夜行列車を運行させるアイデア
3月15日のダイヤ改正で廃止になる「あけぼの」、改正以降は臨時列車として多客期のみ運行しますが、過去の廃止されたブルートレインがそうであるように、だんだん臨時列車としても運行されなくなるというのが常です。
この「あけぼの」の廃止に対して、2月5日に秋田県内の自治体首長や商工団体代表がJR東日本や国交省を訪れ、「あけぼの」存続の要望書を手渡しています。要望書を出した自治体や商工団体は大館市、能代市、由利本荘市など12市町村、大館や能代など7つの商工会議所や商工会。秋田新幹線の恩恵を受けない地域のようです。「こまち」スピードアップの恩恵がなく、「あけぼの」が廃止されると東京への直通列車がなくなってしまいます。「あけぼの」がなくなることによって、観光やビジネスに悪影響があるようです。
もっとも、こんな要望書を出しても、JR東日本が「あけぼの」を復活させたり、国交省がJR東日本に対して指導したりということは期待できません。「あけぼの」はそれなりに乗っていますが、車両は老朽化し、新しくしてまで維持するほどの状況ではありません。要望書の効き目はないのです。全国各地に夜行バスが走っていることから考えれると、夜行そのものの需要がないわけではありません。JRが夜行列車を維持向上させる努力を怠ってきたといえばそれまでですが、そういう認識がJRサイドにない以上、新たな方法を考えないといけません。
杉山淳一氏によれば、その新たな方法とは地元が新車両の製造費用を出すことと、乗客が見込みより少なかったときの差額を補てんすること。目新しい方法のようですが、前例があります。新車両のほうは、すでに秋田新幹線でやっています。秋田新幹線が開業したとき、秋田県とJR東日本が共同で第三セクター(「秋田新幹線保有株式会社」)をつくり、そこがE3系車両を保有し、JR東日本にリースしていました。しかもその第三セクター、秋田県が資本金の99.6%を出資し、JR東日本はたったの0.4%しか出資していません。
第三セクターは当初80両を保有していましたが、その後の増結車両、追加編成はJR東日本が購入しています。リースにしなくても運営できる自信がJR東日本についたのでしょう。リース期間が終わったときにはその80両もJR東日本は残存価値で買い取り、第三セクターは秋田県などに出資金を返還して解散しました。秋田新幹線が成功するか否か明らかでない段階でリスクをとった第三セクターは当初の使命を立派に果たしたのです。この第三セクターがなければ、JR東日本は失敗しても痛手にならない程度しか車両を揃えなかったかもしれません。
差額補てんについては、航空路線で例があります。国内では能登空港開港時に初めて適用されたもので、ANAの羽田-能登便について搭乗率が70%に満たなかった場合、自治体側が補償します。反対に、搭乗率が目標に達すれば、ANAが自治体側に還元します。これも採算割れのリスクを自治体側がカバーするものです。
これらの施策については地元自治体にとっては腹立たしいかもしれませんが、これで存続することができるのなら悪くないかもしれません。
(追記)
関連することなので併せて書きますが、JR東日本は2009年から2010年にかけて投入したばかりのEF510形500番台15両のうち、9両をJR貨物に譲渡しています。投入して4年ほどで寝台特急用としての出番が激減したということです。
(参考:MSNマネー http://money.jp.msn.com/news/bizmakoto/%e3%80%8c%e5%af%9d%e5%8f%b0%e7%89%b9%e6%80%a5%e3%81%82%e3%81%91%e3%81%bc%e3%81%ae%e3%80%8d%e3%82%92%e6%ae%8b%e3%81%99%e3%80%81%e3%81%b2%e3%81%a8%e3%81%a4%e3%81%ae%e3%82%a2%e3%82%a4%e3%83%87%e3%82%a2?page=0、HUFFPOST http://www.huffingtonpost.jp/hogan-kishida/2014_11_b_4972752.html)
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