北陸線特急、富山まで乗り入れると並行在来線会社年間30億円収益悪化か?
北陸新幹線が2014年度に金沢まで開業した段階で、JR西日本は「サンダーバード」など関西・名古屋方面からの特急を金沢止めにする方針です。富山へは、金沢駅で新幹線に乗り換える必要があります。すぐに接続の新幹線があっても10分程度しか短縮しないのに、階段の乗り降りがいる面倒な乗り換えを迫られます。
当然ながら、富山県内では、「サンダーバード」等の運行継続を求める声が強いです。新幹線開業により、金沢以東は時速130キロ運転できず、特急が運行を継続したとしてもスピードダウンすると考えられますが(九州新幹線のケースでも、鹿児島線鳥栖以南の線路規格が落とされたようです)、少々遅くても直通サービスはありがたいものです。
ところが、市町村や経済団体の担当者でつくる県並行在来線対策協議会の幹事会で富山県が示したものによれば、現在富山-金沢間で走っている「サンダーバード」「しらさぎ」23往復をそのまま並行在来線会社が運行を続けた場合、年間30億円の収益悪化をもたらすということです。内訳は線路使用料が15億円、運行経費が15億円です。
富山県の試算では、並行在来線会社の年間収入は約50億円。その半分の約25億円は、貨物列車の線路使用料(これは結局のところ、国費でカバーしているだけです)で賄われます。線路使用料は線路を使う列車の割合で決まりますので、特急の運行を続けるとその分だけ貨物列車の割合が低くなり、結果として線路使用料収入が減るというのです。もし、特急が現行の23往復(「サンダーバード」「しらさぎ」の合計)走るとすると、貨物列車の線路使用料は年間15億円減り、3割の減収になります。さらに、特急を運行することによって年間15億円の経費がかかるということです。
富山県は今年度中に並行在来線会社の経営計画を取りまとめる予定ですが、厳しい現実とも言えます。旅客事業は大赤字で、貨物列車の線路使用料に頼った経営計画なので、新幹線が開業しても普通列車サービスの充実はあまり望めないかもしれません。もっとも、ほかの並行在来線会社も貨物列車の線路使用料にはかなり頼っていますが。
すべての特急の富山乗り入れは望めなくても、接続する新幹線がない早朝や夜間を中心に乗り入れを継続するとか(新幹線で代替できない早朝、深夜の5往復のみに絞れば、約10億円の収支悪化にとどまります)、富山直通が全くなくなる大阪からの便を優先させる(名古屋からは「ひだ」が少ないながらもあります)などの戦略をとる必要があると思われます。朝夕のラッシュ時なら、快速扱いにして長編成を活かした輸送力列車とすることもできます。その分、設備投資を抑えることもできます(もともとある程度はJR西日本から新型車両を格安で買う予定でしたが)。究極の対策は、敦賀までの早期開業(+フリーゲージトレインの導入)でしょう。
(参考:チューリップテレビホームページ http://www.tulip-tv.co.jp/news/detail/?TID_DT03=20121112170548、朝日新聞ホームページ http://mytown.asahi.com/toyama/news.php?k_id=17000001211130003)
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