさぎの部屋]
関西国際(関空)、大阪(伊丹)、神戸の3空港問題について協議する「関西3空港懇談 [Read More]

Tracked on 2010.08.30 09:36 PM

« 整備新幹線新規着工に6つの課題 | Main | 新余部橋梁を訪ねて(1) »