リニアの費用対効果について考える(2)
昨日の話の続きです。
(4)経済成長率の変化
(1)の基本パターンでは経済成長率を1%としていますが、これが変化すればどうなるでしょうか? 2%と0%のケースで考えます。まず2%の場合は、便益は10.96兆円となり(費用は変わらず)、費用便益比は1.99となります。伊那谷ルートでも費用便益比は1.63となります。反対に、0%の場合は、便益が6.33兆円にとどまり、費用便益比は1.15となります。リニアの建設には経済成長が必要なのです。
(5)高速道路料金の影響
高速道路料金の値下げは、各地の鉄道にマイナスの影響を与えていますが、リニアの場合はどうでしょうか? 実は、リニアの場合は高速道路料金を半額にしてもほとんど影響はありません。南アルプスルートの場合で便益は0.08兆円減るだけです。費用便益比は1.50です。伊那谷ルートでも費用便益比は1.22です。リニアと高速道路では速度が違いすぎ、競合関係にはならないのでしょう。LCCの普及により、航空運賃が下がることのほうが影響があるのではないでしょうか?
(6)開業時期の前倒し
新大阪までの開業年度は2045年とされていますが、これを10年前倒しすればどうでしょうか? 結果は明らかです。便益は9.69兆円と大幅に増えるのに対して、費用は6.14兆円とそれほど増えません。費用便益比は1.58です。2045年という開業時期はJR東海の資金繰りから考えられたものであります(JR東海は、増資ではなく、社債や借入金で建設費を賄う計画です)。このように効果が大きいのなら、国から無利子で借り入れるなどして一気に完成させるのが望ましいです。一気に完成すれば、名古屋駅にこだわる必要がなく、名古屋近郊につくることも許されるのです。コストの削減につながります。
(7)名古屋暫定開業のケース
最後に、2027年に名古屋暫定開業した場合のことをみましょう。費用便益比が1を超えるのは南アルプスルート・リニア方式のみです。便益が4.88兆円、費用が4.07兆円で、費用便益比は1.20です。伊那谷ルートなら費用便益比は0.94となります。新幹線方式ならさらに悪く、南アルプスルートでも0.86、伊那谷ルートなら0.69となります。明らかに新大阪までできるならともかく、そういう確信がない限りは名古屋までつくっても意味がありません。やはり新大阪まで一気に開業させるのが望ましいです。
(参考:日経ケンプラッツ http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20101020/543895/、REUTERSホームページ http://www.worldtimes.co.jp/news/bus/kiji/2010-10-28T130957Z_01_NOOTR_RTRMDNC_0_JAPAN-178633-2.html)
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