投資ファンド、儲けのために路線の廃止を要求
西武鉄道の親会社、西武ホールディングスの筆頭株主は、投資ファンドのサーベラス。32.44%の株式を持っています。しかし、両者は対立関係にあるのです。
前身の旧西武鉄道は、2004年に有価証券報告書の虚偽記載問題で上場廃止になりました。西武ホールディングスの上場は悲願で、2012年12月の東証一部上場を目指していました。その段階で、それまでは協調関係にあった両者が対立するようになったのです。売り出し価格が安すぎるというのです。証券会社が算定したところ、1株あたり1000~1500円としていますが、サーベラスは2000~2500円を狙っているのです。
サーベラスは株価を上昇させるため、企業価値の上昇策を打ち出しました。(1)利用者の少ない山口線、西武秩父線、多摩川線、国分寺線、多摩湖線の廃止 (2)特急料金の値上げ (3)プリンスホテルのサービス料を10%から20%に上げる (4)JR品川駅周辺の再開発計画参加を公表する (5)西武ライオンズの売却を含めた採算性向上の検討 などです。しかし、西武ホールディングス側はこの提案に反発し、主力行のみずほコーポレート銀行も同様の考えを持っています。
そこで、サーベラスは3月11日、株式の公開買い付け(TOB)を行うこととしました。主に外国人株主から株式を買い集め、定款変更や合併などの重要事項について拒否権を発動することのできる1/3超の株式を確保したいとしています。そのうえで、株主総会で委任状を集めることによって、過半数の議決権を確保。自分の息のかかった経営者に交代させ、(目先の利益を確保するための)大掛かりなリストラを行おうとしているのです。
もちろん、サーベラスは投資ファンドですから、儲けを目的にするのは当然のことで、それ自体は否定できません。しかし、あまりにも無茶で、投資家以外のだれの利益にもなりません。路線の廃止案にしても、とても廃止できないレベルの路線の廃止を要求するなど、帳簿以外は見ていない空論です。2010年度の輸送密度(平均通過数量)が1836人の山口線はともかく(しかも山口線は新交通システムのため、お金が余計にかかっている可能性があります)、19158人の多摩川線、21425人の多摩湖線は廃止するには1桁多い数字です。西武秩父線は駅間ごとの通過人員から推定すると、8258人で、廃止するには多すぎます。なお、国分寺線は不明ですが、山口線を下回ることはないでしょう。また、株価向上策の一つにある、JR品川駅周辺の再開発計画参加の公表は、まだ具体化していない話で、詐欺まがいのものです。
(追記1)
サーベラスは、TOB計画を変更するようです。当初(持ち株比率が1/3を超える程度の)最大4%を買い増す予定でしたが、新しい計画では持ち株比率を44.4%に引き上げたいとしています。西武側にサーベラスの提案を拒絶され、経営への関与を強めたいと考えたからだとみられています。
(追記2)
サーベラスによるTOBの結果、保有比率は35.48%となりました。何とか1/3は超えたものの、あまり多くは集まらなかったようです。
(参考:毎日jp http://mainichi.jp/select/news/20130312k0000m020087000c.html、MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130311/biz13031122400023-n1.htm、週刊ダイヤモンド http://diamond.jp/articles/-/33441、「週刊東洋経済 『鉄道』完全解明 2013」 東洋経済新報社、朝日新聞2013年3月27日朝刊 中部14版、時事ドットコム http://www.jiji.com/jc/c?g=ind_30&k=2013040500074、東洋経済ONLINE http://toyokeizai.net/articles/-/13557?page=3、日本経済新聞ホームページ http://www.nikkei.com/article/DGXNNSE2INK01_R00C13A6000000/)
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