リニア中央新幹線、国費投入を検討か?
リニア中央新幹線について話題をいくつか。
リニア中央新幹線についての問題点の一つに挙げられるのが、品川-名古屋間を先に開業させ、20年ほど遅れて名古屋-新大阪間が開業すること。名古屋止まりと新大阪までの全線開業したときとを比べると、新大阪まで全線開業したときのほうが収益の良いことは明らかです。20年程度のために名古屋駅でのスムーズな乗り換えを考える必要もありません。面倒な乗り換えを嫌って東海道新幹線を乗り通すことも、航空機を利用することもないのです。ただ、リニア中央新幹線の建設費は品川-名古屋間が5.43兆円、名古屋-新大阪間が3.6兆円。これが重たくのしかかります。JR東海はルート選定や駅の場所などを巡る政治の介入を避けながら早期の開業を目指すため、全額自己負担する方針を示していました。自己負担でつくる限り、一気につくることは難しいのです。
そこで出てきたのが、国費を投入して、新大阪まで一気に開業させる案。JR東海側も、国が無利子融資を含めた利子負担の軽減などのかたちで負担するなら全線同時開業も検討するというのです。もしJR東海が柔軟な姿勢を取り、全線同時開業に方針を転換すれば、それは喜ばしいことであります。JR東海は名古屋の会社なので、「名古屋さえよければよい」という考えかたに陥りやすいのですが、幸か不幸か、東海道新幹線、リニア中央新幹線という、ある意味大きすぎるものを持っています。「自分でお金を出せば何でもできる」というのは単なる思いあがりで、公共交通機関はどうしても政府の影響を受けます。うまく国からの補助を引き出すことも重要なことなのです。
話は変わりますが、細かい話をいくつか。リニア中央新幹線の工事実施計画の認可申請時期は、環境影響評価(アセスメント)の手続きに必要な時間を考えると、2014年夏ごろになるようです。工事実施計画が国交省に認可されれば、着工に進みます。
次は、愛煙家には厳しいニュース。リニア中央新幹線の座席は禁煙ですが、喫煙ルームもなく、完全に車内禁煙になるようです。乗車時間が短い(品川-名古屋間最短40分)ことがその理由です。ただ、東海道・山陽新幹線には喫煙コーナーなど喫煙できる設備がありますが、そういう列車は少数派です。新幹線でも、東北新幹線などはすでに完全禁煙です。駅に喫煙コーナーがあれば十分でしょう。そもそも、喫煙自体が駅などの公共の場で禁止される可能性は十分にありますが。
最後は、中間駅について。JR東海は中間駅の利用者数を1日1万人と設定しているようです。定員が1000人の列車が、1時間に1本(1日にすると20往復弱?)しか停まらないということを考えると、過大なようにも思えます。1本当たり300人近くの人が乗り降りしないといけないのですから。
(参考:朝日新聞ホームページ http://www.asahi.com/business/update/1017/NGY201310170004.html、Sankei Biz http://www.sankeibiz.jp/business/news/131018/bsd1310180502001-n1.htm、中日新聞ホームページ http://www.chunichi.co.jp/s/article/2013101790204352.html、YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20131017-OYT1T00947.htm、毎日jp http://mainichi.jp/area/nagano/news/20131012ddlk20020049000c.html)
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Comments
確かに最高時速500キロで以て品川名古屋間40分、品川新大阪間67分は脅威です。
一見東海道新幹線に取って代わる次世代のツールに見えますが、懸念材料が多いと言うのが本音です。
見積もりだけで品川名古屋間5兆円と言う莫大な建設費もさることながら、リスキーな原発再稼働が必須となる位に莫大な電力も必要とします。
用地取得の簡略化とか東阪間の最短ルートとは言え地下40メートル超の大深度とか活断層が横切る南アルプス直下に穴を開けるのは躊躇します。
伊那谷とか諏訪湖辺りを迂回するならばと言うことで導き出されたルートと言うのは承知ですが。
今回の増税も医療とか福祉に使われるならばまだしもリニアの為の増税ならば鉄道好きの自分も抵抗あります。
推進派には失礼ですがリニアは昔の「巨艦巨砲第一主義」に思えて仕方がありません。
前向きにはリニアに利用客が転移する事で東海道新幹線にも余裕が出来て2列+2列の座席が用意されるかも知れないと言う事でしょうか。
長文失礼致します。
m(._.)m
Posted by: I love train | 2013.10.21 10:46 PM
I love train さん、おはようございます。
* 一見東海道新幹線に取って代わる
電力の問題にしろ(ここの最大の問題は、賠償金や再処理の費用を適切に原価計算していないことでしょう。現状では、再稼働すべきかどうかの判断すらできません)、ルートの問題にしろ、難しいところです。
* 今回の増税も医療とか福祉に使われるならばまだしも
リニアならまだ有効に使えそうですが、公共投資が使われるのは、あまり投資価値がなさそうなところが多いでしょう。次の選挙に向けてばらまくだけの効果しかありません。本来は財政破たんの阻止か増え続ける社会保障に対応するための消費税が変質してしまっています。
* 前向きにはリニアに利用客が転移する事で
食堂車が復活するという話( https://tabechan.cocolog-nifty.com/note/2013/09/post-599f.html )もありますが、どうなることでしょうか?
Posted by: たべちゃん | 2013.10.22 05:50 AM
JR東海の各種発表を見ていると
何とか有利な条件で税金を引っ張ってこようという意図を
感じるのは私だけでしょうか。
自動車の自動運転が現実になると
遅い在来線は一気に廃止になりそうなので
JR東海はリニアを作っても
利益率が良くなるかもしれません。
ちなみに、グーグルは3年後に技術の実用化、
日産は2020年に量産化を目指すようです。
Posted by: しぃろ | 2013.10.22 01:54 PM
しぃろさん、こんばんは。
* JR東海の各種発表を見ていると
ある意味交渉ごとなので、うまく税金を引っ張るのも技術のひとつでしょう。
* 遅い在来線は一気に廃止になりそうなので
大都市圏の通勤路線や特急が頻繁に通る幹線を除いては、JRとして存続する価値はないのですが、なかなか廃止になりません。
本当は鉄道の特性を活かすことのできる路線に経営資源を集約すべきでしょうが、なかなか難しいようです。
Posted by: たべちゃん | 2013.10.22 10:04 PM