JR東海、リニアの大阪早期延伸を拒否
JR東海が建設する予定のリニア中央新幹線は、まず2027年に品川-名古屋間のみができ、その後20年近く経った2045年になってようやく名古屋-新大阪間が開業し、全線開通します。
当然ながら、関西方面を中心に一気に全線を完成させることを望む声が強くあります。しかし、JR東海の山田社長はその声に対して、強く否定しています。いったん名古屋までつくって、その後経営体力が回復した後で大阪までの全線開業をする(「二段階方式」)という、従来の考えを改めて強調しています。
リニアにとって最悪の選択は、永久に名古屋止まりになってしまうことです。名古屋止まりになったときの収益の悪さはすでに証明されています。大阪まで開業しないと、JR東海が期待している、航空機からの転移が進まない危険性があります。名古屋での乗り換えの面倒さが嫌われる危険性があります。どんなに名古屋での乗り換えを工夫しても、乗り換えの手間がいるということそのものが大きなバリアです。JR東海は国や自治体の力を借りずに、全事業費を民間資金で賄うようですが、それにこだわって大阪までできなかったら何の意味もありません。
確かにJR東海が民間からお金を借りて大阪まで一気につくるのは難しいでしょう。適正な利子が払えないからです。こういうときこそ、政府の出番です。整備新幹線のように半永久的に賃料を払い続けるような方法はともかく、15~20年程度の無利子貸し付けは検討に値すべき案でしょう。そもそも、いくら自前の金でつくるリニアといえども、国や地方自治体との交渉なしでつくるようなことはできません。昔のように鉄道が投機手段として成り立ったころならともかく、今は公共的な要素が非常に強いものです。全く自分だけでできるようなものではありません。
名古屋止まりになってしまっては元も子もありません。一時的に資金を借りてでも大阪まで確実につくることが大切なのではないでしょうか?
(参考:朝日新聞7月10日朝刊 中部14版)
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Comments
sankeibizの記事を読むと、JR東海には「政府の出番」を出しゃばりとしか解釈しようがない体質が強固にあるようにも見えます。人口の大幅減少をタテにリニア反対論も出てきた今、もしかするとこのままリニアが中止になるかもしれません。在来型新幹線をもう一本作るか、現行の一部区間(鈴鹿越えとか)を別ルートにする(JR東海が国や自治体に頼らずとも自前で資金を調達でき、採算も取れるという前提を立てた上で)かといった発想の根本的転換が必要になるかもしれません。JR東海が何人の横槍(自治体も"法人")も受けず自前でやるという姿勢を貫くのであれば、リニアに拘ることもないでしょう。
Posted by: 日置りん | 2012.07.17 11:10 AM
日置りん さん、こんばんは。
* 在来型新幹線をもう一本作るか、現行の一部区間(鈴鹿越えとか)を
在来型の新幹線の増設については、以前( https://tabechan.cocolog-nifty.com/note/2010/11/post-85e8.html )にも書いたとおり、確かに建設費は小さいですが、収益はあまり見込めません。部分的な複々線化については、試算も何もないでしょう。
* JR東海が何人の横槍(自治体も"法人")も受けず自前でやるという
何らかのかたちで中央政府や地方自治体の協力は不可欠であり、自力だけでは計画しているリニアもできません。単なる思いあがりです。
Posted by: たべちゃん | 2012.07.18 01:53 AM
>適正な利子が払えないからです。こういうときこそ、政府の出番です。
国に金がない場合、安直な方法だが、関空と伊丹空港統合のように、他の会社と合併させるといった方法もあります。
JRの場合、首都圏通勤路線を抱えるJR東日本と合併することで、建設原資を捻出することです。
ただ、毎日の通勤混雑に耐えている利用者からは、JR東日本の収益が通勤混雑緩和投資に向かわず、リニアに充てられるのでは不満が出るでしょう。
JR東日本も上場している以上、単に救済負担を負うだけの合併なら、株主から訴訟を起こされる可能性もある。
Posted by: かにうさぎ | 2012.07.22 11:49 AM
かにうさぎ さん、おはようございます。
* 国に金がない場合、安直な方法だが、関空と伊丹空港統合のように
関空と伊丹の統合は、伊丹の存在が関空に悪影響を与えているからできるものであって、そういう関係がないJR東日本とJR東海の統合はできないでしょう。
JR東海にとっても、仲が悪いといわれるJR東日本に統合されるのはやりたくないはずです。
Posted by: たべちゃん | 2012.07.23 06:31 AM
>JR東海にとっても、仲が悪いといわれるJR東日本に統合されるのはやりたくないはずです。
JR東海と東日本では、統合しても余り得る物はなさそうですが、JR東海と西日本ならメリットがあるでしょう。
JR西日本にしても、リニアが早く大阪まで延びてくれれば、山陽新幹線の利用増に繋がる。
また、東海道新幹線の余裕ができれば、JR東海も16両フル編成に拘る必要がなくなる。
山陽区間では需要に応じた短編成で、きめ細かいダイヤにできる。
また、北陸新幹線は米原経由で繋げることが可能になり、会社が違うといったつまらぬ理由で、建設費のかかる小浜経由にしなくてよい。
JR東海にしても、名古屋開業では、関西方面からの利用者の大半が現新幹線を利用してしまうのでは、16両フル編成を維持せねばならない。
東名間ではリニアにより、利用者は減少しても、名古屋-新大阪間では現輸送力を維持せねばならないからだ。
名古屋-新大阪間だけのために、東京から博多まで16両で走るという無駄をなくすためにも、新大阪までの一括開業が望ましい。
そのためには、JR西日本と統合し、オールジャパンで支えることも検討すべきだろう。
Posted by: かにうさぎ | 2012.07.27 10:17 PM
かにうさぎさん、おはようございます。
* JR東海と東日本では、統合しても
JR西日本と合併するほうが、JR東日本よりは抵抗は少ないでしょうが、それでも難しいでしょう。
そもそも、東海道新幹線をJR東海に与えることが適切だったかどうかは難しいところでしょうが。ただ、北陸新幹線乗り入れのために、米原以西をJR西日本に売却することはやってもよさそうです。
* リニアが早く大阪まで延びてくれれば、
リニアが名古屋止まりだと中途半端なままです。大阪まで一刻も早く開通させることが、いびつな状態を解消することができます。
Posted by: たべちゃん | 2012.07.28 06:11 AM
週刊ダイヤモンド8/4号を買ってきました。
JR東海は税金を入れれば建設・経営を自由にできない(記事本文・山田社長インタビュー)こともかなり問題視していますが、税金を入れる→整備新幹線のような枠組みができる、とすればリニアの収益が自分の手から国に持って行かれるだろう、という危惧の方が自力建設に拘る大きな要因と見ました。
そちらの方は全く考えていませんでしたが、落とし所が難しそうです。
一時的に名古屋止まりになっても経営に大きな影響を与えないようにかなり保守的な試算をしているらしく、二段階建設は梃でも動かないどころか関西財界からの資金という梃を差し挟ませる余地があるのか、これも想像以上に難しそうです。嘴無用、と言われれば返し辛くなりますし、最悪金だけ取られて2045年全線完成が変わらないことも充分あり得ます。
別の記事で整備新幹線の国負担のうち700億円が建設国債で将来国民に降りかかるとか、法政大五十嵐敬喜教授の「人口が減るのに交通インフラ整備が必要なのか」というコメントが載るとかツッコミ所もありましたが(せめて?単位が2桁はね上がらなきゃ説得力がない、2050年で9708万人の予測はもう"多い"に入らないのか)、それはまた別の話ですね。
Posted by: 日置りん | 2012.08.06 05:35 PM
日置りん さん、おはようございます。体調が体調なので簡潔に書きます。
* JR東海は税金を入れれば建設・経営を自由にできない
リニア計画も国の計画がベースとなっていて、純粋に民間ベースのものではありません。単なるJR東海の思い上がりです。
なお、補助の方式については整備新幹線とは別の方法を使うとよいでしょう。(期間を限った)無利子貸付や利子補助みたいなスキームが望ましいです。
* 一時的に名古屋止まりになっても経営に大きな影響を
社会情勢がよければそれでも何とかやっていけますが、厳しくなれば大阪まで全線伸ばす財源を確保することがそれだけ難しくなります。
変なプライドを捨てて、大阪まで開業することが望ましいでしょう。
* 別の記事で整備新幹線の国負担のうち700億円が
道路の負担のほうがはるかに大きいですし、幹線の鉄道インフラは未だに過小です。
Posted by: たべちゃん | 2012.08.07 07:18 AM