信楽高原鐵道、台風災害で廃止か?
9月の台風18号による大雨で、鉄橋が流された信楽高原鐵道。信楽高原鐵道の第三種鉄道事業者である甲賀市(経営再建のため、4月から上下分離方式を採用し、甲賀市が第三種鉄道事業者となりました)の中嶋市長は、2日の定例会見で、信楽高原鐵道の廃線も考えていることを明らかにしました。
台風18号による信楽高原鐵道の被害は、杣川鉄橋(延長95.69メートル)の橋脚1本と橋桁2本のほか、線路盤陥没やのり面崩壊、土石流入など24か所あります。このうち最大の被害である杣川鉄橋の橋脚1本の被害額だけで約3.5億円。建設してから80年経って老朽化していますので、安全性を考えると、残った橋脚の点検、改修の必要も出てきます。費用はさらに膨らみます。甲賀市は復旧に少なくとも約3.5億円、架け替えが必要なら10億円はかかるとみています。なお、9月16日から代替バスを運行していますが、運行経費は半年で約4000万円のようです。
鉄道軌道整備法では事業費は国と自治体が25%ずつ、事業主が50%負担することとなっています。ところが信楽高原鐵道は上下分離をしているため、甲賀市は滋賀県の支援を受けられない場合、最大で75%の負担をしなければなりません。もっとも、上下分離をしなければ、甲賀市は負担を免れるかと言えばそうではないでしょう。上下分離する前にも、JR西日本、滋賀県、甲賀市は信楽高原鐵道に対して債権を放棄しましたから。もちろん、廃止という最悪の事態にならないように、甲賀市は国交省や滋賀県に再開支援を要請しています。甲賀市の財政規模で負担できる金額を超える危険性もありますから。
信楽高原鐵道の利用者は年間50万人、8割近くを通勤、通学客が占めています。輸送密度は1077人(2010年度)、JRや大手私鉄では厳しいですが、地元の支援が見込まれる第三セクターとしては危機的な数字ではありません。ただ、復旧させるには費用が必要です。甲賀市は水口町、信楽町などが2004年に合併してできた市で、信楽高原鐵道だけが鉄道ではありません。信楽高原鐵道がなくなっても鉄道のない町になるわけではなく、ある意味冷静な判断ができてしまいます。鉄道は貴生川を経由するため遠回りとなりますが、新名神が開通しているので道路のアクセスは良好です。観光客向けに石山か南草津あたりから短距離の高速バスを運行してもいいぐらいのところです。
存続させるか廃止するか、最終的な決断の時期はJR西日本の調査期間がどの程度になるか不明のため(詳細な調査は12月以降になる見込みです)、明らかにはしませんでした。ともかく、信楽高原鐵道の存廃は甲賀市や滋賀県がどれだけ負担するかにかかっていると言えます。
(追記)
台風18号の被害で運休している信楽高原鐵道について、滋賀県は乗客の7割が信楽高校の生徒で占めていることから、復旧費の支援をすることを考えています(滋賀県は国に対しても補助率引き上げを求めましたが、否定的な考えのようです)。復旧計画の概要が固まり次第、県議会などに承認を求めます(現段階では復旧費用が確定していないため、11月県議会での予算提案は見送る方向です)。
必要性を認識している地元が負担をして鉄道を維持する、ある意味望ましい結果と言えます。
(参考:京都新聞ホームページ http://www.kyoto-np.co.jp/shiga/article/20131002000187、毎日jp http://mainichi.jp/select/news/20131005k0000e040204000c.html、MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/region/news/131003/shg13100302070001-n1.htm、「週刊東洋経済 『鉄道』完全解明 2013」 東洋経済新報社、朝日新聞ホームページ http://www.asahi.com/articles/OSK201311060052.html、中日新聞ホームページ http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20131113/CK2013111302000032.html)
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