川崎市営地下鉄、事実上凍結か?
川崎市は細長い市。人口は140万人を超えているので政令指定都市になっていますが、正直言って東京都と横浜市に挟まれているため、単なる巨大な衛星都市と言えます。
そういう細長い川崎市。東京と横浜を結ぶ鉄道は多数通っていますが、市を貫くのはJR南武線ぐらいです。そこで川崎市は市内を縦貫する鉄道を古くから考えていました。1960年代から構想があり、2001年には新百合ヶ丘-元住吉間(15.4キロ)の事業許可を国から受けましたが、採算が見込まれないとして2005年に事業廃止届を提出していました。その後、川崎市は計画を変更して2009年12月に「新技術による川崎縦貫鉄道整備推進検討委員会」に議論を依頼しました。報告書は5月28日に出され、30日に公開されました。しかし、その報告書によれば、採算性の確保が厳しく、採算の確保のためには新技術の実用化を待たないといけないため、開業したとしても2025~2030年ごろとなります。しかし、そのころには市の人口が減少に向かうと考えられているので、川崎縦貫高速鉄道(市営地下鉄)構想は事実上凍結される可能性が高まることとなりました。
川崎縦貫高速鉄道は初期整備で新百合ヶ丘-武蔵小杉間、2期整備で武蔵小杉-川崎間を建設するものでした。初期整備区間は16.7キロで事業費を4336億円、輸送需要を1日20.4万人と見込んでいました。
しかし、この初期整備区間について、(1)南武線のラッシュ時での快速運転実施 (2)横浜市営地下鉄ブルーラインの新百合ヶ丘への延伸 (3)小田急多摩線と直通運転せずに自前で車両基地を確保 という厳しい条件を設定した場合、事業費は4855億円に膨らむ一方、輸送需要は1日約18.6万人に減り、累積赤字を解消するのに約80年かかると計算されました。当然ながら費用対効果は大幅に減少します。
そこで次に考えたのが、新技術を使ってコストの縮減を図ること。動力を蓄電池か燃料電池にします。これにより架線が不要となり、その分だけトンネルは小型化できるのです。しかし、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の想定を基にすると、蓄電池の実用化は2020年ごろ、燃料電池の実用化は2030年過ぎになると考えられています。このような新技術を使うと最大1120億円(26%)のコスト減が見込まれますが、新技術の実用化を待って鉄道をつくるため開業が遅れます。開業する2025~2030年ごろには、川崎市の人口が約151万人でピークを迎えます。どうにもならないのが現状のようです。
(追記1)
しかし、阿部川崎市長は19日の定例記者会見で、(市議会において川崎市営地下鉄の計画を撤回するよう求める意見が寄せられていましたが)計画を存続させる考えを明らかにしました。
(追記2)
地下鉄建設を公約としていた阿部川崎市長でしたが、2013年1月28日の記者会見で、経費圧縮につながる新技術の開発には時間がかかるとして、事実上断念することにしました。2001年度に設けられた高速鉄道事業会計は2012年度末で閉鎖します。これまで高速鉄道事業会計や一般会計から出ていた調査・設計費や市職員の人件費は約40億円。2012年度末の時点では国や金融機関からの借入金約21.4億円が残る見込みです。これは2013年度予算で一括償還します。
(参考:Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120531-00000012-maiall-bus_all、毎日jp http://mainichi.jp/area/kanagawa/news/20120620ddlk14010287000c.html、YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130129-OYT1T00069.htm)
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