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整備新幹線を止めたら財政問題が解決できるのなら誰も苦労しない

 書きたい題材が多いことに加えて、あまりにも認識の程度が低い社説なので無視しようとも思いましたが、突っ込みどころが多いので、記事にします。

 それは18日の社説。北海道新幹線新函館-札幌間など、工事認可に向けた手続きが進んでいる整備新幹線の未着工3区間についてです。整備新幹線の投資効果の計算は、マスコミの厳しい批判を受けてかなり厳密に行われており、過去に開業した分も一定の成果を上げています。現在の在来線の需要を考えたら、新規に着工される区間もそれなりのものが見込めると考えられるでしょう。LLCや高速バスにより需要の一部が流れることはありますが、制約が大きかったり時間が読めなかったりして、ビジネスでは使いづらいでしょう。

 以前にも同じようなことを書きましたが、鉄道の得意分野は高速輸送と大量輸送です。まさに新幹線は前者の典型例です。車にはまねのできない時速300キロのスピードで走り、ある程度の距離では(アクセスや搭乗手続きに時間がかかる)航空機にも勝てます。こういう鉄道の得意分野を鉄道に委ねずに、何を鉄道に委ねるつもりでしょうか? 各論では言いたいことはたくさんありますが、少なくとも総論では賛成しかありません。ここまで整備新幹線に強く反対するのですから、朝日新聞の記者様は長野新幹線も含めて並行在来線に乗って取材しているのでしょうか? 唯一認識が合致するのは、着工のペースが遅すぎることです。新規着工区間の建設費が3.01兆円に増えたのも、建設期間を約25年(北海道新幹線の場合)に伸ばしたことが原因の一つです。2025年ぐらいには開業できるように、一般財源も投入して、スピードアップを行わないといけません。開業しないと、建設に要した投資が回収できないのですから。

 そもそも、国の財政が厳しいのは、整備新幹線を止める程度で解決できるものではありません。それぐらいで解決できるのであれば消費税を上げようと苦労する必要がないのです。問題の根本は、高齢化で社会保障費が増え続けるためです。多くの現役世代が少数の高齢者を支えることができた幸せな時代なら成立した話が、少子高齢化の現在では成り立たなくなっているのです。今後も少子高齢化の動きは止まりません。高齢者への福祉を見直し、将来にわたって無理のないものにしないといけません。それでねん出した財源で財政負担を減らすとともに、一部をより希少価値のある現役世代、特に子育て世代に振り分けないといけません(子育てをしている人が支援の対象なので、結婚していない独身の人にはそれなりの負担をしていただきます)。生活保護の見直しも当然です。働く能力があるのに働く意欲がなく、酒とギャンブルに溺れる者には支給する必要がありません。

 次の選挙で落選するのが怖い政治家の皆様には、票になる高齢者を敵に回す発言はできないでしょうが(ですからこの期に及んでも、増税反対などバラ色の話をし続けます)、それでは次の選挙はともかく、次の世代には大きなつけを回します。政治家としてそれなりの報酬をもらうからには、厳しい話もする覚悟が必要なのです。
(参考:朝日新聞3月18日朝刊 中部14版)

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Comments

投資効果の計算が厳密に行われていると言っても今一つピンときません。マスコミが「本当に計算してんのか?」とばかり言っているせいでしょうか。
そこまで疑わしいなら自分達では無理でもシンクタンクに計算を依頼してくれればいいんですが。肥薩おれんじの低迷も鹿児島中央駅の人の流れの増加も現にそこにありますが、よく中央マスコミは震災に乗じて"九州新幹線失敗"のキャンペーンをやらないなあ、と感心してます。中央駅の人込みなんかPC一個でガラガラに出来るのに。

Posted by: 日置りん | 2012.03.20 08:28 AM

 日置りんさん、おはようございます。

* そこまで疑わしいなら自分達では無理でも

 そんな面倒なことはしないでしょうね。批判さえしていれば済みますから。

* よく中央マスコミは震災に乗じて

 基本的には一定の成果を上げているのですから、そんなキャンペーンはできないでしょう。

Posted by: たべちゃん | 2012.03.21 04:39 AM

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