今里筋線延伸、市営、民営いずれも採算は取れず
大阪市議会で建設を求める声が強い、大阪市営地下鉄今里筋線の延伸計画。今里-湯里六丁目間、6.7キロを建設する計画です。この区間の着工の可否について、「市鉄道ネットワーク審議会」(有識者で構成)が検討していますが、交通局がまとめた延伸区間の収支見通しでは、公営、民営のいずれの方法でも採算が取れないようです。
交通局は、公営で建設した場合、民営化して建設は大阪市の第三セクターが行う公設民営のふたつのケースについて想定しました。開業を2025年とします。建設費は公営で1380億円、民営で1293億円です。この状態で開業した場合、40年後はどうなるのでしょうか? 公営のままでは955億円の累積赤字が生じます。民営の場合は少し赤字は減りますが、それでも790億円に達します。40年以内に黒字にしようと思ったら、新線の利用者に加算運賃を課さないといけませんが、その額はなんと187円、初乗りが400円近くになってしまい、現実的な数字ではありません。
大阪市営地下鉄の民営化は、いまだに大阪市議会で継続審議になっています。政治的には、今里筋線の延伸をしないと民営化ができないとも言われていますが、つくるべき路線でないというのが今のところの結論でしょう。大体、2006年12月に開業した井高野-今里間(11.9キロ)も1日当たりの輸送人員を16.4万人と見込んでいました。しかし、開業5年目の2011年度でも、1/3ほどの約5.9万人しか乗っていません。そう期待できる状況ではありません。橋下大阪市長は、大阪市営地下鉄の民営化に加えて、大阪都構想が実現しないと今里筋線の延伸は難しいともしています。民営化をすれば、上場するまでは大阪市が株を保有することになります。大阪都になれば、各特別区が株を保有します。今里筋線の延伸は大阪市全体の視点で見ると必要性の低い路線ですが、沿線の特別区にとっては、重要性の高い路線かもしれません。そう判断したら、株を原資につくればいいのです。東京都でも中央区や江東区に地下鉄の構想があります。それと同じように、どうしても地下鉄がほしければ、区で必要性を判断することができるのです。
1月22日に開かれた審議会では、交通局から示されたデータがあまりにも厳しいため、会長の斎藤近大名誉教授は、地下鉄よりも建設コストがかからないLRTやBRTなどによる整備も考えないといけないと指摘しました。しかし、従来通り道路を使うBRTはともかく、LRTは新たに車庫などの設備投資をしないといけません。既存の車庫を使えばよい地下鉄にはなかった問題です。そのあたりも考えないといけないでしょう。
(参考:大阪日日新聞ホームページ http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/140205/20140205040.html)
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Comments
タイトルが「今里筋線、市営、民営、いずれも採算は取れず」に見えました。「千日前線、(以下略)」や「長堀鶴見緑地線、(以下略)」も一概に冗談と片付けられないのが何とも。と言ってみます。いずれも減便はまだしも、廃止や埋め戻しは事実上不可能でしょうし。
Posted by: 日置りん | 2014.02.16 10:40 PM
日置りんさん、おはようございます。
* いずれも減便はまだしも、廃止や埋め戻しは
大阪市営地下鉄の中には赤字路線もありますが、輸送量からいって廃止はできません。すでに開業している今里筋線の北部区間でも、廃止は無理な相談です。
Posted by: たべちゃん | 2014.02.17 05:53 AM
私見ですが、今里筋線が杭全(JR東部市場前駅)まで開通していれば、状況が変わったのではと思います。
同じく、千日前線もJR平野駅まで。こちらはJRの横やりや谷町線のこともあって、断念されたようですが…。
Posted by: RICOH | 2014.02.20 04:49 PM
>どうしても地下鉄がほしければ、区で必要性を判断することができるのです
特別区の財源・権限は、政令都市はおろか、一般市より小さいことから、現実問題、こうした大きな事業を区単位で行うことは不可能でしょう。
都制に移行すれば、市の財源の多くは都に吸収されてしまいます。
泉北高速の売却問題でも、維新側は住民の利益より売却価格を優先、「運賃の高さが不満なら地元で支援を」等と突き放したような物言いをしています。
今里筋線は作るべき路線ではないでしょうが、財源は都に吸い上げながら、地元負担だけを強調するようでは、支持を失うだけでしょう。
Posted by: かにうさぎ | 2014.02.20 09:49 PM
RICOH さん、おはようございます。
* 私見ですが、今里筋線が杭全(JR東部市場前駅)まで
今里-杭全間の状況がよく、それ以南が著しく悪いのならば、その説は正しいでしょう。もしそうなら、杭全までに短縮して建設する案が出てくるはずです。
昔はともかくとして、今は採算性が厳しく問われます。今里筋線の北部区間はラッキーだったといえるでしょう。今なら見送りの対象です。
Posted by: たべちゃん | 2014.02.21 06:44 AM
かにうさぎ さん、おはようございます。
* 特別区の財源・権限は、政令都市はおろか、
ただ、今の政令市の中の区よりは強いです。
* 泉北高速の売却問題でも、維新側は住民の利益より
これは明らかな失敗でした。提案内容に大差がなければ価格優先でもいいですが、あまりにも優劣の差がありすぎましたから。
* 今里筋線は作るべき路線ではないでしょうが、
そもそもつくる路線ではないでしょう。大阪市(あるいは大阪都)には今里筋線よりはるかに優先度の高い路線があります。
Posted by: たべちゃん | 2014.02.21 06:55 AM