JR東日本、常磐緩行線にCBTC導入へ
現在の列車制御システムは、信号機や自動列車停止装置(ATS、ATC)、通信ケーブルなど膨大な数の地上設備で構成されています。これらについては日常的な点検が必要なため、鉄道会社は大量の保守要員を抱えています。現行のシステムは多くの人の努力によって高い安全水準が保たれていますが、コスト負担が大きいことが欠点です。
そこでJR東日本は、常磐緩行線(綾瀬-取手間)に2022年までに無線列車制御システム(CBTC)を導入することを検討しています。JR東日本は共同開発を行う企業の応募を15日で締め切り、2013年末までに正式に共同開発を行う企業を最終決定します。常磐緩行線が選ばれたのは、同じような通勤電車ばかりが走る路線で、CBTCに対応する車両の数が少なくて済む、というメリットがあると思われます。常磐緩行線は東京メトロ千代田線と直通運転していますが、それはATACSを導入している仙石線(あおば通-東塩釜間に導入、仙石線の電車は東塩釜以遠にも乗り入れます)と同様でありますので、問題にはならないのでしょう。従来のATSなどと併用することになります。
CBTCは無線を通じて、列車の位置把握などの運行管理から、自動運転、自動停止までを行うことができるものです。CBTCは海外の都市鉄道で急速に採用が進んでいるシステムですが(ただ、常磐緩行線ほどの過密ダイヤの大規模通勤路線での導入事例はないようです)、国内で導入の動きがなく、常磐緩行線が最初になると思われます。JR東日本はすでに似たようなシステムとして、仙石線で自社が開発したATACSを採用していますが、首都圏の輸送システムの高度化を進めるにあたり(現在、仙石線で導入中のATACSは、2018年までに埼京線に導入するようです。その後、首都圏全域展開を目標にするようです)、世界的にも普及しているCBTCも検討することとしたようです。
CBTCは地上の設備が不要となり、保守点検費用を大幅に削減することが可能になります。人口が減少すると、いくら首都圏の鉄道といえども利用客は長期的には減る傾向になると想定されています。しかも、保守作業を行う、工学系の専門知識を持つ人材も減っていきます。CBTCのような技術はほかの鉄道会社に普及する可能性があるでしょう。
(追記)
JR東日本は2013年12月20日、CBTCをフランスの防衛・航空大手であるタレスから導入する方針であることを発表しました。年明けから契約締結作業に入り、合意すればCBTC導入にかかわる設計作業をタレスに委託します。約1年間の作業期間でJR東日本が求める機能を実現することができると判断すれば、正式にタレスに依頼します。
(参考:JR東日本ホームページ http://www.jreast.co.jp/order/pdf/introductionCBTC.pdf、日刊工業新聞ホームページ http://www.nikkan.co.jp/news/nkx1120120710cean.html、YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120716-OYT1T00037.htm、総務省ホームページ http://www.soumu.go.jp/main_content/000070069.pdf、日本経済新聞ホームページ http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD200LX_Q3A221C1TJ2000/)
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