自動車業界、自動車取得税・自動車重量税の廃止を要求
自動車業界の労使は、自動車取得税と自動車重量税を消費税を引き上げるまでに廃止することを求めています。
自動車取得税は、50万円を超える自家用車を買ったときにかかる地方税で、自動車重量税は自家用車の購入時と車検時にかかる国税です。2012年度の税収は自動車取得税が約2000億円、自動車重量税が約7000億円です(自動車にかかる税金は合計7.75兆円です。大雑把に言うと購入時にかかる税金(消費税など)が0.9兆円、保有にかかる税金(自動車税など)が2.45兆円、燃料にかかる税金(揮発油税など)が4.4兆円です)。2つとも道路特定財源でしたが、2009年に一般財源化されたため、自動車業界は課税の根拠がないとして廃止を求めています。
自動車業界が減税を求めるのは、国内での需要を増やすことによって国内生産を維持するため。車への税負担が外国に比べて極端に重いとも主張しています(ただし、比較の対象がアメリカなので、説得力はあまりありませんが)。国内新車販売数(軽自動車を含む)の推移をみると、消費税が5%に上がった1997年度に大きく落ち込み、その後は600万台程度で安定していましたが、2005年度から再び落ち込み、リーマン・ショックのあった2008年度以降は4年連続で500万台を割り込んでいます。消費税が10%に上がれば、さらに減少する可能性が高いでしょう。もっとも、車が売れなくなったのは様々な要因があり、減税したから直ちに売れる、というものではありません。若い人が減っているという、根本的な原因もあるのです。
愛知県など自動車産業が盛んな8県は自動車取得税・自動車重量税の廃止を求めていますが、貴重な財源がなくなることに対する反対論も根強く、総務省の地方財政審議会も自動車取得税と自動車重量税の廃止は不適当だとしています。
道路はつくればおしまいではありません。長く使い続けていくためには補修もいります。NEXCO3社(東日本、中日本、西日本高速道路会社)は11月1日、道路の老朽化対策に関する有識者会議を発足させることを発表しました。首都高速などの都市高速同様、古くなった道路が増えているのです。一般道でも話は同じです。補修費はどんどん増えていくと考えられます。選挙対策で減税ばかりの甘い話ができるわけではないのです(政権を取る気がないならそれでも構わないですが)。
どうしても自動車取得税・自動車重量税の廃止をしたいのなら、代替財源を探す必要があります。ちょうどいいのが近くにあります。揮発油税等の増税とセットにすればよいのです。車を使えば自動的に負担が増える仕組みになります。(消費税を10%に上げる)消費増税法にも自動車取得税・自動車重量税をグリーン化の観点などから見直すことがうたわれています。車の利用に応じて税金をかけるのは、まさにこの観点に沿ったものと言えます。車の所有・保有にかかる税金を軽減しつつ、車の利用を抑制することにもつながり、環境にも良いことでしょう。
(追記)
政府・自民党(記事を書いたときと違い、自民党政権に戻っています)は、消費税が10%に上がる2015年10月までに自動車取得税を2段階で廃止する方針です。8%に上がる2014年4月の段階では環境対応車を優先して軽減を図り、10%に上がる2015年10月に全廃します。自動車取得税は全額が地方自治体の財源となり、年間税収は約2000億円ですが、代わりになる財源はまだ決まっていません。
なお、自動車重量税は継続しますが、2014年度の税制改正協議で環境対応車を優遇するかたちで見直します。これが道路特定財源となるのです(後に撤回されましたが、額面通りには受け取れません)。地方に無駄な道路をつくる仕組みが復活するわけです。
今必要なのは地方の道路ではなく(最初から採算が取れないことが分かっているため、高速道路も無料の新直轄方式でつくられます)、適切な補修がなされず老朽化しているインフラ。次世代に借金と壊れた道路を残しても意味はありません。
(参考:朝日新聞2012年10月30日朝刊 中部14版、2013年1月24日朝刊 中部14版、2013年1月25日朝刊 中部14版、YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20121101-OYT1T01135.htm、時事ドットコム http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013012300176)
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