JR東日本、山田線の無償譲渡&三陸鉄道への移管を提案
三陸鉄道はこの4月に全線復旧しますが、間に挟まれたJR東日本の山田線宮古-釜石間(55.4キロ)はいまだにどのように復旧するかが決まっていません。JR東日本は輸送量の少なさから気仙沼線や大船渡線で採用されているBRTによる仮復旧を提案していましたが、地元の沿線4市町は鉄道での復旧にこだわり、話が前に進みませんでした。
そこで新たな話が出てきました。JR東日本が山田線を復旧させたうえで沿線自治体(宮古市、釜石市など2市2町)に無償譲渡し、第三セクターの三陸鉄道に運行を移管させるというものです。31日に盛岡市で開かれた第7回山田線復興調整会議で、それは提案されました。復旧費用は約210億円と試算されていますが、約140億円をJR東日本が負担し、約70億円を国の復興交付金などで賄う方針です。運営形態は三陸鉄道の南北リアス線同様、運行と施設保有を分ける上下分離方式となります。山田線が復旧すれば、盛から久慈までの直通ができるようになります。3路線が一体となっての運行ができるようになります。JR東日本は譲渡後10年間程度の運営赤字の補てんなどもする意向です。
ただ、地元自治体からは反発する声も出ています。復興事業が多く財政負担が重いのに、さらに維持管理費などの負担が増えるからです。しかし、山田線がバスでも十分なほど利用者が少ないは明らかです。2010年度の輸送密度はたったの377人、JR東日本の在来線67路線中、下から3番目です。赤字なら県や沿線市町村がある程度面倒を見てくれる第三セクターやローカル私鉄とは違い、JR東日本は株式を上場している株式会社です。こんな路線を運営しても大赤字が続くことは明らかです。140億円負担してすぐに無償譲渡するのはもったいないような気もしますが、(だらだらと赤字を垂れ流すより)損失が確定するという意味では悪い話ではないのでしょう。「手切れ金」みたいなものです。BRTによる輸送改善はできる精一杯の話で、鉄道として維持したければ、鉄道を求める地元が何らかの負担をしないといけません。新幹線のビジネス客や首都圏の通勤客などに負担させるのは筋違いです。地元の利用者からは復旧を歓迎する声がみられるようなので、JR東日本に無理な要求をせず、地元自治体で鉄道を支えていったほうが有意義です。維持費はともかく、ただで鉄道を手に入れることができますから、地元自治体にとっても悪い話ではないのです。
なお、実際に運行する三陸鉄道は判断を保留しています。すでにBRTが運行している大船渡線沿線の地元自治体の中には、暫定措置のBRTから本格復旧に移行するための明確な方針を求める声があります。山田線のように第三セクターに移管するのが現実的でしょう。
(参考:河北新報ホームページ http://www.kahoku.co.jp/news/2014/01/20140130t35001.htm、YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/iwate/news/20140130-OYT8T01458.htm、岩手日報ホームページ http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20140131_3、MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140131/dst14013120230009-n1.htm、毎日jp http://mainichi.jp/select/news/20140201k0000m040109000c.html)
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