鎌倉市、東京オリンピック前に「ロードプライシング」検討
鶴岡八幡宮や鎌倉大仏など数多くの名所旧跡が集まる旧鎌倉地域には、年間約2000万人の観光客が訪れます。しかし、その観光客の多さにより、休日には慢性的な交通渋滞を招いています。鎌倉市の調査によると、旧鎌倉地域内の休日の交通量は1日当たり約7.5万台で、そのうち観光客を含む外からの流入車両は約3万台、通過車両は約1.7万台でした。
この問題の解決に鎌倉市はかなり前から取り組んでいます。1995年に市長の私的諮問機関「鎌倉地域交通計画研究会」を発足させ、交通渋滞の解消に取り組んできました。2001年には市の周辺部に駐車してバスなどに乗り換えてもらう「パークアンドライド」や、バスや電車を自由に乗り降りすることができる「環境手形」の導入を行いました。しかし、効果は薄かったのです。
そこで鎌倉市が考えているのが「ロードプライシング」。松尾市長が選挙公約として掲げたものです。2012年に市民や商工業者、学識経験者、行政関係者らが鎌倉市の交通政策について話し合う「鎌倉市交通計画検討委員会」を発足させ、そこで「ロードプライシング」について話し合いました。鎌倉市の試算によれば、各道路の平均走行速度を時速20キロ以上にするためには、交通量を約34%削減する必要があります。先ほども述べたように休日の交通量のうち、地域外からの車両と通過車両は合わせて約4.7万台あります。ここで半分以上の2.5万台を減らさないと各道路の平均走行速度は時速20キロ以上になりません。「ロードプライシング」をすれば、削減目標の2.5万台のうち半数近くが車を使わなくなると想定され、仮に1台当たり1000円を徴収するとすれば、年間で最大19億円の収入が見込めるようです。収入の一部を観光客に商品券として還元することなども考えられています。
法律では一般道路は無料であることが原則ですが、料金を徴収することは禁止されていないようです。「ロードプライシング」を行おうとしていたところはありますが、今のところ実際に行ったところはありません。しかし、交通の確保や向上は地方自治体の責務であることから、鎌倉市は法定外目的税として認められると考えています。その「ロードプライシング」で鍵となるのが徴収漏れを防ぐことができるか、ということ。その点は鎌倉は有利です。旧鎌倉地域は三方を山に囲まれ、外から流入できる道路は限られています。源頼朝も利用したこの地形を利用すれば、課金ゲートは9か所程度で済むようです。
ただ、課題はあります。「ロードプライシング」による課金を逃れようとほかの道路を迂回する車は当然ながら出てきます。近隣の自治体との調整が必要となります。公共交通機関も江ノ電は休日は混んでいます。住民の考えは賛否両論で、静かな環境が得られるとして賛成する人がいる一方、車での来店客が減るとして反対する人もいます。1995年に発足した「鎌倉地域交通計画研究会」でも「ロードプライシング」の社会実験をしようとしましたが、来店客の減少を恐れる商業者らの団体が反対し、社会実験は行われませんでした。それもあって今回は、車で鎌倉を訪れた人に飲食や買い物に使うことのできる地域通貨を発行したり、次回公共交通で訪れたときに料金を割り引いたりなど、徴収したお金を原資とした地域振興策も行います。郊外に車を駐車して公共交通機関で旧鎌倉地域に入った人にはクーポンなど何らかのサービスをすべきでしょうが、車で旧鎌倉地域に入った人には何もする必要はないでしょう。取られっぱなしでいいのです。嫌なら最初からあるいは途中から公共交通機関を使えばいいのです。
鎌倉市としては2020年の東京オリンピックまでに旧鎌倉地域の渋滞解消を実現したい考えで、まずは社会実験から始めるとのことです。早ければ2017年度にも行う予定です。確かに古都鎌倉には渋滞は似合いません。車の占有するスペースはかなりのものです。車の過度な利用に歯止めをかけ、適正な負担をさせる試みは必要でしょう。小規模な店舗なら、車で通っても目には入りません。歩くスピードだからこそ、目に入るのです。
(参考:毎日jp http://mainichi.jp/select/news/20140405k0000e020215000c.html、タウンニュース http://www.townnews.co.jp/0602/2014/04/11/232764.html)
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