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米軍基地に適さない、関空を視察しても意味はない

 28日の沖縄県知事選で勝利した現職の仲井真知事。普天間基地問題では、(国外への移転を主張した対立候補とは違い)県外への移転を主張しました。

 とは言っても、自衛隊ならともかく、米軍基地を誘致するようなところはそうありません。そこで仲井真知事は思い出しました。大阪府の橋下知事が、国から米軍移転の話があれば、話には応じてもいいということを。仲井真知事は取りあえず、(米軍基地の移転先候補として考えられている)関空を視察するようです(ただし、現在の橋下知事は、関空・伊丹の経営統合構想があることを理由に、米軍の受け入れには否定的です)。

 しかし、米軍基地を関空に移転する意味は全くありません。あるのは「沖縄がかわいそうだから」だけであり、軍事的な視点は全くありません。軍事施設で一番重要なことは、予想される危険をどうやって防ぐのかということであります。この原理原則を外してはいけません。それを考えると、西のほうに固まるのはやむを得ないことです。特に島が連なる沖縄は重要な拠点です。網目が欠けると、そこから軍事大国が姿を現します。

 確かに都市化の進んだ普天間基地は危険性が高いです。その意味では、国内政治的にはともかくとして、辺野古はよくできた案でした。都市化している沖縄南部を避け、軍事面などへの影響が小さいですから。ベストでなくてもベターな案だったでしょう。このまま辺野古に「No」と言ってしまえば、残るのは現状の普天間固定という最悪の事態です。

 関空はめったに航空機が飛んで来ない、ローカル空港ではありません。滑走路が2本あるので余裕がありますが、裏を返せば1本では厳しくなる、ということです。仲井真知事は、米軍基地の移転をお願いするなら、地方のめったに航空機が飛んで来ない空港に行かないといけません。最初は門前払いでしょうが、粘り強くお願いしないといけないでしょう。日米同盟をも無視しかねないような対立候補とは違い(この場合は「非現実的」として無視すればよい)、現職が勝ったので、政府サイドもそれなりの成果を用意しないといけないですが、仲井真知事が関空に狙いを定めるのは見当違いです。早く方向転換したほうがよいでしょう。

 さて、関空の課題はと言えば、早く有利子負債を返すことです。借金と利子さえなければ、関空は大黒字の空港です。借金は徐々にではありますが減ってはいます。利子があるので補給金がない限り赤字ですが、キャッシュフローは黒字だからです。以前から何回も書いていますが、関空はどうにもならないダメ空港ではないのです。

 とは言っても、負債は重いです。リニアが名古屋まででもできると、関西の航空需要は減ってしまいます。それまでにある程度は有利子負債を減らしておく必要があるでしょう。

 伊丹との経営統合の話があります。関空と伊丹は、同じ運営会社のもとで運営されるので、伊丹の利益を回すことができます。関空の低迷の原因は、(関空開港によって消えるはずだった)伊丹が残っていることです。一方が騒音で社会問題になるほど「便利」、もう一方が環境に配慮したが故に「不便」、しかも両者からの運賃に差がないのでは、一方に集中するのは当たり前です。しかも、伊丹はそれほど儲っている空港ではありません。伊丹の黒字は50億円、利子補給金の半分ほどです。早く関空の負債を減らして一本立ちさせたほうが得策です。この差を補うためにも、伊丹を利用する航空会社及び客に追加料金を徴収するのがよいでしょう。「便利」というならそれに見合ったお金を払うことは経済的に説明がつきます。嫌なら関空に行くか新幹線に乗ればいいのです。

 関空は奇策によってしか生きられない、危険な空港ではありません。地理的に適していないのに、わざわざ軍事施設を受け入れる必要はないのです。伊丹からお金を請求できる権利がありますから、それを適切に行使して、有利子負債の返済に充てればいいのです。
(参考:Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101130-00000033-yom-pol、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101130-00000512-yom-pol)

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Comments

>大阪府の橋下知事が、国から米軍移転の話があれば、話には応じてもいいということを。

全く、橋下知事は、無責任な事を言ってくれたものです。橋下知事は、単に巨額の負債を抱える関空を救済したいだけだった。
地元の同意も、米軍の戦略も、空域調整の問題も、肝心なことは何も考えてない、思いつき発言だ。

伊丹との統合が決まった今、この話はもはや御用済みです。

仲井真知事は、そんな橋下の言葉を真に受けて、期待させてしまったのだから、鳩山首相と同様、橋下の罪は深い。

当人は、相も変わらず、神戸空港で受入れ等と言っているが、無責任な発言で振り回すのは、止めにしてもらいたい。

この調子なら、伊丹廃港論も信用できません。関空の債務に目途が立てば、一転、撤回するでしょう。彼はそういう人物です。

>関空と伊丹は、同じ運営会社のもとで運営されるので、伊丹の利益を回すことができます

伊丹は金の成る木ではありません。既に、利用者数も年間15百万人を割り、機材も小型化される一方です。
これで使用料を引き上げとなれば、航空会社は関西地域からの路線自体を縮小しかねません。
大手と言えど経営は厳しいわけで、関空のツケを払わされるのは御免です。

結局のところ、関空の失敗をはっきり認めたうえで、公的資金注入しかないでしょう。
関空に巨額の投資を要望した地元も、減資や債権放棄で責任を取る必要がある。

Posted by: かにうさぎ | 2010.12.02 09:39 PM

初めまして。いつも拝見させていただいてます。
少し気になるところがあったので、コメントさせていただきます。

普天間基地という米軍の軍事施設は、平時は周辺を周回する飛行訓練を実施し、どこかで何かあれば普天間から派兵されるという施設です。
よって、周囲数キロが住宅地ではなく海という関空への移転案は、サンゴなどの観光資源を壊す辺野古よりもよくできています。

また、いわゆる同時多発以降、米軍は基地再編計画を打ち出していて、その中で普天間のほぼ全てをグアムへ移転させるようです。
つまり米軍は、世界に分散している基地をグアムへ集中させることで、新たな脅威に対処できると考えており、普天間の移設先が辺野古でなければならない理由は、同時多発以前に約束されたことくらいしかないようです。

このことは、現実という名の現状維持の視点からに立つ日本人にとると、現実化すべきでない理想論なのかなと思います。
そして、米軍基地に翻弄され苦しめられてる県の知事が、他県に理不尽な土下座をしなければならなくなろうとしています。

ともあれ、普天間が国外移転されても、嘉手納基地が依然あるので、網目が欠けることはないと思いますが。

普天間の関空移転案のそもそもは、やっぱり関空の課題であり、その認識のズレから来ていることだと思います。
この記事の後半の通りだと思います。
関空は無駄な駄目空港ではなく、軍用機なんぞ入る余地の無い空港です、本来なら。

そう考えると、安全保障を在沖米軍にしがみつくのと、関西の空の玄関口を伊丹にしがみつくのとは、何だか似たようなものかもしれませんね。

Posted by: 96 | 2010.12.03 02:04 AM

 かにうさぎさん、おはようございます。

* 全く、橋下知事は、無責任な事を言ってくれたものです。

 冷静に考えれば、関空に米軍基地が移転することは不可能です。橋下知事としてはちゃんと「考える」ぐらいにしか言っていないのですが、政治家クラスでも真に受けるものがいます。分析能力の低さには、困りものです。

 ただ、神戸空港の発言は余計とは思いますが。「他県の空港」ぐらいにしておけばよいものを。

* 伊丹は金の成る木ではありません。

 それを言ってしまえば、伊丹の存在価値はありません。将来性はないものの、短期的にはある程度稼ぐことができますから。

 また、伊丹の利用料を上げ、そのお金で関空を値下げするという手がありますね。

* 関空に巨額の投資を要望した地元も、

 伊丹の利用者負担というかたちで、「便利」と言って伊丹を無理に残したツケを払えばいいですね。

Posted by: たべちゃん | 2010.12.06 04:50 AM

 96さん、おはようございます。

* よって、周囲数キロが住宅地ではなく海という

 そもそも、現状でもたくさんの民間機が飛んでいる関空を米軍基地の移転先とするのは無理な話です。全くの愚案です。

* また、いわゆる同時多発以降、米軍は基地再編計画を

 辺野古に「No」と言ったおかげで、このあたりもストップする危険性が十分にありますね。最悪です。

 また、西のほうの情勢がきな臭いことを考えれば(巨大な軍事大国がある)、10年か15年ぐらい前の案は見直さないといけないですね。沖縄から米軍基地が撤退するのは理想なのかもしれませんが、変なメッセージを与えてしまいかねません。

* そう考えると、安全保障を

 本来、国の防衛は自前でやるべきでしょう。伊丹を廃止すべきでしょう。前者はすぐにはできませんが、後者は道筋ははっきりできています。そこに向かって進むだけです。

Posted by: たべちゃん | 2010.12.06 05:00 AM

>嘉手納基地が依然あるので、網目が欠けることはないと思いますが。

嘉手納と普天間の部隊は、性格が違います。嘉手納は主に戦闘機部隊、普天間はヘリ部隊です。

両者の一体的運用を考えれば、普天間だけを国外や県外へ移設することはできません。沖縄本島から300キロ程度離れた徳之島や下地島ですら、米国からは拒否されています。

民主党は、そのあたりの軍事上の基本的な知識すら欠いていたわけです。

Posted by: かにうさぎ | 2010.12.06 09:08 PM

 かにうさぎ さん、おはようございます。

* 嘉手納と普天間の部隊は、性格が違います。

 単純に沖縄から米軍を追い出せば万々歳とはいかないですね。

Posted by: たべちゃん | 2010.12.07 05:29 AM

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Tracked on 2010.12.07 10:11 PM

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