新潟県、貸付料についての開示を受ける(2)
新潟県はこのたび開示された文書を受けて(内容は(1)を見てください)、北陸新幹線による並行在来線の赤字相当額を30年間で780億円以上と見積もっています。
新潟県は、貸付料に含まれる並行在来線廃止による収支改善分は、並行在来線を運営する県がもらうものだとして返還を求めています。また、整備新幹線建設にあたり、県は建設費の1/3を負担しています。新潟県は、その費用負担に見合うだけの貸付料の還元を国に求めています。こちらは30年間で480億円と試算しています。
これから整備新幹線の建設が始まる段階で主張するなら理屈が通りますが(ただしその場合は他の区間に比べて県の協力が悪いということで不利になるでしょう)、新潟県の場合はすでに着工し、開業が見えている段階です。新幹線着工の段階で、並行在来線はJRから分離させること及び並行在来線の赤字は県が負担することに同意しています。全国的なネットワークとなる貨物列車はともかく、普通列車は極めてローカルな話です。並行在来線の負担は、新幹線開業に伴う税収でカバーすると考えていたのでしょう。批判するなら整備新幹線着工を受け入れた県の前任者を批判するべきであり、今となっては国を批判することは許されません。
新潟県の場合は、北陸新幹線が開業すれば上越新幹線は支線的な位置づけに転落し(新潟方面より長野・金沢方面のほうが運転本数が多くなる)、今は「はくたか」で稼いでいる北越急行の経営問題が出てきます。新潟県にとって北陸新幹線は、富山県や石川県のように、県の中心を貫く重要な新幹線ではありません。県の西をかすめるだけの存在です。県内に2つできる新幹線の駅(上越、糸魚川)に全列車が停まらないのも不満の種のようですが、上越といえども最速達列車は通過するのはやむを得ないでしょう。JR東日本も同じ認識です。長野や富山と比較すると全部停まる規模ではありません。
一部の便が通過するとはいえ、県内に新幹線の駅が2つできます。新幹線ができるメリットを享受して、在来線の負担も実質的になくそうというのは虫がよすぎます。どうしても貸付料の還元を求めたいなら、駅の設置を断ればいいのです。新幹線の駅がなければ、新幹線のメリットは当然ありませんから、貸付料の還元を求める権利はあります。
はっきり言って貸付料を新潟県が回収しようというのはわがままです。それなら、新幹線を断ればよかったのです。金沢止まりの新幹線なら、北陸へのローカル新幹線に過ぎませんから、できなくても別に問題ではないのです。余ったお金で北海道新幹線の整備を進めてもいいのです。
北海道新幹線や北陸新幹線開業によって得られるJR東日本の「根元受益」も貸付料に反映させ、できるだけ多くの財源を確保して(当然、一般財源の確保も必要です)、札幌や大阪までの全線開業を急ぐ必要があります。新潟県の理屈に合わない、過大な要求に応じて、お金を出す余裕はありません(続く)。
(参考:新潟県ホームページ http://www.pref.niigata.lg.jp/koutsuseisaku/1287522081374.html)
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Comments
>はっきり言って貸付料を新潟県が回収しようというのはわがままです。
整備新幹線の建設スキーム自体の問題点が露呈しています。
地元負担を求めるというスキームにした結果、整備新幹線のように、複数県に跨る事業では、途中県のうち、一つでも反対があれば、事業自体が進まない。
長崎でも、一部市町の反対で、着工が遅れたし、九州でも、地元負担したのだから、「さくら」をわが町に停車といった要求に苦慮している。
地元負担がなければ、際限のない要求がなされ、モラルハザードに陥る恐れもあるが、今の仕組みにも問題がありそうです。
Posted by: かにうさぎ | 2010.10.29 09:52 PM
かにうさぎさん、こんばんは。
* 整備新幹線の建設スキーム自体の
なかなか難しい問題です。
整備新幹線は新潟県みたいなところは例外で、基本的には欲しがっているところが多いため、地元にある程度負担させるスキームが成り立ったのでしょう。
幸い、北陸新幹線は金沢止まりなので、できなくても(北陸地方以外は)困ることがありません。
真剣に考えなければならないのは、国家の幹としては重要ですが、「おらが県に新幹線を」という意味での積極的な理由がない、北陸新幹線敦賀以西の整備をどうするか、ということでしょう。
* 地元負担がなければ、際限のない要求がなされ、
東北・上越までの新幹線ならできなかったようなところにも、新幹線の駅ができています。駅が多すぎると、せっかくの新幹線の効果を削ぐ面もありますから、何らかの負担は課したいところですね。
Posted by: たべちゃん | 2010.10.30 04:47 PM
>国家の幹としては重要ですが
北陸新幹線に国家の幹としての機能はありません。東京-大阪がつながっても、利用者の大半は、東京からは福井まで、大阪からは長野・群馬くらいまででしょう。
北陸線は特急街道と言うほど、特急の本数が多く、たとえローカル新幹線でもそれなりの利用があるので、建設の意義は否定しないが、国家的事業として推進すべきは、むしろリニアを大阪まで一気に開業させることです。
これが実現しない限り、北陸新幹線の全線開業も不可能です。
Posted by: かにうさぎ | 2010.10.31 11:12 AM
かにうさぎ さん、おはようございます。
* 東京-大阪がつながっても、利用者の大半は、
通しで使う人はそういないでしょうね。区間利用の積み重ねです。
* 国家的事業として推進すべきは、むしろリニアを
敦賀までできたら、あと1区間で完成ですから、(滋賀県に駅をつくらないことを条件に)国費でつくってもよいでしょう。敦賀止まりのローカル新幹線と大阪まで直通する北陸新幹線とは、大きな違いです。
もっともリニアが難しいようなら、(完全に別線となる)小浜経由でつくらないといけないでしょう。
Posted by: たべちゃん | 2010.11.01 05:04 AM