長野電鉄屋代線、多数決で廃止へ
長野電鉄には2本の路線があります。長野と湯田中を結ぶ本線格の長野線と、途中の須坂から分かれる、屋代線です。もともとは屋代から須坂、信州中野と経由して(2002年に廃止された)木島まで行く路線(河東線)が先にでき、その後、長野や湯田中に伸びる路線ができましたが、信州中野-木島間が廃止された2002年に現実に合わせて路線名が変えられ、須坂-屋代間が屋代線となりました。
かつては上野からの直通急行が通り賑わっていたのですが、利用者は減り続け、2009年度はたったの45.4万人。ピークの1965年度と比べると14%ほどになっています。当然ながら赤字で、経営の足を引っ張り続けてきました。屋代線の活性化のために、沿線3市(長野、須坂、千曲)と住民でつくられた活性化協議会のもと、実証実験も行われてきましたが、長野電鉄の廃止の意向はかたく、沿線3市もそれを容認するかたちになり、実証実験も3か月で打ち切られていたようです。
そんな中、2月2日に活性化協議会が行われました。協議会の事務局は昨年11月、すでに(1)屋代線を存続して実証実験を続ける (2)休止して代替バスを運行しながら検討 (3)廃止して代替バスを運行 の3案を提示していました。2日に住民などの反対を押し切るかたちで無記名での投票が行われ、(3)を支持するものが14人、(1)を支持するものが11人(ほかに白票1人)ということで、屋代線廃止の方針が決まりました。今後、地元住民の声を聞きながら代替バスのルートを決定し、それが決まり次第、長野電鉄は廃止届を国に出します。
沿線住民や市議会はこの投票による廃止の決定に反発しています。ただ、利用者が少なく、鉄道を維持しようとするとかなりのお金がかかります。民間企業の長野電鉄が出せない以上、もし残したければだれかが出さざるを得ません。そのあたりも考えないと、説得力を持った存続策はないでしょう。
そもそも、屋代線が廃止の方向になったのは、屋代線が人の流れと合っていないからです。主要都市長野を避けて通っている現状では、なかなか使うことができません。現実、屋代線は約90分間隔での運転ですが、途中の松代から長野へは約30分間隔でバスが運転されています。沿線3市にとっては重要な路線ではなく、廃止になっても深刻な打撃はありません。
もっとも、人の流れと線路が一致していないということは、代替バスの運行の厳しさも予想されます。今は鉄道があるから利用されるところもありますが、鉄道がなくなり、代替バスになるとそのような利用のされかたはありません。鉄道時代よりかなり利用が減ることが想定されます。事実、代替バスも赤字が見込まれ、国の交付金と沿線3市の負担によって補てんします。
(追記1)
長野電鉄は3月25日、屋代線の廃止届を国交省北陸信越運輸局に提出しました。これにより、2012年3月までに屋代線は廃止されることになります。
(追記2)
屋代線の沿線住民はLRT化を求めていましたが、これについて、長野市交通対策審議会は2012年7月30日、それを否定する内容の報告書を市長に提出しました。審議会の調査結果によると、旧屋代線の施設改修や新車両の整備などの初期投資に約158億円、年間運行経費に約9.2億円かかると試算しています。運賃を鉄道時代の9倍にしないと黒字化できないようで、渋滞緩和などの効果を加味しても投資を上回る効果は得られないとしています。もっとも、それで効果が得られるならば、鉄道は廃線にならなかったことでしょう。
(参考:asahi.com http://www.asahi.com/travel/rail/news/TKY201102020396.html、毎日jp http://mainichi.jp/area/nagano/news/20110203ddlk20020089000c.html、http://mainichi.jp/area/nagano/news/20120731ddlk20020008000c.html、YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nagano/news/20110205-OYT8T00064.htm、長野電鉄ホームページ http://www.nagaden-net.co.jp/img/pdf/yashiro0325.pdf)
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