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北海道新幹線新函館-札幌間など、新規建設方針決定!(2)

 昨日の記事の続きです。

 整備新幹線建設に必要な財源は、公共事業費(2015年度から2040年度、2015年度から2017年度は既建設分にも充てられるため一部のみ利用可能となります)2.64兆円と2017年度から2040年度までの貸付料0.99兆円でまかないます。合計すると3.63兆円となり、建設が予定される北海道新幹線新函館-札幌間など3区間の建設費3.01兆円を大きく超えますが、0.25兆円の貨物調整金を除いても大きな差が出ます。何に使うのでしょうか?

 ところで、貸付料は整備新幹線の整備に伴い、ずっと増えていくものと思っていましたが、2027年度以降、減っていきます。長野新幹線などが開業30年を迎え、貸付料が減っていくためです。それも変な話で、整備新幹線はJRにとって借り物なので、営業を続ける限り永遠に払わないといけない性質のものでしょう。しかも、盛岡止まりだった東北新幹線が北海道に伸びると、JR東日本に莫大な利益が生じます。貸付料を見直すことによっていわゆる「根元受益」の分も適切に反映させる必要があるでしょう。これによって貸付料が増え、新規で着工される区間の早期開業につながったり、重要な区間でありながら未着工の敦賀以西を建設する財源になったりします。このままだと、2040年度ごろまで新規に着工する財源はありません。ちなみに、どうしても北陸・長崎新幹線が開業する2020年度過ぎと、北海道新幹線が開業する2030年度過ぎはどうしても建設費がかかります。そのときは2040年度までの範囲内で、後に入る貸付料(これから完成する区間を含むようです)から充当されるようです。

 各線ごとの収支採算性等は次の通りです。北海道新幹線は時速260キロで運転(ただし、青函トンネルなど在来線と共用する区間は時速140キロ)した場合、新函館までが開業したときに比べて投資効果は1.1、収支採算性(開業後30年間の平均値)は35億円です。少ない感じがしますが、JR東日本の「根元受益」を反映させずに、JR北海道だけを考えると小さいものになってしまうのでしょう。北陸新幹線は時速260キロで運転した場合、金沢まで開業したときに比べて投資効果は1.0~1.1、収支採算性は80~102億円です。投資効果が1.1、収支採算性が102億円となるのは、敦賀駅で乗り換えによる利便性の低下を減らすための対応を最大限行った場合のもので、この意味でも大阪までの全線開業が望まれます。金沢新幹線も敦賀新幹線も中途半端なことには変わりないですから。長崎新幹線はフリーゲージトレインを時速260キロで運転した場合、現状(在来線)と比べて投資効果は1.1、収支採算性が20億円です。これまでのに比べると厳しい数字です。

 さて、2010年8月に出された、各線ごとの課題については、必ずしもクリアされたとはいえません。北海道新幹線は(1)貨物列車も走る青函トンネルの運行方法(2)並行在来線の経営(3)最高速度の見直し の3点ですが、(1)に関しては「トレイン・オン・トレイン」が実用化するまで当面140キロ運転でお茶を濁します。(3)に関しては2つの点から否定的です。ひとつは、時速360キロ運転すれば時間短縮はできますが、騒音費用の費用が増大し、費用対効果は縮小すること。もうひとつは、最高速度を上げると、整備計画の変更(リニアで1年3か月かかりました)や環境影響評価(3~4年かかります)をしなければなりません。その分、着工が大幅に遅れること。つまり、ゼロ回答です。北海道新幹線は新規着工されても、本格的に行うのは新函館まで開業してからのことなので、少々時間がかかったとしても、大きな問題にはならないはずですが。もっとも、(本来は請求すべき)JR東日本から「根元受益」を請求しないので、効果が少ないということはあるでしょう。北陸新幹線は敦賀以西の整備のありかたの1つのみですが、先ほども述べたように、着工されたとしても2035年度以降の話なので、先送りです。長崎新幹線は、(1)フリーゲージトレインの開発(2)肥前山口-武雄温泉間の単線区間のありかた の2つです。フリーゲージトレインについては実用化待ち(実際に導入するかはJR九州と地元自治体が判断)、肥前山口-武雄温泉間の複線化はフリーゲージトレインの導入を前提として新規着工が決まった段階で判断します。複線化の費用は整備新幹線の予算で出ます。

(追記1)
 長崎新幹線では、博多-長崎間を31往復、そのうち14往復が新大阪まで乗り入れることを前提に収支採算性等を計算しています。フリーゲージトレインの技術が確立していない段階でそれをあてにするのは危ないでしょう。フリーゲージトレインができなかったことを考えた収支採算性等の計算も必要です。

(追記2)
 北海道新幹線倶知安駅は半地下構造で計画されていましたが、倶知安町と北海道の要望を受け、駅周辺約1.3キロを高架に変更する方向です。
(参考:国交省ホームページ http://www.mlit.go.jp/common/000186790.pdf、佐賀新聞ホームページ http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2123805.article.html、北海道新聞ホームページ http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/436429.html)

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Comments

またドカンと財投を注ぎ込んで作ればいいじゃないですか、郵貯やらに手を突っ込むとなれば国民ももう少し"注ぎ込んだカネが返ってくること"を意識するようになって、新幹線が本体は成功だということが分かりますよ、と書こうとして"整備新幹線 財投"で検索したら分かりやすい、というか最近のHPが出てきませんでした。やはり財投は鉄道整備にとって麻薬なんでしょうか。

マスコミに聞こうにも「新幹線は無駄」と書くその手で高速バスや飛行機ならまだしも新しい新幹線の切符を買っているに違いない、と疑心を抱かれるまでに発信する情報への信頼は低下していますし。

Posted by: 日置りん | 2011.12.28 09:27 PM

 日置りん さん、おはようございます。

* 新幹線が本体は成功だということが

 すでに開業した整備新幹線の実績から見ると、成功している部類でしょう。

* マスコミに聞こうにも「新幹線は無駄」と書く

 マスコミの報道を鵜呑みにしなくなったのは、ネットの「功」の部分からもしれないですね。マスコミの志は極めて低いですから。

Posted by: たべちゃん | 2011.12.30 09:09 AM

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Tracked on 2011.12.28 10:17 PM

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