泉北を外資に売って稼いだ利益は、泉北沿線とは全く縁のない北大阪急行などの延伸につぎ込まれる
泉北高速鉄道などを運営する、大阪府都市開発の外資への売却についての続報です。
大阪府都市開発の売却で次点に終わった南海の提案ですが、それは素晴らしいものでした。最低10年間、乗り継ぎ運賃(年間利用者640万人、ちなみに泉北高速の2012年度の利用者は約4900万人)を80円、通学定期(年間利用者881万人)を約25%下げます。そのほか、通勤特急の運行の検討などを行います。対するローンスターは、たった10円の値下げさえ提案時には出さず、優先交渉権を得てから付け足したものです。外資だから駄目だということはありませんが、提案内容を見れば雲泥の差です。120年以上の実績のある南海をうならせるようなものではありません。沿線住民に何の恩恵をもたらさないローンスターの提案に対し、沿線地域からの反発は強まっています。白紙撤回を求めた堺市議会に続いて、和泉市議会も11日に運賃値下げなどを求める決議を可決しました。
しかし、松井大阪府知事はローンスターに売却したほうが売却益が多いことだけを理由に、方針を変えようとしません。ローンスターに売却することにより、値下げは実現しますが、たった10円では、人を馬鹿にするにも程があるでしょう。肝心の売却益も、ローンスターに売却した場合は383億円、南海に売却した場合は353億円と30億円異なるだけです(大阪府の株式の保有割合は49%)。南海の提案額自体、想定額の約670億円の売却額を上回ります。この1回だけの目先の利益に対し、南海の提案を受け入れることによる利用者の利益は毎年約5.5億円にも上ります。しかも、このローンスターの売却益、泉北沿線とは全く縁のない北大阪急行や大阪モノレールの延伸、西梅田十三新大阪連絡線などにも使われます(そのほかにもなにわ筋線にも使われます)。大阪府都市開発には東大阪市や茨木市で行っているトラックターミナル事業もあり、すべて泉北沿線に還元しろとは言いませんが、現状の案では沿線にメリットは全くありません。泉北沿線に住む人がこつこつ運賃を払ってきたことで得た収益が収奪されるだけです。泉北沿線の人が北大阪急行や大阪モノレール、西梅田十三新大阪連絡線を使うことはめったにありませんから。使う可能性があるのはなにわ筋線ぐらいです。
16日に大阪府議会で大阪府都市開発の株式売却についての採決が行われますが、それが否決されれば、公募はやり直しとなり、再公募には1年ほどの期間が必要となります。しかし、稚拙な提案をそのまま飲む必要はないでしょう。望外の利益を得る大阪府がお金を出して(南海の提案と同程度の)泉北高速の値下げをするならともかく、そうでなければ目先の利益にとらわれず、一旦見直すほうが望ましいでしょう。大阪維新の会府議団は沿線の堺市や和泉市に値下げのための財政負担を求めていますが、ローンスターの提案が不十分なつけを堺市や和泉市が払う必要がありません。不十分な提案をしたローンスターや儲けた大阪府が払えばいいだけです。
(追記)
大阪府都市開発の株式をアメリカの投資ファンド、ローンスターに売却する案は、維新の議員4人が造反したため、51対53で否決されました。
今回のローンスターの提案は稚拙なものです。この機会にもう一度考え直すのがよいでしょう。
(参考:YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/osaka/news/20131211-OYT8T00075.htm、http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20131213-OYO1T00812.htm、http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20131214-OYO1T00347.htm、毎日jp(会員登録要) http://mainichi.jp/area/news/20131211ddf001020004000c.html、朝日新聞ホームページ http://www.asahi.com/articles/OSK201312160024.html)
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