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山田線のかさ上げに公費投入か?

 東日本大震災直後の津波により、三陸地方の鉄道は大きな被害を受けました。三陸鉄道は2014年に全面復旧する予定で、JRも気仙沼線大船渡線でBRTが運行を開始しています。

 これに対して、山田線には復旧の動きはありません。JR東日本がBRTを導入しようとしたものの、拒否されてしまいました。専用道の区間が短いことと、BRTのまま固定され、鉄路としての復旧がなされないと危惧しているからです。このままでは山田線はBRT化すらされず、何も進展しないままです。三陸鉄道の南北リアス線(震災前の年間利用者は約90万人)が分断されたままとなってしまうのです。

 ここで出てきたのが、山田線のかさ上げに国費を投入する案。経常黒字であることを理由に、これまで一切なかった国のJR東日本に対する支援を行おうとしているのです。津波対策で市街地をかさ上げするなどの都市計画を行うに当たっては、駅や線路もかさ上げする必要があります。都市計画の費用は復興交付金でまかなわれますが、鉄道事業は対象外で、鉄道事業者がお金を調達しないといけません。また、被災した鉄道の復旧費用の半分を国と自治体が補助する制度も、経常赤字の事業者に限られていますので、JR東日本は受けることができません。このままでは、JR東日本が費用を負担しない場合、市街地を通る線路部分だけがかさ上げされないという事態になってしまいます。ただし、補助を受けるためには、鉄道を復旧させることが前提です。せっかく補助金を出したのに、廃線になったのでは、話にならないからです。国は山田線の復旧について、JR東日本に早く態度を表明するよう要請しています。

 しかし、JR東日本としては、単純に話に乗るわけにはいきません。JR東日本は当初、被害が出た沿岸7線の原形復旧の費用を1000億円と見込んでいましたが、実際には高台移転によるルート変更やかさ上げなどの費用も加わり、膨れ上がります。国交省は山田線の復旧費用を約200億円、大船渡線を約500億円、気仙沼線を約900億円と見込んでいます。いくら首都圏の通勤輸送などで儲かっているJR東日本とは言え、厳しい数字です。JR東日本の冨田社長は2日の大船渡線BRTの運行開始記念式典の後に山田線の復旧について発言しましたが、復旧についての明言を避けています。安全な鉄道輸送をどう守るか、地域のまちづくりとの整合性、コスト負担、復旧後の利用者の見通しがキーポイントになるようです。

 地元の思いはともかく、三陸の路線を鉄道として復旧させるのかは難しいところで、JR東日本の態度を非難することはできません。山田線、大船渡線、気仙沼線の各線はいずれの駅も1日の乗降客が1000人以下。赤字路線です。鉄路を復旧させることに国からの補助が出ても、復旧してからの赤字はJR東日本が負担することになります。(三陸とは縁のない人が大半の)首都圏の黒字などで穴埋めすることになります。赤字が出ても地元が負担する三陸鉄道とは違うのです。需要の多い仙石線などは鉄路で復旧することを考えると、(被害が小さいため現ルートのまま復旧できた八戸線を除いて)需要の多寡が鉄路として復旧するかどうかを決める要素になるのでしょう。需要が少なければバスでも十分なのですから。

(追記)
 8日に盛岡市で行われた国交省東北運輸局の第5回山田線復興調整会議において、JR東日本は復旧費を210億円とする概算結果を示しました。このうち、山田線を震災前の状態に戻す費用が140億円で、残り70億円が沿線市町の震災復興計画にある、まちづくりに伴う鉄道のかさ上げや駅舎の移設費用です。JR東日本は(山田線が将来性のない路線であるにもかかわらず)震災前の状態に戻す費用140億円を自らが負担するとしています。つまり、70億円だけを支援すればいいのです。

 そう考えると結構安いです。もっとも、JRは営利企業なので、鉄道として復旧しても赤字を抑えるような消極策が取られ、運賃は安いものの(BRT化された路線とは違って)本数は少ないでしょうが、それは文句が言えないでしょう。
(参考:毎日jp http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130302k0000m040137000c.html、http://mainichi.jp/select/news/20130302ddm003040146000c.html、岩手日報ホームページ http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20130303_6、河北新報ホームページ http://www.kahoku.co.jp/news/2013/03/20130309t31004.htm)

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