岩泉線、あまりの利用者の少なさに復活ならず、廃止へ
2010年7月、岩泉線押角-岩手大川間で土砂崩れが起きたところに普通列車が突っ込み、脱線するという事故が起きました。それ以来、岩泉線は運休し、代行バスを走らせています(木次線同様、国鉄末期、並行道路が未整備という理由で廃止を免れたのですが、代行バスが走るということはそれなりの状況になっているのでしょうか?)。
その岩泉線、今年度中に復活するかどうかを判断することになっていましたが、ついに結論が出たようです。廃止になるのです。22日に地元岩泉町などに廃線を打診したのです。具体的な廃線の時期は決まっていないものの、廃線が決まれば、1987年にJR東日本が発足して以来、初めてのことになります。
廃線の決め手になったのが、あまりの利用者の少なさ。1キロ当たりの1日平均乗車人員はたったの46人(2009年度)。JR東日本の在来線中、最下位です。どう考えても鉄道として維持できるような輸送量ではありません。株式を公開しているJR東日本では、とてもやっていけるようなものではありません。地元からの補助が期待できる第三セクターでも経営は無理でしょう。
東日本大震災で被災した山田線などについても鉄路での復旧を求めている、地元からの反発は予想されますが、あまりの利用者の少なさを考えると、とても存続を求めることができるレベルではないでしょう。
(追記1)
30日、JR東日本から鉄道としての復旧を断念するという内容の発表がありました。
その決め手になったのは、運転再開に必要な費用の多さと利用者の少なさ。列車の安全運行を確保するためには少なくとも約130億円の費用と長期にわたる工事が必要となります。また、先ほども述べたように利用者があまりにも少なく、JR発足時から約1/4に減少しています。収支状況を見ると、2008年度の収入は約800万円。これに対して費用は約32倍の約2.65億円もかかります。営業係数約3200です。代行バスの利用状況(1月16日~2月29日)を見ると、一番利用者の多い4便(岩泉8:04発)でも平均乗車人数は13.1人(平日)、全便平均だと平日は6.4人、休日は3.4人です。どうみても鉄道の存続は厳しいとしか言いようがありません。
今後は、バスにより地域交通を確保する見込みです。
(追記2)
岩手県や沿線2市町(宮古市、岩泉町)で設置する「安全対策費用検証委員会」は、岩泉線の復旧に要する費用を、JRの提示額の1/6の約22億円と試算しています。
「安全対策費用検証委員会」の試算がこんなに低額で済んだのは、落石防護柵の設置などのハード面の対策を緊急性の高いものだけに絞っていること。不十分なところは岩盤崩壊や落石を検知するソフト面でカバーしようとしているのです。
JRの試算より大幅に安いとはいえ、それでも約22億円かかります。すでに高い安いの問題ではなく、需要が少なすぎるのが問題なのです。
(参考:毎日jp http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120329k0000e040174000c.html、http://mainichi.jp/area/iwate/news/20121023ddlk03020072000c.html、JR東日本ホームページ http://www.jreast.co.jp/press/2011/20120316.pdf)
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Comments
岩泉線は代替道路未整備のために廃線を免れた路線ですよね。
今も並行する代替道路はまともなものがありませんが、その後に三陸鉄道が開通し、終点の岩泉から宮古へは小本経由にシフトしたため、その役目を半分終えたような感じです。三陸鉄道の方は復旧が決定しているというのも、大きな理由だと思います。
とはいえ、災害廃止ネットでは悪しき前例になるのではという話が出始めておりますね(国鉄時代には事例はありますが)。とはいえ、最近は国鉄民営化自体も疑われるようになりましたが、岩泉線に関して言うと、国鉄が経営していたとしても廃線になっていたのではないかなという気がします。
Posted by: うえしょう | 2012.03.31 02:53 PM
うえしょうさん、おはようございます。
* 今も並行する代替道路はまともなものがありませんが、
それでも輸送量の少なさを見たら、廃止は当然の結論となるでしょう。
* とはいえ、災害廃止ネットでは悪しき前例になるのではという
三陸鉄道のように、少なくとも維持費は地元で責任を負える鉄道ではありません。利益を追求する、本来の意味での株式会社である以上、JR東日本を責めるのは無理な話です。
Posted by: たべちゃん | 2012.04.02 05:06 AM