新型「くろしお」は非振り子車の287系?
特急においても旧型の国鉄型車両が多く残っていたJR西日本ですが、新型に置き換えつつあります。来年春に「きのさき」「こうのとり」(「北近畿」から改称)などに287系が投入され、先日「はまかぜ」用の新車キハ189系がデビューしたばかりです。ブルートレインと北陸新幹線金沢暫定開業で廃止になると思われる「北越」を除くと、残る旧型特急は、振り子式の381系を使う「くろしお」「やくも」ぐらいです。そのうちのひとつ、「くろしお」について大きな動きがあるようです。
JR西日本は、「くろしお」に287系車両51両(6両編成6本、3両編成5本)を投入します。営業開始時期は51両がそろう、2012年7月以降となるようです。基本的な設備は「きのさき」などの北近畿方面への特急に使われるものと同一ですが、南紀に向かう特急だからでしょうか、真っ白な車体に細い青(オーシャングリーン)の帯を巻いています。安全対策の強化、女性専用トイレ・多目的室・車いす対応トイレやモバイル端末用のコンセント(グリーン車の全座席と普通車の一部)が設置されるのも同じです。
ただ、先ほども述べたように、「くろしお」の381系は旧型とはいえ振り子式。新型ならカーブでも多少は速く走れ(振り子式でなくてもカーブでの通過速度が緩和されているケースはあります)、一時期走っていた485系のようなことにはならないでしょうが、「オーシャンアロー」のようなスピードは期待できないですね。特に白浜以南の差は大きいでしょう(最速列車で比べると、白浜以北では、283系(「オーシャンアロー」)と381系(「スーパーくろしお」)の差は3分しかありません。しかも、後者は海南に停まります)。本来なら283系を改良して増備すべきところです。
鉄道の命はスピード。暴走はいけませんが、線路や車両の改善によってスピードアップを目指さなければ(その究極のかたちが新幹線なのですが)、競争に負けてしまいます。紀勢線においても高速道路が整備され、南紀田辺まで延伸されました。かつては国道42号線しかなかったのですが、かなり整備されています。目に見えるコストがガソリン代と高速道路代だけの車とは違い、鉄道はどうしてもそれなりに高い料金が目につきます。そのハンディは速さでカバーしないといけないのです。スピードアップに対する不断の努力を続けない限り、鉄道は死んでしまうでしょう。そういう意味では、287系の導入は良い策ではありません。
あと気になることがもうひとつ。日根野電車区にある381系は合計126両。「くろしお」編成が6両編成7本と増結用3両編成7本、「スーパーくろしお」編成が6両編成5本と増結用3両編成3本、旧国鉄色が6両編成4本です(そのほかに日根野電車区には283系が6両編成2本と3両編成2本あります)。今ある381系を置き換えるには到底足らないです。
(参考:鉄道ホビダス http://rail.hobidas.com/news/info/article/124177.html、Hanwa Network Station http://hanwanetworkstation.web.fc2.com/hensei/jrw/hineno.html)
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Comments
くろしおに287系のようですね。
スピード面ですが、283系には及ばないでしょうが、381系の置き換えには十分ではないかと思います。
紀勢東線のキハ85が本則+15キロで走っていますから、これと同等の曲線通過が可能ではないかと、、。
381系が本則+15ですから、非振り子でも現行並みの所要時間を確保できるでしょう。
国鉄時代は白浜以南は振り子を効かさず、本則で走っていましたので、少なくとも今より悪くはならないと思います。
Posted by: ▲ 飛遊人 | 2010.11.21 09:49 PM
▲ 飛遊人さん、おはようございます。
* スピード面ですが、283系には及ばないでしょうが、
381系は本則+20だったのではないでしょうか? それでも差は5キロなので、381系を置き換えるならば、大きな問題ではないと考えているのでしょう。
もっとも、283系が現に存在しているにもかかわらず、低性能の287系を入れるのは、攻めの気持ちがないですね。白浜以南は高速道路の計画がないと踏んでいるのでしょうが、そんな考えでは車に負け続けるでしょうね。
(参考:「特急列車『高速化』への提言」 川島令三著 中央書院)
Posted by: たべちゃん | 2010.11.24 05:19 AM
はじめまして。
低重心の車両なら、本則+20kmまでいけるはずです。そうであれば381系と十分渡り合えます。
攻めの気持ちがないといっても、停車駅が多ければあまり意味のないことだと思います。本格的に振り子がいるのは、北海道、四国、山陰、九州の一部などと、あまり駅に停まらないような列車でしょう。くろしおのような観光地とある程度の都市があって、比較的(和歌山から白浜までは本当に)停車駅の多い列車では、振り子の性能も制限されてしまうと思います。費用対効果が望めないというところでしょうか。残りで新宮行きや「やくも」を置き換えるときはどうなるか知りませんが。
Posted by: S県の人 | 2010.11.24 10:07 AM
今回、非振り子287系投入となったのは、283系は故障が多く、結局、18両しか作られなかったことがあります。
加えて、振り子車両を投入すると、線路・架線への負担が大きく、コストアップ要因になる。
それに比して、速度面でも、本則+15キロなら381系と余り変わらないし、最高速度130キロ化でカバーできそうです。
Posted by: かにうさぎ | 2010.11.24 09:47 PM
さらに、踏切事故など衝突時の運転士の安全を考慮、高運転台付車両にした結果、振り子式が困難になった事情もあるようです。
Posted by: かにうさぎ | 2010.11.25 09:56 PM
S県の人さん、おはようございます。
* 攻めの気持ちがないといっても、停車駅が
停車駅の多寡は関係ないでしょう。振り子式を投入する価値があるのは、カーブが多い路線です。
* 残りで新宮行きや「やくも」を置き換えるときはどうなるか
287系は白浜発着便に限定使用されるわけではありません。白浜以南では鈍足のままでしょうね。
Posted by: たべちゃん | 2010.11.26 05:52 AM
かにうさぎさん、おはようございます。
* 283系は故障が多く、結局、
そういう話は聞いたことがありますが、それが事実であるなら改良するものでしょう。
* 最高速度130キロ化でカバーできそうです。
最高速度がアップするという話は聞いたことがないですが。もっとも、紀勢線では、時速130キロで走ることのできる区間は短いようです。
* さらに、踏切事故など衝突時の運転士の安全を考慮、
JR北海道のは高運転台ですね。
(参考:「特急列車『高速化』への提言」 川島令三著 中央書院)
Posted by: たべちゃん | 2010.11.26 06:01 AM
レスありがとうございます。
さらに追加させていただきます。
まず、振り子車両というものは、速く走る機能ではないということです。振り子だろうと通常の車両だろうと、軌道に与える負担は同じです。あくまで振り子機能は乗り心地を改善するための機能でしかありません。結果的に速くは走れますが。(といいつつ381の乗り心地には問題があるのは事実)
軌道に与える負担が同じなので、さらに高速の制御振り子車両を導入しようとすると、さらなる軌道の強化が必要になります。ただ振り子だけ入れればいいというのではないことは189はまかぜが振り子でないことを見れば自明のことです。
低重心(287が低重心かは現在不明、スペックも不明ではありますが)で381と同等の走りができるのであれば、振り子は余計なだけで、つけるだけ無駄です。JR東が振り子を嫌っているのは有名なことでしょう。まあ、たしかに振り子のあずさのほうが速いのは速いのですけど。。。
また、287は381のすべてを置き換えるのではないようなので、停車駅の多い(停車駅の多いは影響しますよ。走ってすぐ停まるなら、高加減速のほうがいい)白浜行きを重点的に置き換えるのでは?という話が随所で話し合われているので、書き込んだ次第です。381と283が規格の低い新宮に行くのだと。
Posted by: S県の人 | 2010.11.26 06:44 AM
書いている途中で投稿したようなのですみません。
紀勢本線が287投入時にさらに高速を目指して、軌道強化をしたかは、私にはわかっていません。一部しか入れていないのでそこまで考えていないとは思いますが。全部が置き換えられた383や新規導入区間では当然軌道強化を行っているでしょうが。軌道強化がなければ、283といえ従来の速度の程度で走るだけです。
ちなみに私がやくもに乗ったときの感想は、「振り子といいながらずいぶん遅いな」です。それでも通常の車両よりは速く走っているのかもしれません。また山陰線の福知山から鳥取の間の線路の規格の悪さは相当なものです。この方面に振り子を入れる必要の無さはすぐにわかります。国鉄末期は電化だけして軌道強化をしてないので、あまり速く走れるところがないようです。むしろプロジェクトとして臨んだ、鳥取、島根のほうが、非電化区間しかないにもかかわらず、相当高速で走っています。このくらいの軌道なら振り子車両を入れる意味があります。
長文になりましたが、以上が私の考えです。
Posted by: S県の人 | 2010.11.26 07:09 AM
287系が報道公開されたようなので、さらに書かせていただきます。迷惑かもしれませんが、ご容赦願います。
どうも新聞報道ではくろしお筋に287を投入して追い出された381を福知山支社に送るようなことが書かれていたようです。これは非常に不思議なことです。そういう使い方をするなら287を福知山に集中投入してくろしおは381のままにしておけば振り子が使えていいのでは?とか。
381は特殊な車両で、単純に山陰線や福知山線に持っていって振り子動作ができるかといえば、そうではありませんということは周知の事実です。あの車両は特殊な架線の張り方が必要で、新規電化路線にしか導入されたことがないですね。他地区に持っていって、振り子機能で高速化とはいかない車両です。JRの振り子車両はパンタグラフ対策をしているので、既存電化路線でも導入可能ですが。。また、前も言ったとおり、振り子車両だろうと一般車両と同じ速度で走る分の軌道負担がかかります。山陰線の福知山以西は最高速度が制限される貧弱(城崎まで電化されているのに)区間です。そう考えれば、381を入れる意味はないと考えるのが自然です。さてこれをどう見るかはいろいろ調べないとわからないところです。
Posted by: S県の人 | 2010.11.27 09:27 PM
S県の人さん、おはようございます。
* 軌道に与える負担が同じなので、さらに高速
381系や283系を導入する段階で改良済みではないのでしょうか? 全く何もしていない路線に導入するのとは訳が違います。
ですから、振り子式を投入するとそれなりに速くなります。決して無駄ではありません。
* また、287は381のすべてを置き換えるのではないようなので
287系は51両だけなので、381系も当分残ります。どうやって残りを置き換えるのでしょうか? 287系を増備するのでしょうか、それとも全く新しい車両をつくるのでしょうか?
そもそも、新型車両ならば、振り子であっても振り子でなくてもそれなりの加減速の機能がつきます。特に考える必要はないでしょう。
* どうも新聞報道ではくろしお筋に
別の記事を書きましたが、意図が読めないですね。
話は変わりますが、コメントもかなり増えてきましたので、今日の23:59で締め切りとさせていただきます。ご了承ください。
Posted by: たべちゃん | 2010.11.28 08:25 AM