スキーバスなど夜間の貸切バスもワンマン運転の規制強化へ
4月に群馬県の関越道で乗客7人が死亡したツアーバスの事故の後、安全性に問題のあるツアーバスへの規制を強めています。
運転手1人の夜間運行距離を670キロから400キロにして、それを上回る場合は運転手の交代を義務付ける国交省の新基準が7月20日から実施されました。これにより、これまで運転手1人でよかった東京-大阪、金沢、盛岡間は2人体制を採らないといけません(ただし、400キロ以下の東京-名古屋、新潟、仙台間は1人でも運行できるので、穴は大きいです。これらの区間でも2人体制を迫られる、300キロ以下にしないといけないでしょう)。ツアーバス最大手の「ウィラー・アライアンス」は8月1日から平均200円の値上げを行い、人件費などの増加に対応することにしました。人件費などの増加に対応できず、撤退した会社も多いです。国交省によると、これまでツアーバスを行ってきた349社のうち、7月時点で118社がすでに撤退していました。撤退する会社が多く、夏休みなどの繁忙期に手伝ってくれるバス会社を確保できず、増便できないということもあります。
7月31日には、事故前からそういう話はありましたが、「新高速乗り合いバス」制度を始めました。新制度では、旅行会社を含む高速バス会社が、貸切バス会社に運行を委託する場合は国交相の許可が必要になります。委託した契約を下請けに回すなどの仲介は禁止されます。手数料が差し引かれて人件費や車両整備費にしわ寄せがいく危険性があるからです。これまでツアーバスの企画や乗客の募集をしてきた旅行会社が事業を続ける場合には、2013年7月までに乗り合いバスの事業許可を取得させ、安全運行の責任を明確にします。
ツアーバスで問題になるのは、停留所の問題。ツアーバスはこれまで路上などで乗客を乗降させていましたが、新制度ではそういうことはできません。停留所が要ります。しかし、都心には適切な場所が少なく、ツアーバス業者は国交省にその対策を求めていました。そこで国交省が出した答えが、深夜や早朝には使われていない既存の路線バスの停留所を、ツアーバスにも配分するということ。今月下旬からターミナル駅ごとにツアーバスや路線バスの業界団体、駅前広場の地権者のほか、警察や自治体も参加する協議会を地方運輸局の主催で開催し、路線バスの停留所をツアーバスが使えるようにします。運行実績に応じて、バス停を使うことのできる時間帯の枠を配分します。調整が難しい場合にはバス停の新設を検討します。今年度末までに調整を行います。
規制の強化がされるのは、ツアーバスだけではありません。夜間に運行するスキーバスなどの貸切バスについても、12月1日から新しい規制が適用されます。夜間のスキーバスのほか、車中泊を伴う観光バス(東京ディズニーランドへのツアー?)、甲子園への応援バスなど2~4時をまたいで運行するバスに適用されます。約4500社の貸切バス業者すべてに適用されます。規制はツアーバスと同様、400キロを超える区間については原則として交代運転手の配置を義務付けます。ただ、ツアーバスは休憩時間を含めて乗務時間が10時間を超える場合も交代運転手の配置を義務付けていますが、スキーバスなどでは低速で山道や雪道を走り、乗務時間が長くなることもあります。そこで、スキーバスなどについては、乗務時間での規制はありません。また、スキーバスや観光バスでは目的地への到着時間を調整したり、観光地で長時間待機するケースがあります。そのため、国交省の新しい基準でも、仮眠できる1時間以上のまとまった休憩があったり、連続運転時間がおおむね2時間以下などの条件を満たせば、500キロまでワンマン運転ができます。バスの規制については、2013年1月までに高速路線バス、2013年3月末までに昼間運行する貸切バスについても新しい基準をつくる方針です。
車両についても安全性を高めるための規制がなされます。2014年11月以降に生産される12トンを超える大型バスについても、前方の障害物(車や壁)に衝突するのを感知して作動する自動ブレーキの装置(警報音も鳴ります)を義務付ける方針です(現在生産中のモデルは2017年9月以降の生産から義務付けられます)。ただし、路線バスについては急ブレーキをかけると立っている人が転倒する恐れがあるため、対象外としています。国交省によれば、大型トラックの場合(大型トラックについても、2014年11月以降生産の新車について、自動ブレーキの義務化を決定しています)、自動ブレーキによって衝突時の速度が20キロ下がれば、追突された車両の死者数を9割減らすことができるようです。すべての車両で自動ブレーキを装着すれば、2009年に4773件あった死亡事故のうち、350件を減らすことができたようです。
(参考:毎日jp http://mainichi.jp/select/news/20121105k0000e020128000c.html、http://mainichi.jp/select/news/20121102k0000m040082000c.html、http://mainichi.jp/select/news/20121111k0000e020139000c.html、MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120730/plc12073018460009-n1.htm、http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120720/plc12072007220005-n1.htm)
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