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高速道路無料化、政策コンテストでも不評

 菅内閣は2011年度予算において、1兆円を超える規模の「元気な日本復活特別枠」を設けています。各省庁は「これだ」と考える事業を要望し、公開の「政策コンテスト」で優先順位が決まります。各省庁が要望した事業は189、金額にして約2.9兆円。これに対して国民から約36万件もの意見が寄せられました。

 高速道路の無料化の社会実験もそのひとつ。約3500件の意見の中で、肯定的な意見はたったの9.5%でした。それに対して否定的な意見は87.6%もありました。最下位です。意見の具体的な内容をみれば、渋滞の発生を危惧する意見や、受益者負担の原則から高速道路は有料が望ましいという意見が多くみられました。

 国民に意見を求めることはよくありますが、実際は業界団体の大きな声が反映されることが多くあります。今回の「政策コンテスト」でも、文部科学省関係の意見が多く(約8割が文部科学省関係です)、しかも95%もの意見は事業に肯定的な意見でした。教育関係者が一般の国民のふりをして、せっせと意見をしていったのでしょう。ほかのものも似たり寄ったりかもしれません。ごく一部の熱心に賛成している人だけが肯定的な意見を書き込んでいるのです。国民の意見としては怪しいです。

 中には、本来なら特別枠ではなく、既存の予算で要求すべき内容も入っています。教員の給与などです。義務的なものであり、どうやっても削れるわけがありません。本来の趣旨を逸脱した、アンフェアなものです。こういうものは、本来の予算を削るなどして対応すべきところでしょう。

 話を本題に戻します。否定的な意見が圧倒的に強い高速道路の無料化は、民主党がマニフェストで掲げたものではありますが、ここまで否定的な意見が強いならば、撤回の方向で見直さないといけません。財源がないのに(消費税などの増税もしないのに)、ばら撒きできるわけがないのです。

 私たちはマニフェストを忠実に遂行するために民主党を支持したのではありません。今までのしがらみから脱却する、新しい政治をつくるために民主党政権を誕生させたのです。ところがやっていることは何ら変わりません。このしっぺ返しは次の選挙で行われます。実績ある議員はともかく、民主党ブームに乗って当選した小沢チルドレンあたりはまず再選しないでしょう。

 思いっきり揮発油税等を上げれば話は変わるかもしれませんが、現状で考えると、高速道路で料金を徴収することにはある程度のコンセンサスが得られています。無理に無料にして、公共交通機関にマイナスの影響を与えてはいけません。車、鉄道、航空機にはそれぞれ適性があり、目先の票によってゆがめてはいけないのです。

(追記)
 散々な評価だったはずの高速道路無料化ですが、マニフェストに掲げた政策ということもあり、最終的には4段階中、上から2番目のB判定となりました。一部減額して予算化されることになります。
(参考:朝日新聞11月4日朝刊 中部14版、11月5日朝刊 中部14版、12月2日朝刊 中部14版、Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101104-00000122-jij-pol、THE WALL STREET JOURNALホームページ http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_140508)

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Comments

無料化には、留保がありますが、かといって、値下げ前の、あのバカだかい値段にするのも、賛成できません。
 というのも、使われないインフラは、意味がない。そして、高すぎる値段は、使われないインフラ化の大きな要因なので。

 もちろん、値下げには、財源がいるのですが、それには、高速道路の新規着工を、原則停止すればよい。
(原則で全部ではない)ちょうど、国鉄再建法の成立で、のきなみ、新線の建設が止まったように。

Posted by: 大和の国の住人 | 2010.11.07 10:24 AM

 大和の国の住人さん、おはようございます。

* かといって、値下げ前の、あのバカだかい値段にするのも、

 短距離の利用者には通勤割引の拡充などで高速道路の敷居を低くするのが望ましいと考えています。しかし、長距離の利用者には、残念ながら、高い料金となるのはやむを得ないことでしょう。飛行機、鉄道、高速バスなどに移行を促すのが望ましいと考えています。

* もちろん、値下げには、財源がいるのですが、

 どうみても赤字ローカル線の脇に高速道路をつくるという、誰が見ても無駄なところがありますね。

 こういうところは凍結なり、トンネルなどの一部分のみの建設に止めるなりの見直しが必要でしょう。

Posted by: たべちゃん | 2010.11.08 05:13 AM

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