高速道路無料化で鉄道、バスの利用者減少
6月28日から地方の高速道路を中心に始まった高速道路の無料化実験。11日、国土交通省は実験開始後の1か月間の状況について初めて公表しました。
高速道路が無料になったことにより当然ながら高速道路の利用が増えています。平日・休日ともにほぼ倍に増えています。これに伴い、今まではほとんどなかった渋滞が発生しています。西九州道の場合、開始から4週間で26日渋滞しました(ということは、ほぼ毎日です)。京都丹波道路もほぼ毎日渋滞です。逆に、並行して走る国道は通行量が2割減少しています。これにより、並行して走る一般道路の渋滞もかなり減っています。今まで高速道路は有料だったので敬遠され、利用が振るわなかったのですが、無料化によって高速道路も活用されるようになりました。渋滞の問題はありますが、基本的には資産の有効活用につながっているのでしょう。
高速道路無料化のデメリットとしてあげられるのが、公共交通機関への影響。国交省はこれについても調査しています。鉄道は調査した28地点中24地点で利用者が実験前より減少しています。6月28日から7月4日までの実験開始後1週間の旅客実績を平日と休日に分けて比較したところ(比較対象は前年同時期のデータ)、一番大きく減少したのがJR函館線の滝川-旭川間、宗谷線旭川-名寄間、日豊線南延岡-宮崎間でした(ただし、宮崎県は口蹄疫の問題が影響しているのかもしれません)。いずれも休日の場合、14%減少しています。高速道路の1000円乗り放題があるため、休日の影響が大きいのでしょうか?
また高速バスについてみると(6月28日から7月4日までの利用実績とその直前1週間の利用実績とを比較)、34地点中19地点で直前1週間の利用者数を下回っています。一番大きく減少したのは、舞鶴若狭道舞鶴東-大飯高浜間(休日)、岡山道岡山総社-賀陽間(平日)の22%でした。ただ、高速バスの場合は利用者そのものが少なく、少しの変動でも大きく変わってしまうので、鉄道よりは正確ではありません。そもそも1週間しか利用実績を見ていないので、天候にも大きく左右されます。ただ、ボリュームの大きい道央道深川-旭川鷹栖間も平日は10%、休日は18%減っています。
今回の調査ではこのほかに、観光施設や物流施設への影響についても調査しています。従来からある1000円乗り放題でも公共交通機関への影響は大きかったです。これが地方限定とはいえ、無料になるとさらに影響が大きくなるでしょう。基本的には乗客からの運賃で成り立っている公共交通が厳しくなり、ますます弱体化します。高速道路の無料化には資産の有効活用というプラスの側面はありますが、デメリットもあります。人口密度が高く、公共交通に適した環境なのに、車がないと生活できない状況になってしまいます。高速道路の税金を使った過大な値引きは慎重に考える必要があるでしょう。
(参考:国土交通省ホームページ http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000127.html、livedoorニュース http://news.livedoor.com/article/detail/4941051/)
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Comments
たべちゃんさんへ:
これこそ、官による民業圧迫に他ならないです。
中小の鉄道やバス会社の業績悪化を招いたら、どうするつもりなんですかね!
Posted by: パノラマハイパー | 2010.08.19 08:12 PM
パノラマハイパーさん、おはようございます。
* 中小の鉄道やバス会社の業績悪化を招いたら、
すでにこのblogでも取り上げていますが、1000円乗り放題の時点で鉄道会社などの収益悪化を招いています。
Posted by: たべちゃん | 2010.08.20 05:09 AM