北海道新幹線、時速320キロ運転で東京-札幌間4時間33分
2035年度に北海道新幹線が全線開通しても、東京-札幌間に5時間1分もかかってしまいます。時速320キロを出すことができるE5系を使うものの、盛岡以北は時速260キロ(在来線と共用する、青函トンネルなどの共用走行区間(新中小国-木古内間)は時速140キロ)。では、新幹線が本気を出せばどうなのでしょうか? 2月23日に行われた、国交省の整備新幹線小委員会で、委員から指摘があった、北海道新幹線を時速320キロ運転したときの試算が出されました。
まず、以前にも書きましたが、「トレイン・オン・トレイン」が実用化され、共用走行区間も時速260キロ運転した場合、東京-札幌間の所要時間は18分短縮され、4時間43分となります。そして、共用走行区間を含めて盛岡以北も時速320キロ運転した場合、東京-札幌間は4時間33分となります。意外と所要時間の短縮度合いは小さいですね。
そんな小さな効果でも、投資効果は大きくなります。盛岡以北時速260キロ運転、共用走行区間時速140キロ運転の場合、投資効果は1.1。それが共用走行区間も時速260キロ運転すれば、投資効果は1.2となります。盛岡以北も全部時速320キロ運転すれば、投資効果は1.4になります(この投資効果は、盛岡-新函館間の速度向上による便益も含みます)。時速320キロ運転により、新函館-札幌間の需要も8%増え、1日16000人になります。以前、北海道新幹線の速度向上に関して、否定的な見解があることを書きましたが、実は速度向上すればそれに見合った効果があることが判明したのです。
さて、話は変わりますが、新幹線が開業すると、貨物列車を引っ張る機関車も新しいものを用意しなければならなくなります。電圧が交流20000ボルトから交流25000ボルトになるなどの理由があるからです。そこで、JR貨物は新型機関車、EH800を20両つくります。EH800は20000ボルトと25000ボルトの両方に対応する電子機器を搭載するとともに、北海道新幹線で使用されるデジタルATCシステムやデジタル列車無線機を搭載します。投資金額は最大190億円(検修基地の新設費用を含む)ですが、整備新幹線をつくったことから発生した費用であり、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の利益剰余金を活用して、半額は助成金の交付、残りの半額は無利子貸付で行います。
なお、貨車は従来のままです。というより、貨車はあまりにも数が多くて、(たった20両で対応できる)機関車のように青函トンネル限定の専用形式をつくることができません。JR貨物は2011年4月1日時点で、機関車、貨車合わせて9077両保有していますが、そのうち7718両、保有車両の約85%が青函トンネルを通過するのです。このうち機関車はEH500が61両、ED79が9両、あとはコンテナ車ばかりです。
(参考:国交省ホームページ http://www.mlit.go.jp/common/000192737.pdf、http://www.mlit.go.jp/common/000193032.pdf)
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Comments
>意外と所要時間の短縮度合いは小さいですね。
かつての山陽区間で300系(270キロ)と500系(300キロ)の所要時間の差は15分あったことを思えば、ほぼ同じ距離の盛岡-札幌間で260キロと320キロの差が10分しかないというのはおかしい気もします。
>実は速度向上すればそれに見合った効果があることが判明したのです
とは言え、東京-札幌間の利用者のうち、鉄道利用は3%程度です。それが、5倍になっても、15%でしかありません。
もともと、絶対数が少ないところだから、増加効果が大きいと言っても、たかがしれているのです。
Posted by: かにうさぎ | 2012.03.06 10:12 PM
かにうさぎさん、おはようございます。
* ほぼ同じ距離の盛岡-札幌間で
もっと短縮しそうな気がしましたが、意外と小さかったですね。
* とは言え、東京-札幌間の利用者のうち、
現状では豪華寝台列車を楽しむ旅でない限り、鉄道で東京-札幌間を利用することは考えられません。しかし、新幹線が開業すれば大宮あたりの利用者を中心にして選択肢の一つにはなるでしょう。パイが大きいですから。
Posted by: たべちゃん | 2012.03.07 05:37 AM