長崎新幹線、地元からフル規格を求める声
とても試作車とは思えない外観のフリーゲージトレイン新型試験車両(第3次車)。空気抵抗を減らす流線型のボディーに、赤いラインが印象的です。実際に営業運転で走ってもいいぐらいの、かっこいい車両です。
フリーゲージトレインの欠点として車両が重たいというものがありました。しかし第3次車は4両編成になったので(従来は3両編成)、主要機器を各車両に分散することができ、主要機器そのものも小型軽量化でき、さらに車体の一部に材質の軽いCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を使用することになり、軸重の軽量化を行うことができました。通常のフル規格新幹線並みの重さです。この第3次車、九州で3年間程度かけて耐久走行試験を行います。これで得られたデータを基に、今後量産車が設計、製造されることとなります。
このフリーゲージトレイン、長崎新幹線で導入する予定なのですが、これまでフリーゲージトレインの導入に賛成して来た佐賀県内から、フリーゲージトレインではなくフル規格新幹線を望む声があります。2013年6月から9月にかけて、フル規格化のメリットがあると考えられる武雄市、嬉野市のほか、神埼市や鳥栖市などが、全線フル規格を求める意見書を相次いで可決しました。佐賀県のこれまでの方針とは大きく違います。
なぜ佐賀県内でフル規格を求める声が出ているのでしょうか? それはフリーゲージトレインが遅くて、新大阪に直通できないからです。山陽新幹線は「のぞみ」「みずほ」などが時速300キロ運転をしていて、時速270キロ運転しかできないフリーゲージトレインを入れることができないのです。できたばかりの第3次車でも、時速270キロ以上を出すことを前提としていません(E7系に似た、かっこいい形状は、時速300キロ運転をしないからこそできるものです)。せっかく新幹線をつくっても、博多まで行かないということになってしまいます。現在、博多-長崎間の所要時間は1時間48分、フリーゲージトレインだと1時間20分ですが、フル規格だと41分に短縮します。現在より1時間以上の短縮です。フル規格だと当然ながら山陽新幹線への直通ができ、新大阪-長崎間が3時間5分程度で結ばれます。新大阪-鹿児島中央間よりも所要時間が短くなります。
長崎新幹線は新鳥栖-武雄温泉間で在来線を走行します。新幹線建設に伴いこの区間の在来線も改良されるのですが、フル規格を望む佐賀県の一部自治体や長崎県は、その改良工事が始める前にフル規格への方向転換をすることを目指しています。ただ、フル規格に方向転換するということは、多額の建設費をどこからか調達して新鳥栖-武雄温泉間の新規着工に踏み切らないといけません。北海道新幹線や北陸新幹線もある中、どうやって着工にこぎつけられるか、建設中の武雄温泉以西の扱いをどうするかが大きな課題になってきます。単純に開業を遅らせてフル規格ができるまで肥前鹿島経由のまま行くのか、狭軌で武雄温泉以西を開業させるのか、武雄温泉で乗り換えさせるのか(在来線は改良しない)、どの方法をとるのでしょうか?
(参考:MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/region/news/140502/ngs14050202090001-n1.htm、東洋経済ONLINE http://toyokeizai.net/articles/-/36540)
| Permalink | 0
「鉄道」カテゴリの記事
- ひたちなか海浜鉄道は2段階で延伸か?(2023.12.05)
「整備新幹線」カテゴリの記事
- 西九州新幹線は南回り?(2023.11.15)
- 北海道新幹線、バス会社が代替バスの運行は困難と回答(2023.10.29)
- 北海道新幹線の札幌延伸時期、延期へ(2023.10.08)
Comments
やはり最終的に進むべき王道としては新鳥栖〜武雄温泉間の標準軌改軌か三線軌条化でしょうか。
余談ですが、なぜ新鳥栖からではなく武雄温泉からの建設になっているかといえば、
世間で言われている①建設費削減、少し事情通なら知っている(?)②新鳥栖〜武雄温泉(というよりほとんど久保田辺りまでか?)間の軟弱地盤の回避、以外にも事情があるそうです。
③佐賀駅に新幹線駅用地が確保されていなかったから、だそうで、山陽新幹線の全通が見えていた頃、次は九州新幹線鹿児島・長崎両ルートだと目されていたにも関わらず、自治体(佐賀県か佐賀市かは分かりませんが)は新幹線駅用地の構想を立てていなかった、そのために長崎ルートに佐世保を組み込むか否かで揉めている時には既に佐賀駅はカヤの外に置かれていた…。
③については某巨大掲示板でみたことがある程度で、どこの板にあったかも分かりませんが、一つの話としてはあり得そうです。
Posted by: 日置りん | 2014.05.05 09:16 AM
>北海道新幹線や北陸新幹線もある中、どうやって着工にこぎつけられるか
北海道新幹線は3大都市圏より遠すぎ、鉄道としての特性を発揮できません。
また、北陸は3大都市圏に近く最も効果が大きいですが、リニアが新大阪まで開業しないと新大阪まで直通できません。
これに対し、長崎新幹線は新大阪から3時間と、鉄道の特性を発揮できる区間です。
しかも、追加でフル規格にするのは、武雄温泉-新鳥栖間たった50kmだけです。
佐賀県が負担を渋っていること以外、建設の障害になるものはありません。
よって、北海道や北陸は後回しにしても、長崎のフル規格化に着手した方がよい。
また、同区間のフル規格化すれば、GCTを佐世保線特急に投入することで、佐世保方面にもメリットがある。
Posted by: かにうさぎ | 2014.05.05 09:30 AM
日置りん さん、おはようございます。
* ③佐賀駅に新幹線駅用地が確保されていなかったから、
この説は初めて聞きました。
フル規格をつくることになったら改めて用地買収するしかないでしょう。
Posted by: たべちゃん | 2014.05.06 05:10 AM
かにうさぎさん、おはようございます。
* 北海道新幹線は3大都市圏より遠すぎ、
北海道新幹線は時速260キロでは東京-札幌間が5時間もかかり、高速化が望まれます。北陸新幹線は、リニアがすぐにでも実現しない限りは「若狭ルート」を取らざるを得ないでしょう。JR東海にお伺いを立てなくてもよい、というメリットがあります。
* これに対し、長崎新幹線は新大阪から3時間と、
長崎新幹線が全線開業すると、確かに関西からは非常に便利になります。
そういう意味では、北陸新幹線の敦賀-新大阪間の着工とともに、長崎新幹線新鳥栖-武雄温泉間の着工も望まれます。
Posted by: たべちゃん | 2014.05.06 05:18 AM
新大阪直通とは言いますが、さくらとの振り分けはどうするんでしょうか。
さくらの場合はひかりの延長だったので問題なかったですが。
6連+6連の併結にするんでしょうか。
Posted by: たなべ | 2014.05.08 01:18 AM
たなべさん、おはようございます。
* 新大阪直通とは言いますが、さくらとの振り分けは
九州新幹線の実績から、直通運転はJR西日本にとってもメリットがあると考えられます。
フリーゲージトレインとは違い、フル規格なら技術的な問題はありませんから、新大阪直通は楽観的に考えています。
Posted by: たべちゃん | 2014.05.08 05:27 AM