井笠鉄道、倒産
かつて鉄道事業を行い、1971年に廃線になってからも岡山県西部及び広島県東部でバスを運行していた井笠鉄道(笠岡市、資本金1.5億円)が、10月12日に債務整理を弁護士に一任し、10月末をもって事業を停止することになりました。負債額は32億3600万円です。
井笠鉄道は路線バス、貸切バスの運行のほか、不動産賃貸事業も行っていました。しかし、マイカー通勤の増加、地域の過疎化、井原鉄道の開通などで乗客は大幅に減少しました。赤字路線の統廃合、遊休資産売却、経営多角化などの対応をとりましたが、中小企業の参入が相次いだため価格競争が起こり(貸切バスのことでしょうか?)、2012年3月期の売上高は約9億円にまで減少し、反対に燃料価格は高騰していたため大幅な赤字となっていました。この間、不採算路線を維持するための岡山県の補助金が2007年度2122万円だったのが、急激な行財政改革の影響で2011年度には219万円に減少しました。県の補助金の削減分は市町が独自に穴埋めしているようですが、市の負担が増えるわけで市も厳しい態度を足らざるを得なくなります。借入金負担が資金繰りを圧迫する状況が続き、乗客数が増えるなどの経営好転の見込みも立たないことから、事業の継続を断念するに至りました。全従業員158人には10月末で解雇すると通知し、中国バスや北振バス(井笠鉄道の子会社)に再雇用を依頼しています。
路線バス71系統のうち、一部主要路線については、中国バスなどが11月以降、当分の間、運行を続ける予定です(どの路線を継続するかは今のところ明らかになっていません)。それ以外の路線については10月末で運行を終了します。高速バス3系統(「ローズライナー」など)は11月以降、中国バスにおいて運行を続ける予定です。貸切バスは11月1日以降、中国バスまたは北振バスによる運行を予定しています。
一番利用者にとって影響が大きいのは、定期券・回数券・バスカードの取り扱い。10月31日までしか使えません。払い戻しすることもできないようです。なお、ICカード「PASPY」については、「PASPY」が利用可能なほかのバス会社で引き続き利用できます。
(追記1)
この井笠鉄道の倒産の話は急に出てきましたが、実は今年5月から事業廃止に向けての協議を始めていました。8月には運転資金の欠乏から従業員への給与遅配が発生し、危機的な状況になりました。そんな中、何とか事業移管の目途が立ち、10月12日の突然とも思える発表になったのです。
なお、東京商工リサーチによれば、井笠鉄道は2010年3月期まで黒字決算でした。
(追記2)
井笠鉄道は11月2日、岡山地裁に破産手続きの開始を申し立てました。
(参考:井笠鉄道ホームページ http://www4.ocn.ne.jp/~ikasa/pdf/final01.pdf、中国新聞ホームページ http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201210130045.html、http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201210140022.html、http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201210140030.html、帝国データバンクホームページ http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3674.html、東京商工リサーチホームページ http://www.tsr-net.co.jp/news/flash/1222352_1588.html、山陽新聞社ホームページ http://www.sanyo.oni.co.jp/news_s/news/d/2012110220344836/)
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