大阪市、「敬老パス」は半額負担か?
大阪市の「敬老パス」は、70歳以上の市民が無料で市営地下鉄・バスを利用できるもの。高齢者にとってはありがたいですが、少子高齢化に伴い対象者は増え、負担もどんどん増えていきます。現在、約35万人が利用し、大阪市は運賃相当額年間約80億円を負担していますが、2018年度には交付人数は約41万人、市の負担額は約101億円に増える見通しです。他の都市にも「敬老パス」に相当する制度はありますが、本人負担や所得制限があるケースが多く、所得にかかわらず無料にしているのは全国の政令市で大阪市だけです。
こんな制度でははっきり言って持ちません。そこで橋下市長は、市の443事業(年間約4700億円)を段階的に見直し、2012~2014年度の合計で約548億円を削減する私案をまとめました。最終年度の2014年度で287億円の削減となりますが、年間500億円程度の収支不足が見込まれている現状では、まだ収支均衡には至りません。
大阪市の改革プロジェクトチーム(PT)は、1億円以上の事業をすべて見直し、利用が低迷する施設の廃止や受益に応じた負担、現役世代への重点投資などの観点から104の事業の廃止・削減を行いました。区民センター、温水プール、スポーツセンターなど24区すべてにある施設については、都構想で大阪市を8~9の特別自治区に再編するという観点から、2014年度以降9つ程度に統廃合します。
交通関係では、「敬老パス」を早ければ2013年度から見直します。見直し案には3案が考えられ、最大50億円の削減を見込んでいます。(1)利用者が半額負担 (2)半額負担、年間利用上限2万円の導入と、JRや私鉄への利用拡大 (3)所得に応じた負担 です。そのうち(2)の案は、「敬老パス」を持つ高齢者に利用上限額を設定し、半額負担を求める一方、市域外のエリアを含めて(どのあたりまでが含まれるは不明です)JRや私鉄も利用できるようにするものです。制度の運用を支えるため、JRや私鉄側にも一定の負担を求めます。また、低迷が続く「赤バス」についても、2011年度予算で約15億円だった事業費を約4.4億円に削減します(以前のコメントに書きましたが、暫定予算案時点では「赤バス」予算はカットされていました)。
PTは担当部局との議論を経て5月上旬に「市政改革プラン」の素案を公表し、パブリックコメントを実施して原案をつくり、7月の市議会で本格予算案として提案します。「敬老パス」の話は前任の平松市長も改革をしようとしましたが、反発が強くできませんでした。高齢者や(高齢者に票を頼っている)議員の反発は強いでしょうが、高齢者に手厚いサービスが国ベースでも地方ベースでも厳しい財政の一因となっています。将来維持できる程度に削減しなければならないのは言うまでもないでしょう。
(追記1)
PTは「敬老パス」の見直し案を3案出しましたが、その中では負担はあるものの、JRや私鉄にも乗ることができる(2)が有力とされていました。しかし、大阪維新の会と公明はそれぞれ対案を出しました。
大阪維新の会が出した対案は、年間1~1.5万円程度の利用分までを無料とし、それを上回る利用については全額か半額の負担を求め、JRや私鉄でも利用できるというものです。公明の対案は2つあり、ひとつはパス発行費用の3700円のみの負担を求めますが、無制限に利用ができるというもの。もうひとつは発行費用の負担を求め、さらに年間10万円前後の無料利用の上限枠を設けるというものです。現状とほとんど変わりがない案です。
両会派は大阪市議会の過半数を占めているため、橋下市長と合わせた3者が合意すれば、見直しができることになります。財政事情が厳しく、高齢者が増え続ける現状では、厳しい見直しを望みたいところですが、どうなることでしょうか? 選挙を恐れるがための甘い見直しは避けなければなりません。増え続ける高齢者へのサービスが、財政を厳しくしている要因ですから。
(追記2)
橋下市長は、2013年度から、「敬老パス」利用者に運賃を3割負担させることと(利用額の上限なし)、所得に応じて毎年3000~5000円の更新料を求める方針です(ただし、更新料と同額分を運賃として使えるようにします)。大阪維新の会と公明党の両市議団に提示し、6月中に発表される市政改革プランの成案に盛り込む方針です。運賃の3割負担により市の負担は年間30億円減る見込みとされていますが、改札機などのシステム改修に数十億円の費用がかかるようです。なお、関西圏の私鉄各社への利用拡大は今後、検討するようです。
「敬老パス」見直しについては2634件もの意見が寄せられています。市民交流センター廃止についての2938件に次ぐもので、ほとんどが反対意見です。既得権が多く、非常に恵まれた高齢者へのサービスを削ることは、政治的になかなか難しいのですが、将来を考えるとやらなければいけないものです。
(参考:YOMIURI ONLINE http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120402-OYO1T00164.htm、http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120509-OYO1T00373.htm、毎日jp http://mainichi.jp/select/news/20120406mog00m010005000c.html、朝日新聞ホームページ http://www.asahi.com/politics/update/0608/OSK201206070181.html、日本経済新聞ホームページ http://www.nikkei.com/article/DGXNASHC08038_Y2A600C1000000/)
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