東海道新幹線大改修計画は2段階に分割して
開業してから46年もの年月が経ち、多くの人が利用する東海道新幹線の大規模改修は急務。JR東海も、以前に書きましたように、2017年以降に1兆円規模(約1.1兆円)の大規模改修を考えています。しかし、多くの人が利用するため、大規模に運休して工事をするわけにはいきません。
大規模改修で運休の必要があるのは、鋼橋の取り替え。同じ橋でも、コンクリート橋は断面修復で済みます。トンネルも断面修復です。盛土や切取といった土工はそもそも、改修する必要はありません。鋼橋でも、単純トラス、デックガーター、スルーガーターは取り替えに伴う運行への支障は小さいです。問題なのは、大きな河川を渡るときに存在する、連続トラス。連続トラスは単純トラス3連が一体となった構造のもので、1セットの延長は150~210メートル。東海道新幹線には、13の橋梁に37セットあります。
連続トラスの取り替えには、あらかじめ現在使われている橋の横に新たな橋を架けておき、これを横にスライドさせるという「全取替」という工法があります。しかし、この工法には欠点があります。実は昨年4月、北近畿タンゴ鉄道でこの工法による連続トラスの架け替えが行われました。そのとき、3日間、全く列車を走らせずに運休させたのです。これは北近畿タンゴ鉄道がローカル線だからできた話で、利用者の極めて多い東海道新幹線では難しいです。東海道新幹線の大改修では、2日間程度の終日運休が考えられています。
ただ、東海道新幹線の場合は、いずれリニアが開業します。現在の計画では、2027年に名古屋まで、2045年に新大阪までの全線が開業します。これを考えると、当面は運行に支障をきたさない程度の修理にとどめ、リニアが開業した後に残りを行うという工法を採ることができます。「順次部材取替」という工法です。まず、列車荷重による疲労の影響を最も受けている床組の部材取替を行います。床組の取り替えは、運行への支障はありません。その後の維持更新工事で残りの外枠の取り替えを行います。外枠取り替えでは、取り外しによる橋梁の変形を防止する工事や、架線の仮撤去、復旧工事が必要となるので、運行に支障が生じます。1回につき3時間程度の運休です。
全取替では36時間程度(2日間)の運休が37回の約1300時間、順次部材取替では3時間程度の運休が470回の約1400時間出てきます。取り替え完了までの工事費は全取替のほうが安いです。常識的には全取替のほうが望ましいのですが、いずれリニアが開業することを考えると、順次部材取替にも合理性が出てきます。リニアが開業すると直通客はリニアに移行させることができるので、影響を受ける人が減るからです。当然のことながら、新大阪までの全線開業をするまでは、名古屋以東の部材取替を行うこととなります。
(参考:国交省ホームページ http://www.mlit.go.jp/common/000134430.pdf)
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