やはりリニアは東京-大阪間を一気に開業させるのが望ましい
8月30日に行われた国交省の交通政策審議会中央新幹線小委員会の第7回会合。元経企庁長官の堺屋太一氏と東大名誉教授・元宇宙開発委員会委員長の井口雅一氏の両氏にヒアリングを行いました。ここで、堺屋氏は、リニアを新大阪まで一気に開業させることが必要だと主張しました。いったん名古屋止まりにすると赤字が確実なので、永久に新大阪まで伸びない危険性(つまり、リニアが赤字のままになる)があるからです。リニアも黒字を出すことが重要であると主張しています。コンコルドのように、技術にこだわりすぎて、採算が取れなかったら意味がないということです。堺屋氏は、東京に経済活動が吸い寄せられ、名古屋や大阪が衰退する「ストロー効果」についても言及しています。
東京一極集中の問題は、堺屋氏も主張しているように、国として解決しなければならない問題であり、JRの責任ではありません。また、リニアだけが一極集中を招くのではありません。リニアを問題にするのなら、整備新幹線も問題にしないといけません。一極集中を解消させる効果があるのは、九州新幹線ぐらいです。東京から離れたところで建設されるため、東京への「ストロー効果」が発生しないのです。九州新幹線によって、九州の中心都市、福岡の力が強くなります。最悪なのは、北陸新幹線。名古屋や大阪の力を削ぎ、一極集中を助長します。前原国交相は、北陸新幹線の敦賀までの新規着工について、敦賀以西の計画の明確化を条件として挙げていました。しかし、それは北陸新幹線をフル規格で金沢まで着工する段階で解決していなければいけなかった問題だったのです。大阪までのフル規格での直通の見込みがない限り、北陸新幹線ができなくても別に問題ではないのです。所詮は北陸へのローカル新幹線なのですから。
JR東海ではどうにもならない東京一極集中の問題は別として、現状のリニアの最大の問題は、新大阪まで一気に開通しないこと。当初は名古屋までしかできないため、名古屋でのスムーズな乗り換えを考慮しないといけません。新大阪まで全線開業すれば利用者は減ると言っても、整備しないといけません。新大阪まで一気につくれば、乗り換え設備は(利用者が少なくなるため)簡略化できますし、名古屋駅にこだわる必要もなくなります。
まだ、時間がかかっても新大阪までできればいいです。最悪のケースは、新大阪までつくるだけの財源がないとき。名古屋止まりのままでは、頼りにしている航空機からの移転が進まず、(堺屋氏の主張するように赤字になるかはともかく)投資を回収するのはかなり難しくなります。国から借りてでも、一気に新大阪までつくったほうが賢明なのは明らかです。
リニアがいったん名古屋止まりになるのは、建設費が高いということもあります。リニアという新しい技術なので、既存の新幹線より高くなるのは、ある意味仕方ないかもしれません。ただ、先ほども述べたように、リニアを一気につくれば、名古屋駅にこだわる必要はなくなります。名古屋への輸送を東海道新幹線に任せ、名古屋近郊に駅をつくることもできます。奈良付近も奈良市ではなく、けいはんなにすればいいでしょう。ここならわざわざ大深度にする必要はありません。こうやってコストを下げるのも手でしょう。
JR東海は名古屋の会社ですから、名古屋駅にリニアを通したいところでしょう。だからと言って、名古屋駅にこだわり、新大阪までできないようでは元も子もありません。最優先事項は東京と大阪の間を完成させることです。新大阪まで通してこそ、リニアは活用されます。羽田は空いた枠で国際線を増やすことができます。リニアの開業が早ければ、北陸新幹線を米原経由で通すこともできます(リニアの開業が2045年と遅いと、小浜経由でつくったほうが早いです)。堺屋氏は海外からの低金利融資で新大阪まで一気に開業させるだけの財源を確保すべきとしていますが、国内にお金がだぶついています。国が低金利か無利子で貸し出せばいいのです。それこそ生きた金の使いかたなのです。
(参考:日経ケンプラッツ(会員登録要) http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20100901/543150/)
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