沖縄鉄軌道、どのルートでつくっても大幅な赤字
戦争で鉄道が破壊され、那覇市内にモノレールが開業するまでは、沖縄は鉄道のない島でした。しかし、沖縄本島の南部は人口密度の高いところ。鉄道構想が浮かんでは消えています。
そんな中、内閣府は6月15日、沖縄に鉄軌道を導入したときの事業採算性などの予測調査結果を発表しました(調査は2011年度に実施しています)。糸満と名護とを結ぶ南北縦断路線((1)県道251号線(パイプライン)、うるま市経由 (2)国道330号、うるま市経由 (3)読谷村経由 の3パターンがあります)を基本に、那覇と那覇空港、南城市、八重瀬町とを結ぶ支線、名護市と本部町とを結ぶ支線をつくります。このようにして、(1)(2)(3)の南北縦貫路線のほかに、(1)と4支線をすべてつくった場合、(1)と那覇空港への支線をつくった場合の5つのモデルルートを設定しました。南北縦貫路線は普通の鉄道のほかにトラムトレイン(専用軌道の路面電車)を想定しています。支線はLRTを前提としています。5つのモデルルート、鉄道とトラムトレインの2つのケースを組み合わせた(5×2=)10のケースで調査しました。その結果、10すべてのルートで毎年赤字が発生し、開業40年後の累積赤字は2900~7100億円にもなりました。大雑把にいえば、トラムトレインでつくれば、輸送人員は1割ほど少なくなりますが(とは言っても、一番輸送人員が少ない、読谷村経由で南北縦貫路線のみをつくった場合でも、1日75700人もいます)、累積赤字は半分ほどになります。
概算の事業費(地形、地質、道路交通の状況から地上、高架、地下を併用しています)は鉄道で7300~10600億円、トラムトレインで4900~7200億円。鉄道でもトラムトレインでも、読谷村経由で南北縦貫路線だけをつくった場合が最も安く、4支線もつくった場合が最も高くなります。第三セクター方式を前提としており、概算事業費の国負担額は既存の補助制度を参考に算出しています。需要予測は2011年度の調査結果を基にしています。整備効果は那覇-名護間で最大40分程度の短縮。高速バスで95分かかっていたところが、55分で結ばれます。また、那覇中心部から30分以内の駅周辺の夜間人口は約3~4倍になると見込まれます。
40年以内に累積赤字を解消させるには、鉄道では需要予測の2倍以上、トラムトレインでも2倍程度の需要が必要です。沖縄南部は人口密度が高く、需要予測でも最低7.5万人の利用が見込まれ、鉄道がその能力を発揮できるところなのですが、それでも厳しい結果です。沖縄市以南あたりの南部に絞って再計算するとか、沖縄振興策の一環と割り切るとかしないと成り立たないでしょう。
(参考:琉球新報ホームページ http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-192654-storytopic-4.html)
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Comments
>読谷村経由で南北縦貫路線だけをつくった場合が最も安く、
この場合でも、地形的に山が海に迫り、平地が少ないから、鉄道を新たに敷くにしても、トンネルを多数作る必要がありそうです。
また、嘉手納基地の存在もネックとなりそうです。
>鉄道がその能力を発揮できるところなのですが、それでも厳しい結果です。
沖縄では、路線バスは時間通りに来ないことが多く、鉄道は必要性は強く感じます。
>沖縄振興策の一環と割り切るとかしないと成り立たないでしょう。
普天間基地の辺野古移設の見返りに、多額の国庫補助を投入するしかないでしょう。
Posted by: かにうさぎ | 2012.07.02 09:41 PM
かにうさぎ さん、おはようございます。
* この場合でも、地形的に山が海に迫り、
確かに、名護に近くなればなるほど、山がちになりますから、トンネルを多用しそうですね。
* 沖縄では、路線バスは時間通りに来ないことが多く、
もともと需要が多いので、バスでは厳しいのでしょう。
* 普天間基地の辺野古移設の見返りに、
現状のように基地問題がこじれると、そのような方法での国費投入も難しくなります。
Posted by: たべちゃん | 2012.07.03 04:51 AM