東海道新幹線、4月から大規模改修開始
JR東海にとって、東海道新幹線1本のみに頼っている経営構造となっています。JR東海の収入の約8割を占め、1日約39万人が利用しています。
その東海道新幹線も来年で開業から50年を迎えます。日々多数の列車が高速で走りぬけていくので、土木構造物の痛みは相当のものです。日ごろの点検・補修はきちんと行っているようですが、問題は経年劣化による大規模な設備の更新。これまでJR東海は将来大規模な設備の更新が必要だと考え、2002年に引当金積立計画について国交相の承認を受け、2002年10月からの15年間で5000億円(毎年333億円)を積み立て(積み立てた金額は租税特別措置法の規定で課税所得から減算されます)、2018年から大規模改修に着手するという計画を立てました。東海道新幹線515キロのうち、鉄橋、コンクリート高架橋、トンネルの合計240キロが改修の対象となります。鉄橋は233か所、トンネルは66か所です。積み立てた引当金は2018年4月から10年かけて毎年500億円を取り崩します。取り崩した金額は租税特別措置法の規定により課税所得に加算します。それとともに、同じく2002年に開設した小牧市の研究施設などで研究開発を続け、土木構造物の延命化に有効な新工法(以前に書いた、この記事のことでしょうか?)を見つけました。橋の架け替えなどの大規模な改修はせず、既存設備を補修して同等の強度を確保するのです。
そこで、JR東海は新工法を活用して、当初の計画から5年前倒しして4月から大規模改修を始めることになりました。大規模改修は早ければ早いほどいいのです。まず土木構造物の経年による変状の発生自体を抑止することで構造物の延命化を実現する対策(「変状発生抑止対策」)を取り、その後の構造物の状態によっては部材取替等の全般的な改修(「全般的改修」)を行います。新工法を採れば、工事費が大幅に下がるとともに(当初11000億円と見込んでいたのが、7300億円ほどに減ります)、工事に伴う列車の運行への支障も大幅に低減できます。当初の計画だと大規模な工事が行われるたびに1~2日の全面運休が必要でしたが、新工法では早朝の徐行運転程度で済みます。国鉄時代の1974年度から1981年度に48回行われた「若返り工事」のように、運休を伴うのではないのです。なお、大規模改修引当金の積み立ては3月で終了し(10.5年積み立てることとなるため、引当金は3500億円となります)、4月からの10年間で毎年350億円ずつ取り崩します。新幹線開業当初、構造物の耐用年数を70~80年としていましたが、2000年以降、トンネルでひび割れが見つかるなど劣化が進んでいました。JR東海はこの大規模改修により、耐用年数が数十年延びるとみています。
(追記)
JR東海としては、阪神大震災クラスの直下型地震が起きても、時速270キロ運転するかはともかくとして、発生から3日以内で運転を再開することができるようにしているようです。
また、津波対策に関してですが、東海道新幹線で海辺を走るのは、浜名湖周辺ぐらいです。ただ、今のところ具体的な対応はとってはおらず、行政からの津波想定が出るのを待っている状態のようです。暫定的なものでも、早急な対応が望まれます。
(参考:JR東海ホームページ http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000017278.pdf、http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000017269.pdf、日本経済新聞ホームページ http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXNASDD290HP_29012013TJ1000、朝日新聞1月30日朝刊 中部14版、Sankei Biz http://www.sankeibiz.jp/business/news/130205/bsd1302050501001-n1.htm、朝日新聞ホームページ http://www.asahi.com/national/update/0418/TKY201304180492.html)
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Comments
東海道新幹線改修前倒し、しかも運休不要となれば相当大きなニュースのはずですが意外と注目されていないようです。
この分では「改修だけで地震津波に対応できるのか?」という議論は起きそうにないですね。浜名湖付近は線路そのものの掛け替えが必要との議論もあるようですが。
Posted by: 日置りん | 2013.02.03 08:49 AM
日置りん さん、こんにちは。
* この分では「改修だけで地震津波に
ルートの変更は難しいですが、いざというときの避難の方法は決めておかないといけないでしょう。
Posted by: たべちゃん | 2013.02.03 12:07 PM