関空リニアに調査費
政府の2011年度予算案に、大阪市中心部から関空への高速鉄道アクセスについての調査費が盛り込ました(金額は3月までに確定します)。アクセスにはなにわ筋線や既存の鉄道を利用したアクセスルートが想定されていますが、橋下知事の主張するリニア建設の可能性も排除されていないようです。そのほかに関空関連の予算としては、関空・伊丹の経営統合の準備費10億円、関空の経営基盤強化を目的とした補給金75億円があります。
確かに関空までリニアができれば、あっという間に関空に着きます。(日本の主要空港で一番都心から近い)福岡空港並みの速さでしょう。しかし、リニアで関空に行くとなるといくらかかるのでしょうか? 建設費が莫大でしょうから、料金もそれを反映して高くなります。四国方面のリニアがつくられ、それが関空付近を通るなどの事情がない限り、夢物語で終わりそうです。
それよりも関空に必要なのは、リニア中央新幹線が部分的にでも開業したときに備えて、有利子負債を減らしておくこと。リニアが名古屋まででも開業すれば、関西3空港の航空需要は激減してしまいます。こうなったら、3空港の並立はできません。部分的にリニアができるまでに15年ほどの時間がありますから、それまでに有利子負債を減らしておく必要があります。関空は利子の支払いさえなければ、今でも黒字の優良空港なのです。関空2期島の一部が(当面使用の見込みがないために)未完成のため、泉佐野市が関空会社に固定資産税の超過課税を行う動きがありますが、超過課税による負担は約6億円ほどなので、大きな問題ではありません。経営統合により、リニアが走っていない今なら伊丹空港の黒字をつぎ込んで、利子支払いの足しにすることができます。リニアが開業すれば伊丹空港を廃港して土地を売却することにより、1000億円程度は有利子負債を減らすことができます。伊丹空港に(利便性に見合う)適切な負担を課し、関空の有利子負債の軽減を図るのです。アクセスの問題は梅田に地下駅をつくり、そこに「はるか」が停まればそれなりのものになります。大阪の北側の梅田からでも40分程度です。関空の足かせとなっている有利子負債を削減すること、これが関西3空港問題を解決する処方箋なのです。
(参考:Sankei Biz http://www.sankeibiz.jp/macro/news/101224/mca1012242255033-n1.htm、毎日jp http://mainichi.jp/kansai/news/20101226ddn001010004000c.html)
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Comments
>関空の足かせとなっている有利子負債を削減すること、
伊丹廃港とか、経営統合、経営権売却など、色々言うけど、決め手となる策に乏しいと思う。
結局、関空の債務処理には、伊丹を廃港したくらいでは賄えず、足らず分は税金投入という不芳な結末が待っているだけでしょう。
その場合は、関空に出資している地元も、減資や貸付金債権の放棄など、一定の痛みを負担せねばなるまい。
そもそも、関空の巨額の債務は、2期工事等巨額の投資に原因がある。それを要望した地元にも一定の責任がある話だ。巨額の投資のツケを国民に回しながら、自分の出資分だけは全額保護してくれというのは、虫の良すぎる話だ。
>関空は利子の支払いさえなければ、今でも黒字の優良空港なのです。
それは、単に、高額な着陸料や使用料をぼったくってるだけの話でしょう。
そもそも、巨額の利払いがなければ、ここまで高額な着陸料を設定する必要もない話です。
関空は、成田より高い着陸料を払ってまで、就航させる価値のある空港ではありません。
Posted by: かにうさぎ | 2011.01.02 10:22 PM
かにうさぎ さん、おはようございます。
* 伊丹廃港とか、経営統合、経営権売却など、
結局、いろいろな策を組み合わせて地道に有利子負債を圧縮するのが王道なのです。
* その場合は、関空に出資している地元も、
最悪はこのパターンですが、株式の半分以上は国が持っています。国がかなりの損害を受けることになります。そのためにも有利子負債を圧縮させるのが望ましいですね。
* そもそも、関空の巨額の債務は、2期工事等
これをやらなければ中途半端な空港ばかりができてしまいます。本来なら関空で関西の航空需要を賄う予定だったのですから、2期工事は必然です。滑走路が余れば、伊丹をつぶせばよいだけの話です。伊丹を追い出した責任です。
* それは、単に、高額な着陸料や使用料
伊丹が「便利」というなら、廃港までの間、着陸料などを上げて稼いでもらいましょう。「便利」と言ってくれるなら払えるはずです。
Posted by: たべちゃん | 2011.01.04 04:59 AM
関空はご承知の通り莫大な金をかけて造られているため、土地も上物も簿価は非常に高いです。資産の再評価をすればかなり下がるでしょう。現に連絡橋の道路部分については、売却価格が減価償却中の簿価よりもさらに安くなったために減損処理(いわゆる損切り)がされています。
このため実質的には負債の額が資産の額を上回る債務超過状態にあるものと推定され、伊丹の資産を注ぎ込んだぐらいではこの状態を解消できないであろうから、公的資金を投入するなり、減資や債権放棄をさせて処理すべきだという意見が出てくるのは仕方がありません。その場合には、国債へのツケ回し批判を甘受すること、行政訴訟や株主からの訴訟に耐えることなど、関係者が腹をくくらなければなりません。
そうではなく、債務超過状態を自力で脱出するということであれば、十分な利益を出して、資産の減価償却分を大幅に上回る債務の元本返済を継続的に行っていくことが必要になります。特に土地の時価・簿価差が大きいので脱出には長期間を要するでしょう。
現在、規制緩和や税制優遇などによる関空への側面支援ができるように総合特区の法律を政府が作ろうとしているようですが、今後どうなっていくのか注目をしています。
Posted by: OSA | 2011.01.06 01:11 AM
OSAさん、おはようございます。
* このため実質的には負債の額が資産の額を上回る債務超過状態にあるものと推定され、
債務超過状態にあることすなわち破産ではありません。(利子さえなければ今でも多額の黒字のため)キャッシュフローがあるので、資金的には回ります。
本来は国費で土地を整備するのが正しかったのでしょう(こうすれば有利子負債はかなり減ったでしょう)。ですから、公的資金の投入はむしろの望ましいかもしれませんが、近視眼的に破綻処理するのは最悪の政策ですね。空港として使うから価値があるのであって、それがなければ何も価値はありません。
* そうではなく、債務超過状態を自力で脱出するということであれば、
関空の取る道はこちらでしょう。将来性のない伊丹の利益をつぎ込んで、有利子負債の圧縮を図るのです。
Posted by: たべちゃん | 2011.01.07 05:44 AM
>空港として使うから価値があるのであって、それがなければ何も価値はありません。
何も関空自体を廃止すると言っているわけではありません。関空会社が破綻処理されても、空港自体は残ります。
>関空の取る道はこちらでしょう。将来性のない伊丹の利益をつぎ込んで、有利子負債の圧縮を図るのです。
しかし、その具体的な展望は見えません。しかも、伊丹の収益を回すというのは、形を変えた公的資金注入でしかありません。
しかも、このプランを作った成長戦略会議というのは、国際線復活等伊丹空港のフル活用を主張しているような人達です。
彼らの主張は、
・伊丹を廃港しても、関空の利用は余り増えない,用地を売却してもいくらにもならない
・長距離国内線の関空シフト策も余り効果を上げていない
・よって、伊丹を積極的に活用することで、トータルの収入を上げることが関空の救済になる
これは、廃止までの策とは言っているものの、一旦その方向に進めば、既得権になってしまうことは明白です。
リニアができて需要が縮小しても、それが自動的に伊丹の廃止に繋がるわけではない。
むしろ、関空こそ不要という風になるかもしれません。
そもそも、将来廃止が決まっている空港を、一時的に積極利用などというのが、不自然な話です。
この構想は、何だか胡散臭いものを感じます。
Posted by: かにうさぎ | 2011.01.08 10:15 PM
かにうさぎさん、おはようございます。
* 関空会社が破綻処理されても、空港自体は残ります。
(減価償却費が多額であることもあって)キャッシュフローが黒字である関空で、わざわざイメージダウンにつながる経営破綻をさせる必要がありません。
* しかも、伊丹の収益を回すというのは、
伊丹があることが、関西の空港事情を混迷させた大きな原因です。伊丹自身は需要があってもそれに見合った投資ができない、将来のない空港です。伊丹の利用者から利便性に見合った適正な負担を徴収し、将来のある関空につぎ込むのは、誠に理にかなったことです。
成田の利益を関空につぎ込むならともかく、伊丹ならなんら躊躇せずに適正な負担を課すことができます。
* 国際線復活等伊丹空港のフル活用を主張しているような人達です。
今さら伊丹をフル活用しても意味がないですね。そんなに伊丹を使いたいなら、周辺の土地を買収して拡張すればよかったのです。それができずに他に空港を求めた時点で、伊丹は将来性のない空港に転落したのです。せいぜい、リニアができるまで利用料などを利便性に見合った適正な額に設定して利益を吐き出させるための存在です。
Posted by: たべちゃん | 2011.01.14 05:39 AM