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沖縄鉄軌道構想、続報

 以前にも紹介した沖縄本島を縦貫する鉄軌道の話。が2011年度に調査したものとは異なり、沖縄県の調査では採算がとれるものとなっています。その沖縄県の構想について、詳しい情報が入りましたので、紹介します。なお、沖縄県の構想は、利用者数の見込みや収支計算を手堅く見積もったもののようです。報告書にもありますように、「導入可能性」ではなく、早期に導入するための「実現化戦略」を検討するもののようです。

 ルートは那覇空港-名護間の約69キロ。全線複線のようです。那覇空港、那覇(県庁前)、新都心、浦添、普天間、瑞慶覧、沖縄、うるま具志川、うるま石川、恩納前兼久、恩納谷茶、恩納、名護の13拠点を通ります。全線の構造はシールドトンネル51%、山岳トンネル19%、高架橋16%、土工10%、駅部2%で、用地確保の困難さから那覇空港からうるま市の間は地下になるなど、全線の7割がトンネル構造となっています。建設する場所も国道の地下や高架を利用するようです。駅はできるだけ簡素化され、改札口のない「信用乗車方式」の導入を検討しています。

 車両は都営地下鉄大江戸線などで導入されているリニア地下鉄タイプ。最高速度100キロを目指し、1両当たり12メートルの4両編成の電車が走ります。高速運転することはともかく、リニア地下鉄そのものは実績のあるシステムです。リニア地下鉄はトンネル断面を小さくできるため、建設費縮減の効果が高いのです。無人運転や無線信号システム(CBTC?)の導入も検討されています。所要時間は那覇空港-沖縄間約24分、那覇空港-名護間約58分です。最急勾配は駅部が10パーミル、その他が60パーミルで、最少曲線半径は100メートルです。建設費は概算で5600億円です。

 1時間当たりの運行本数は、那覇空港-沖縄間がピーク時12本、オフピーク時5本、沖縄-名護間がピーク時4本、オフピーク時3本です。運賃は20キロまでがゆいレール、それ以上はJR九州の水準に合わせて那覇(県庁前)-沖縄間360円、那覇(県庁前)-名護間1250円としています(ただし、産業振興の観点から上限を500~1000円に抑えることも検討しています)。これらの想定に基づき検討したところ、1日当たりの輸送人員は3.2~4.3万人となりました。

 さて、採算性はと言えば、国や地方公共団体が地上設備と車両を整備、保有し、運行事業者は運行のみを行う公設型上下分離方式の適用を前提に検討しています。また、運行事業者に対しては行政による最低収入保証と、利益が出た場合の行政への還元を組み合わせた、インセンティブ契約を結びます。国鉄分割民営化時のような経営安定化基金の創設も検討しています。1日当たりの輸送人員が3.2万人なら年約8.7億円の赤字、4.3万人なら年約9.8億円の黒字です。また、1日当たり輸送人員が4.3万人なら、たとえ運行事業者が車両を保有しても、11年目に黒字に転換し、14年目には累積赤字も解消します。

 開通時期は工事着手まで10~15年、建設に約10年かかることから、最短でも2033年になります。需要の多い那覇-うるま石川間を先行開業することも検討しています。確かに沖縄県はうるま市あたりまでは人口が密集していますが、それより北の名護方面は人口密度が低く、鉄道の重要性は低くなります。その意味では、うるま石川までで十分とも言えます。

 しかし、普天間の基地を辺野古に移すならば、名護まで鉄道を通さないと話になりません。沖縄北部の振興が不可欠な話となります。そういう意味で、名護までの鉄道構想を掲げているとも言えます。

(追記)
 内閣府は25日、2012年度に行った沖縄鉄軌道の調査結果を発表しました。2011年度に続いて2度目です。

 累積赤字縮減のため、リニアの導入、部分的な単線化、施設の簡素化などの方法でコストを圧縮し、2011年度調査と比べて14%削減を行いましたが、黒字には程遠く、費用対効果は0.4~0.5(前回に比べて0.02~0.06の改善)にとどまりました。

 国と県とで試算の結果が大きく異なる原因はルートが異なる(国は糸満-那覇間などもつくります)こともありますが、根本的なものとしては、国は鉄道会社がインフラの建設・保有から運行までを一手に行う、上下一体方式を前提としていることが挙げられます。上下一体方式を採用する限り、採算を取るのは非常に厳しいです。鉄道には高い公益性があることから考えると、整備新幹線などで実績がある、上下分離方式をベースに検討するのが妥当と言えます。
(参考:レスポンスホームページ http://response.jp/article/2013/06/09/199699.html、タビリスホームページ http://tabiris.com/archives/okinawarai/、琉球新報ホームページ http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-207726-storytopic-3.html、http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-208596-storytopic-3.html、http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-208635-storytopic-11.html、日本信号ホームページ http://www.signal.co.jp/products/railway/technology/report/2010/03/sparcs.php)

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